宙吊り熱油拷問、舌切り、顔面スライス…嘔吐袋まで配布された『殺し屋1』で炸裂する三池崇史の狂気的バイオレンス

コラム

宙吊り熱油拷問、舌切り、顔面スライス…嘔吐袋まで配布された『殺し屋1』で炸裂する三池崇史の狂気的バイオレンス

クエンティン・タランティーノ、イーライ・ロスなど多くの世界的な監督から愛されてきた“世界のミイケ”こと三池崇史監督。彼の代表作の一つとして高い人気を誇る『殺し屋1』が、2001年の映画化から25年の時を経て、5月15日より『殺し屋1 4K』としてスクリーンによみがえった。

【写真を見る】やりたい放題!2000年前後の三池崇史作品におけるバイオレンスが凄まじい(『殺し屋1 4K』)
【写真を見る】やりたい放題!2000年前後の三池崇史作品におけるバイオレンスが凄まじい(『殺し屋1 4K』)[c]山本英夫/小学館「殺し屋1」製作委員会 2001

ヤクザの垣原(浅野忠信)と元いじめられっ子の殺し屋イチ(大森南朋)の壮絶なバトルを描く本作が世界を魅了した要因の一つは、“バイオレンスの巨匠”こと三池監督の持ち味が存分に発揮された暴力描写の数々だろう。映像化不可能と言われた原作の狂気、グロテスクな世界観を浮かび上がらせた怪作は、いま観ても鮮烈だ。

個性豊かなキャスト&スタッフで、暴力まみれの裏社会を描く『殺し屋1』

安生組の組長が莫大な金を手に消えたことから物語は動き始める(『殺し屋1 4K』)
安生組の組長が莫大な金を手に消えたことから物語は動き始める(『殺し屋1 4K』)[c]山本英夫/小学館「殺し屋1」製作委員会 2001

山本英夫による人気コミックを原作とする『殺し屋1』には、三池監督を筆頭に、脚本の佐藤佐吉、『でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男』(25)でもタッグを組んだ撮影の山本英夫、衣装の北村道子といったスタッフ陣が集結。さらに浅野と大森に加え、塚本晋也 、SABU、國村隼、松尾スズキ、寺島進ら個性豊かなキャストが顔をそろえている。

殺戮の現場となる“ヤクザマンション”(『殺し屋1 4K』)
殺戮の現場となる“ヤクザマンション”(『殺し屋1 4K』)[c]山本英夫/小学館「殺し屋1」製作委員会 2001

物語は歌舞伎町を根城とする安生組組長が、3億円もの組の資金と共に姿を消すところから幕開け。安生から与えられる暴力を愛するマゾの垣原は、安生が生きていることを信じて歌舞伎町内をくまなく探し、やがて“イチ”と呼ばれる殺し屋へとたどり着く。

イチの鮮やかな殺しぶりに興奮し惹かれていく垣原と、トラウマに苛まれながらもジジイ(塚本)の指示に従うイチは、すれ違いを繰り返し、ついに出会いの瞬間を迎えることに…。

過激なバイオレンスが炸裂する2000年前後の三池作品

三池監督といえば基本的にはスケジュールが合えば、オファーは断らないというスタンスを貫き、バイオレンスや任侠モノをはじめ、ホラーやコメディ、ヒューマンドラマに時代劇まで幅広く活躍。また近年は有名漫画の実写化の印象が強い。

ブラックジョークとして過剰なバイオレンスが描かれる『DEAD OR ALIVE 犯罪者』
ブラックジョークとして過剰なバイオレンスが描かれる『DEAD OR ALIVE 犯罪者』[c]Kino International/courtesy Everett Collection

1991年にVシネマから監督のキャリアをスタートし、容赦ないバイオレンスで世界的注目を集めていた2000年代前後は、“やりたい放題”という言葉がピッタリの脂が乗った時期。刑事と中国残留孤児3世の戦いを、ド派手なドンパチやセルフ腕もぎ取り(!)といったハイテンションなバイオレンスで描いた『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(99)、家族の崩壊と再生という題材にエログロを添えたタブー度外視の問題作『ビジターQ』(01)など、唯一無二の作品を立て続けに世に送りだした。

ピアノ線を用いた目も当てられない暴力描写が炸裂する『AUDITION オーディション』
ピアノ線を用いた目も当てられない暴力描写が炸裂する『AUDITION オーディション』[c]Vitagraph Films/courtesy Everett Collection

例えば、妻に先立たれた中年男性が再婚相手を探すために架空の映画のオーディションを開催し、そこで知り合った美しき女性によって恐怖のどん底に突き落とされる『AUDITION オーディション』(99)は、トラウマを刻み込む1作。

ヒロインが「キリキリキリ…」と発しながら主人公の身体中に針を突き刺したり、ピアノ線で足首をジリジリと切り落としたり…和製ホラーの陰湿な雰囲気のなかで際立つ唐突な暴力は鮮烈で目を背けたくなるほど。この作品は海外映画賞を受賞したほか、現在ハリウッドでリメイク企画が進行している。

謎めいた美女によってもたらされる恐怖を描いた(『AUDITION オーディション』)
謎めいた美女によってもたらされる恐怖を描いた(『AUDITION オーディション』)[c]Vitagraph Films/courtesy Everett Collection

また、世界のホラー映画監督13人によるケーブルテレビ用オムニバスシリーズ『マスターズ・オブ・ホラー』(06)の一編『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』では、明治の日本を舞台に、アメリカ人の男が出会った遊女にまつわる恐怖を描いており、インモラルな題材や奇形や拷問といった過激な表現が問題となり本国アメリカでは放映自粛に。さらに日本での劇場公開に向け映倫の審査を受けたが、“審査規格外”になったという曰くつきの1作だ。

このように三池監督は肉体的な暴力はもちろん、状況が生みだす精神的暴力までを、不快感を伴う“痛み”として可視化すると同時に、時には悪趣味なギャグとしても用いてきた。


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