神谷浩史が懐かしさを覚えた『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』のアフレコ事情「一番ホットなタイミングで収録できた」
「制作サイドにもきっと不安のようなものはあったはず」
本作のアフレコは、前作の公開記念舞台挨拶の翌日から始まった。劇場版の公開を待ちに待ったシリーズファンの熱量を直接浴びたあとでのアフレコは、ひと味違ったものになったのではないだろうか。「この作品に限らず、近年のアニメーションのアフレコ事情って、全話収録してしばらく経ったあとに、テレビで放送、配信されたりということがあります。なので、お客さんの熱量というものを感じられないまま、手応えがない形で淡々とアフレコが進んでいくっていうことが結構あったりします」と近年のアフレコ事情を明かす。
「古い話をすると老害って言われかねないけれど(笑)。たとえば『機動戦士ガンダム00』をやっている時は、『来週どうなるの?』みたいな雰囲気を感じながらアフレコをしていました。ファーストシーズン、セカンドシーズンと2クールずつ2年にわたって放送した長い作品というのも理由の1つですが、視聴者のみなさんは放送を楽しみ、僕たちは放送の何週目か先をアフレコするという状況。『僕はみんなよりちょっと先の話も知ってるんだよな〜(笑)』なんて思いながら、ファンのみなさんの期待値や関心度を肌で感じながら作業できていたんです」と笑顔で懐かしむ。
「近年は1クールの作品も増えてきたので、作品に対する視聴者の熱量、反応を感じながらアフレコをする機会も減っています。そんななかで、この『モノノ怪』は幸いなのかどうかはわからないですが(笑)、公開初日の翌日という一番ホットなタイミングでの収録。これはすごく大きいことだし、なかなかない経験です」としみじみ。「テレビシリーズから劇場版までかなり時間が空いていたので、お客さんの期待がどのようなものになっているのか、どう膨れ上がっているのか、制作サイドにもきっと不安のようなものはあったはず。自信を持ってお届けした作品の、観た直後の空気感を直接受け取り、受け入れてもらえたという安心感のなかで、次の作業に移れたんじゃないかなと思っています」と、根強い人気を誇るシリーズでありながらも、劇場版として新生するうえでの制作サイドへの想いにも寄り添っていた。
取材・文/タナカシノブ