「『ワイルド・スピード』と張り合っても仕方ない(笑)」三池崇史監督が語る、“ヤバイ”映画への回帰と自由な作劇
小栗旬の新たな可能性
――悪徳刑事を演じる小栗旬さんが絶品ですね。セックス、ドラッグ、ギャンブルそして汚職に手を染めても下品にならないのは、小栗さんの気品がなせる技だと思いましたが。
「そうなんですよ。ステレオタイプの演技をしなくても共鳴できる。作りすぎてないっていうか、演りすぎない。悪い奴の役だからって、悪い顔をしなくていいよねっていう。小栗旬は、この世代で圧倒的ですもんね。『クローズZERO』『クローズZERO II』の主役として一緒にやったあとは、ゲスト的な役で出てもらっていただけなので、今回、20年ぶりにガッツリとやれたんですが、なにも変わってないですよ。『クローズ』の時は、小栗旬たちとホテルの近くの安い焼き肉屋で飲んで食って寝て、また撮影してたんですけど、その時のまま寝て起きたら『バッド・ルーテナント:トウキョウ』の現場にいる、みたいな地続きの感じがありましたね。『ゴジラvsコング』などハリウッド作品にこれまでも出ていますが、今回、小栗旬の新しい可能性を示せたんじゃないかなと思いますけどね。こういう役者が日本にいるんだよっていう」
――FBI捜査官グエン・ビルグセンを演じたリリー・ジェームズさんは、三池監督の現場では短時間で膨大な量を撮影することや、本番のテイク数の少なさに驚いたそうですね。
「どこへ行っても、とりあえず驚かれちゃうんで。韓国でやった時(『コネクト』)も、『えっ、1カメラで、ワンテイク?』みたいな(笑)。いろんなテイクを撮って、後で編集する材料をできるだけたくさん集めていくハリウッド方式の撮り方だと、プロデューサーのさじ加減で、編集によっていろいろ調整できる。僕とやっていると、『こういうカットない?』『そんなカットは撮ってない』『えっ、ないの?』みたいになる。でも、それを意地でも貫くっていうつもりはないんですけど。そうすべきだなという作品が出てくれば、そうするし。日本で撮るんじゃなくて、向こうで撮るのであれば、そのルールを活用するっていう方法もありますからね」
――父が次期アメリカ大統領候補で、「スシの研究」のために来日して失踪したミーガン・ラヴゼイを演じたリヴ・モーガンさんの役は、なにがどうなってこんな役になっているのかと思いましたが。
「そう。リリー・ジェームズの役は、人間として心の動きが追えると言われたけど、リヴ・モーガンの役はなんの紹介もなく、ただドラッグとセックスをしながら、ぶん殴る女という。それをまた彼女は楽しんで演ってくれますからね。やっぱり、アメリカのプロレス(WWE)という究極のエンタテインメントの世界にいるプロレスラーですから。なんで彼女は幡ヶ谷のマンションで男をブン殴っているんだろうって撮影しながら思いましたから(笑)。すごく楽しかったですよ」
歌舞伎町で撮ることの価値
――歌舞伎町での撮影といえば、かつての三池監督の『新宿黒社会 チャイナマフィア戦争』などでは、ゲリラ撮影による現地の生々しいロケが迫力を生んでいました。『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』になると、歌舞伎町はすべてCGで作られていました。そして今回は、再び現地でのロケがふんだんに盛り込まれています。
「状況がだいぶ変わったんですよね。相談に乗ってくれる組織ができて、撮りやすくなった。それがいろいろと変化したり、歌舞伎町をエンタテインメントの題材として取り上げることにも価値が認められてきた。そのことが関係しているのかもしれませんが、いまはきちんと手続きを経て撮れるようになってきたんですよね」
――今回、随所で三池監督の〈原点回帰〉を感じさせましたが、車のルーフに乗って拳銃を構えるヤクザに車をぶつけるアクションなどは、Vシネマ的な小気味よさがありました。
「やっぱり、『ワイルド・スピード』と張り合っても仕方ないですからね(笑)。アナログでローバジェットだからこそできることを思いついて撮っていると、とても楽しいんですよね。役者もなんか生き生きしてくるし、スタッフもなんか笑いながらやってる。アメリカから来た人たちも笑ってる」
