「安易な着地」を描かない。アニメーション映画『我々は宇宙人』で門脇康平監督がキャラクターに託した、青春時代の“痛み”
YOASOBIの「優しい彗星」など、数々のミュージックビデオ制作を手掛けてきた29歳の新鋭、門脇康平。そんな門脇が約6年の歳月をかけて紡ぎだしたアニメーション映画『我々は宇宙人』が公開中だ。長編監督デビュー作にして、第79回カンヌ国際映画祭監督週間でワールドプレミア上映されるなど、世界的な注目を集めている本作。実力派俳優の坂東龍汰、岡山天音が声優として参加し、田舎に暮らす2人の少年の約30年間におよぶ関係性の変化を、美しく、切なく、ノスタルジックなタッチで映しだす。
本作の主人公は内気でごく“普通”な少年の翼と、クラスの人気者、暁太郎。正反対の2人は徐々に仲を深めていくが、暁太郎はある日を境に学校で浮いた存在となってしまう。年齢を重ね、それぞれの人生を歩んでいった翼と暁太郎が、若き日々を経て行き着く先が描かれる。青春時代に潜む“忘れてしまいたい記憶”をみずみずしく切り取った物語は、どのようにして生まれたのか?門脇監督自身の実体験も投影されているという本作の制作の裏側を、たっぷりと語ってもらった。
「小さい頃は映画やアニメよりも、ゴッホやモネの絵などアート作品に触れることが多かった」
門脇監督が映像制作を始める以前、創作の原点となったものを尋ねると、意外な答えが返ってきた。「僕は小さい頃、『画家になりたい!』と言っているタイプの子どもでした。映画やアニメ、漫画などより先に、ゴッホやモネの絵といった、アート方面の作品に触れることが多かったんです。高校生くらいまでは水彩やアクリルでキャンバスにひたすら絵を描いていたので、アナログとデジタルの絵の違いや、デジタルでやれること、構図の作り方などを把握していたことは、今回の映画制作に活かせたんじゃないかと感じています」。
これまで、ミュージックビデオの制作に多く携わってきた門脇監督は、長編アニメーションの監督を務めるにあたってそれらの“制約”の違いに気付かされたという。「ミュージックビデオは曲が主役なので、その曲に合う世界観を作らなければならないという制約があるなかで、いかに“自分の作家性を発揮するか”という表現だと捉えているんですけど、『我々は宇宙人』に関しては、オリジナルの企画であり脚本なので、なにをしてもいいんですよ。制約が一切ないところからなにかを生み出すという点が、ミュージックビデオとは全く違いました。“この映画が存在する意味”みたいなものまでを問い始めるとキリがなくて、『これでいいんだ』と思える脚本に固めるのがかなり難しかったです」。
脚本を作る際に参考にしたものについて尋ねると、「漫画を読む時のリズム感」だと答えた門脇監督。「おもしろい漫画を読みながら共通して思ったのは、じわじわと(“結”に至るまでの)“起承転”が展開していって、『この先を見たい!』という気持ちが高まっていった先に、見開きなどで見たかったものをドーンと見せてもらえるな、ということです。そういう“小さな起承転結”を繰り返し集めていくリズム感が読んでいて心地いいなと思いました。映画もそういう感じがないと、2時間観ていて眠くなるし辛くなるなと思ったので、そういったことを全体を通じて考えながら作っていました」。
「僕が長い間考えてきた“初恋”と”疎遠”というテーマを取り入れることで、なにか答えが出せるのではないかと思った」
本作では“普通”であることに悩む翼と、クラスで1番の人気者の暁太郎が出会い、親友になるところから物語が始まる。少年たちの友情は未来永劫続くかと思いきや、取り返しの付かないとある事件をきっかけに大きく変化していく。作中では彼らの“忘れてしまいたい記憶”や“無邪気な過ち”に焦点が当てられているのだが、その理由について門脇監督は「自分の実体験から来ている」と述べていた。
「僕自身、小さい頃に一番仲が良いと思っていた友達と、二度と話せなくなるような仲になってしまったことがあって。その出来事はいま考えても、自分のせいだったのか、そうじゃなかったのか、わからないままなんです。映画では“初恋”と“疎遠”が主なテーマになっているんですが、どちらも僕が長い間考えてきたことでもあるので、個人的に引き出しが多いテーマだったと思っています。その2つを作品に取り入れることによって、自分がずっと考えてきたことになにか答えが出せるんじゃないかと思いました。最終的に明快な答えは見つからなかったのですが、『“安易な着地”はない、ということを描こう』と思えたので、それを作品にも反映することができました」。
