まさに“時の人”となった『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー監督に単独インタビュー。アノーラ、イヴァンのキャスティング秘話も
第97回アカデミー賞で最多5部門を受賞した『ANORA アノーラ』が公開中。本作で監督を務めるショーン・ベイカー監督は、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞を獲得し、一人のクリエイターが同一作品で4部門受賞したのは史上初だという。また、昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドール賞も受賞しており、アカデミー賞作品賞との一致は4作品目、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)以来となる。まさに“時の人”となったショーン・ベイカー監督のインタビューをお届けする。
ロシア人オリガルヒの息子イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)の契約彼女となったセックスワーカーの“アニー”ことアノーラ(マイキー・マディソン)は、アメリカに残りたいイヴァンのビザ問題を解決するために電撃結婚をする。ところが、ロシアにいるイヴァンの両親が結婚に猛反対。結婚を阻止すべく、用心棒のイゴール(ユーリー・ボリソフ)らを息子の邸宅へと送り込む。
『ANORA アノーラ』の舞台は2019年、ロシアによるウクライナ侵攻前。「この映画の開発には15年を要しました。現在、私たちは非常に不幸せな世界に生きていて、映画に関わったすべての人たちがこの戦争の早期終結を祈っています。ですが、この映画は戦争について論評するものではなく、若いセックスワーカーの女性の物語です。私は、政府の行動を個人やアーティストが背負う必要はないと考えます。ブライトン・ビーチの撮影現場では、ウクライナ人、ロシア人、アメリカ人が一緒に手を取り合い映画制作に集中し、人々にこの映画を届けようと団結していました。それはとてもポジティブな行動だったと思います」とベイカー監督は強調する。
「カレン・カラグリアンと交わした会話から生まれた作品」
アルメニア人司祭のトロス役を演じているカレン・カラグリアンは、ベイカー作品に出演し続けている古参キャスト。「1990年に渡米したカレンは、ブライトン・ビーチの大通りの角でキャビアを売って生活していました。彼と一緒にブルックリンとコニーアイランドにあるロシア系アメリカ人のコミュニティを探している際に交わした会話から生まれたのが本作で、カレンの生きた経験をこの映画に反映させたいという私の願望も込められています」。