制作者としての活躍も眩しすぎる!マ・ドンソクが韓国映画業界に与える影響とは?
「ジャッキー・チェンがうらやましいです。彼は自分で映画を作って、自分にしかできないアクション演技を披露している。私もジャッキー・チェンのように、映画を制作しながら、俳優としても活動し続けたいです」。2017年、韓国で「犯罪都市」シリーズの第1弾が公開された際、企画・制作・主演を務めたマ・ドンソクは「いわゆる“マ・ドンソク式アクションシリーズ”を作りたい」とし、未来像についてこう語っていた。33歳のとき、映画『風の伝説』(04)で遅咲きのデビューを果たし、20年間60本以上の映画、10本以上のドラマに出演してきたマ・ドンソク。俳優としての地位を固め、「犯罪都市」シリーズで制作者としての成功可能性も証明してきた彼が、いま新しい一歩を踏み出そうとしている。
「犯罪都市」シリーズで“トリプル1000万”観客動員…韓国映画初の記録
去年4月に韓国で公開された「犯罪都市」シリーズ4作目の『犯罪都市 PUNISHMENT』は、わずか3週間で観客数1000万人を突破し、最終的には1150万人の観客を動員した。1作目『犯罪都市』が688万人、2作目『犯罪都市 THE ROUNDUP』が1269万人、3作目『犯罪都市 NO WAY OUT』が1068万人をそれぞれ動員。“トリプル1000万人”を達成したのは韓国映画のなかでは初めてで、洋画まで含めても「アベンジャーズ」シリーズが唯一だ。「毎回同じパターンのストーリー」「ただの自己複製にすぎない」という批判もあるが、マ・ドンソクが韓国映画の歴史に一線を画したことだけは誰も否定できないだろう。
実際の事件を基にしている犯罪アクションシリーズ「犯罪都市」は韓国映画業界では珍しい超長期プロジェクトであり、全8本のシリーズ物として企画された。1~4作目が大ヒットし、「ジャッキー・チェンみたいな映画制作者兼俳優になりたい」と公言してきたマ・ドンソクの夢も叶ったかのように見えるのだが、ここでマ・ドンソクはシリーズ制作を一旦ストップ。いままでは毎年4~5月に「犯罪都市」シリーズの最新作を公開してきたが、5作目の公開を2026年に延期し、今年はより多様なジャンルの作品を披露している。
制作者としての新たな挑戦、観客の反応は「すべてがすばらしい!」
現在韓国で上映中の映画『ニート・アパート(原題:백수 아파트)』は、マ・ドンソクが代表を務める映画制作会社ビッグパンチピクチャーズを通じて、彼が企画段階から関わった作品だ。朝から晩まで、自ら近所のすべての苦情を解決する“お節介なニート”コウルが、引っ越し先のアパートで毎晩聞こえてくる謎の騒音の原因を調べるミステリー・コメディである本作は、いままで関わってきた別の作品とは違って、マ・ドンソクが出演せず、初めて制作者としての役割だけに集中した作品でもある。
『ニート・アパート』は2月26日公開後、10日間で観客数3万人をやっと超えた状態。すでにボックスオフィス20位圏外となっており、損益分岐点である15万人を達成するのはかなり厳しそうだ。しかし本作は、マ・ドンソクが自分のネームバリューや“マ・ドンソクのアクション”というブランド力に頼らず、作品自体の完成度で評価されようとした点で高い評価を得ていて、実際に映画を観た観客からも「あまり期待していなかったが、めちゃくちゃおもしろかった」「笑いあり涙あり。ストーリーも演技も、すべてがすばらしい」「久々に見つけた、心が暖かくなる名作」などの好評が広がっている。「興行的には大ヒットしたが、とくにメッセージなどはない、キリングタイム用の映画」「スカッとするしアクションもかっこいいけど、感動はない」と評価される「犯罪都市」シリーズとは正反対だ。