集団自殺に大量虐殺、村の掟に宗教的タブーも…“信じる心”が人を狂わせる恐怖の実話映画6選
18世紀のオーストリアの小さな村を舞台に、宗教とタブーに支配された歴史の暗部へと斬り込んだ『デビルズ・バス』が5月23日から公開となった。「この世から消え去ってしまいたい」と願いながらも、宗教上自死することが許されない抑圧された状況下で、驚くべき行動に出てしまう主人公。この物語は、実在した一人の女性と、当時キリスト教圏で頻発していた“ある現象”がモチーフになっているという。
そこで本稿では、“信じる心”の強さによって狂わされた人々を描く怖い実話映画をピックアップしながら、その系譜に新たに加わる『デビルズ・バス』を紹介していこう。
少女たちの純粋さが悲劇をもたらす『乙女の祈り』
のちに「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを手掛けるピーター・ジャクソン監督がニュージーランド時代に手掛け、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)に輝くなど大絶賛を獲得し、世界にその名を轟かせた『乙女の祈り』(94)。1954年に実際に起きた殺人事件を題材に、2人の少女が凶行にいたるまでを描いた思春期映画の名作だ。
家庭環境が正反対ながらも、ほかの誰も寄せ付けない友情を育むポウリーン(メラニー・リンスキー)とジュリエット(ケイト・ウィンスレット)。作家を夢見る彼女たちは、豊かな想像力でフィクションの世界にのめり込んでいくのだが、2人の親密さを危惧した大人たちは彼女たちを引き離そうとする。そして母親に激しい憎悪を抱いたポウリーンは、ジュリエットと共にある凶行に走ることとなる。
史上最悪の惨劇をPOVで描く『サクラメント 死の楽園』
1978年に南米の国ガイアナにある、キリスト教系のカルト宗教「人民寺院」のコミューンで起きた集団自殺(大量殺人)事件をもとにした『サクラメント 死の楽園』(13)。疎遠になっていた妹から奇妙な手紙を受け取ったパトリック(ケンタッカー・オードリー)は、サム(AJ・ボーウェン)たち撮影隊と共に、ある新興宗教の“理想郷”への潜入取材を敢行。次第にその“理想郷”を蝕む不穏な空気を感じ取っていくことに。
実際の事件の犠牲者は900人以上。まさに惨劇といえる実話を、A24の「X」シリーズなどで知られるタイ・ウェスト監督がメガホンをとり、POVホラー映画として臨場感たっぷりに描きだしている。混乱に満ちた時代のなかで人々を導くカリスマ的教祖と、マインドコントロールされて極端な行動に出てしまう信者たち。その事件の概要を知るだけでもおぞましく、背筋が凍るものがある。