集団自殺に大量虐殺、村の掟に宗教的タブーも…“信じる心”が人を狂わせる恐怖の実話映画6選

集団自殺に大量虐殺、村の掟に宗教的タブーも…“信じる心”が人を狂わせる恐怖の実話映画6選

信仰心で家族が崩壊…20年前の事件がモチーフの『呪詛』

台湾国内で「いままでで最も怖い」と評され、大ヒットを記録。さらにNetflixで配信されるやたちまち世界中を恐怖の渦に落とし込み、現在も続いている“台湾ホラー”ブームの火付け役となった『呪詛』(22)。本作もまた、信仰心が引き起こしたある事件がモチーフとなった作品だ。

【写真を見る】家族全員が憑依体験…あの大人気ホラー映画も実話から生まれた!?
【写真を見る】家族全員が憑依体験…あの大人気ホラー映画も実話から生まれた!?[c]Everett Collection/AFLO

2005年、台湾南部の高雄市。ある家族が見知らぬ道士からかけられた言葉に従って、家に祀っていた哪吒三太子の像を動かしたことをきっかけに、彼らの周りで厄災が相次ぐ。お祓いをしても事態は悪化の一途を辿り、やがて家族はそれぞれ異なる神様や僧に憑依されたと口にするようになり、異常行動を連発。しまいには悪霊を祓うためと長女を攻撃し、死なせてしまう。

この事件にインスパイアされたケヴィン・コー監督は「この畏れの感情を最大限に活かしたい」と、インターネット文化の要素を加え、ファウンドフッテージ・ホラーの手法で『呪詛』を製作。映画で描かれるストーリーはほぼフィクションではあるが、信仰心がもたらす狂気は、キリスト教圏に限らずアジア圏でも起こりうるということは忘れてはならないだろう。

人類史上最も忌まわしい思想を追体験する『関心領域』

アウシュビッツ所長の生活に、世界中が戦慄…
アウシュビッツ所長の生活に、世界中が戦慄…[c]Everett Collection/AFLO

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによって行われたユダヤ人の絶滅政策では600万人以上が犠牲になったと言われている。この人類史において最も忌まわしい、ホロコーストと呼ばれる出来事もまた、反ユダヤ人思想や優生思想という差別心、ある種の“信じる心”によってもたらされたものといえる。

ジョナサン・グレイザー監督が手掛けた『関心領域』(23)は、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の所長ルドルフ・ヘスの家族を描いた物語。収容所のすぐ真横の豪奢な家で生活を送る彼らの姿を淡々と映し、壁一枚隔てた向こう側では多くの命が残虐に奪われている。直接的な描写を排し、音を中心にした“背景”だけで表現されるおぞましさ。ラストにインサートされる“現実”の映像に、誰もが衝撃を受けることだろう。

価値観の違いが暴力となってぶつかり合う『理想郷』

人間の脆弱さが、暴力を加速させる『理想郷』
人間の脆弱さが、暴力を加速させる『理想郷』[c]Everett Collection/AFLO

念願のスローライフを求め、スペインの山岳地帯にある小さな村に移住したフランス人夫婦が、地元住民と対立する様を描くサイコスリラー『理想郷』(22)。2010年ごろに実際に起きた事件をベースにした本作では、村を豊かにする風力発電プロジェクトを誘致したい村人と、それに反対するフランス人夫婦の諍いが、やがて取り返しのつかない事態へと発展していく。


都会と田舎の価値観の違いが作品の主軸のひとつとなっているが、それは地元住民が“よそ者”に向ける差別意識や恐怖感という集団心理の暴走であり、あるいは村というコミュニティに溶け込めない移住者側の孤独感と不安感の果てに訪れる狂気でもある。両者がまったく噛み合わないコミュニケーション不全のまま、暗部の部分だけが露呈し、凶暴なかたちで表出してしまう点は、『デビルズ・バス』とどこか通じるものがあるといえよう。

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