「安易な着地」を描かない。アニメーション映画『我々は宇宙人』で門脇康平監督がキャラクターに託した、青春時代の“痛み”
「直感的な坂東さんと、思考的な岡山さんの違いが印象的だった」
アニメーションではキャラクターに命を吹き込む声優も重要であり、本作では青年期以降の翼の声を坂東龍汰、同じく青年期以降の暁太郎の声を岡山天音と、いま注目の俳優陣が演じている。門脇監督はキャスティングにあたり、「ナチュラルな演技ができる人」を求めていたそう。「この作品はキャラクターの顔が具体的なので、いわゆるアニメ作品ならではの息の吐き方やイントネーションの付け方をすると、違和感が生まれてしまうんですよね。現実で“そこらへんにいる人”のような空気感のあるお芝居がポイントになっています」。
また門脇監督は2人のことを「アウトプットの仕方が違うタイプだった」と語る。「坂東さんは収録の際に『まずやってみる』タイプでした。まずは一声出してみて、僕からのフィードバックを受けて発声の仕方を変えていくといったように、『アキネーター』みたいな感じで正解を絞り込んでいっていました。逆に岡山さんは『なぜそういうふうに演じてほしいのか』という説明を先に聞いてから慎重に出してみるタイプなので、最初に僕が詳しくお話させていただきました。直感的な坂東さんと、思考的な岡山さんの違いが印象的でした」。
「翼は暁太郎のことを60歳、70歳になっても『あんな奴がいたな』と思い出すような気がする」
門脇監督が作り上げた渾身の一作は、国内のみならず世界でも高い評価を得ている。第79回カンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品されたほか、アヌシー国際アニメーション映画祭2026の長編コンペティション部門に選出されたことで「視野が本当に広がった」と感じたそうだ。「海外の映画祭を目指していたことは確かなんですけど、作っている時は日本のお客さんが喜んでくれる姿ばかりをイメージしていました。ですが、海外の方々が目に涙を浮かべて拍手している姿を見た時に、『映画を見たあとの余韻は言語の壁を越えていくんだ』と改めて実感しました」。
翼と暁太郎のように、関わった時間は短いものの、なぜか“忘れられない人”は多くの人の記憶のなかに存在しているのではないだろうか。「僕自身、これまで疎遠になった人たちの顔は忘れられないですし、きっかけがあれば『いま、どうしてるかな?』と思い出すことはあります。翼が暁太郎と疎遠になってからつるんでいた友人たちって、多分40歳くらいになったらもう会ってないと思うんですよね。でも翼は暁太郎のことを60歳、70歳になっても『あんな奴がいたな』と思い出すような気がするので、彼にとって印象に残っているのは暁太郎のほうなんじゃないかな」。
この物語では、まさに私たちが歩んできた人生そのもののような等身大のストーリーが描かれている。だからこそ共感できるし、自分自身の思い出と重ね合わせてしまうのだ。「この作品は僕の表現の集大成であり、本当にぼんやり考えていた時間まで含めると、20歳くらいの時から『いつかこういうものを作らなくちゃ』と思い続けていた自信作です。友達や恋人、家族と一緒に観に行くと、終わったあとのご飯が非常に盛り上がるタイプの映画になっているので、誰かを誘って映画をご覧いただけたら幸いです。」。
取材・文/渡辺美咲
