「安易な着地」を描かない。アニメーション映画『我々は宇宙人』で門脇康平監督がキャラクターに託した、青春時代の“痛み”

インタビュー

「安易な着地」を描かない。アニメーション映画『我々は宇宙人』で門脇康平監督がキャラクターに託した、青春時代の“痛み”

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「翼と暁太郎の立場は僕が経験してきたことに基づいているからこそ、信じて演出できた」

時が流れ、次第に“普通”である翼のほうに関心が集まるようになると、人気者だった暁太郎はクラスメイトたちから遠巻きにされてしまう。この場面は大人になるにつれ、周りと同じような行動を取る人が世間から称賛される…といった現代日本の同調圧力を彷彿とさせられた。

【写真を見る】本作が長編デビュー作となる門脇康平監督は現在29歳
【写真を見る】本作が長編デビュー作となる門脇康平監督は現在29歳撮影/ヤナセタマミ

「自分はもともと『変だね』と言われるタイプの子どもでしたし、立ち回りが周りと浮いているような時期もありました。でも大人になってからは『“普通”でいるほうが皆となじめるし、いわゆる“一軍”にいられる』といった雰囲気があることに気付いたんです。僕は器用だった頃もあったので、変だけど“普通”側にも紛れることができたのですが、そちら側から暁太郎のような友達と目が合った時の気まずさがあって。そういう感覚を持ったことがある人は多いんじゃないかなと思います。『“普通”であることが正解』みたいな意識の変化があるのって、小学校中学年から高学年くらいの間だと思ったので、作中では彼らが小学3年生の時をスタートにしています」。

青年期の暁太郎の声を、俳優の岡山天音が担当
青年期の暁太郎の声を、俳優の岡山天音が担当[c]NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

“普通”側の翼と“変わっている”側である暁太郎だが、両方の立場を経験したことがあるという門脇監督は、どちらのキャラクターにより共感したのだろうか。「どちらも半々ですね。自分が翼みたいな時期を過ごしていたこともあるし、暁太郎のような時期もあったので。それぞれの立場でいる時の痛みはいまでも覚えているので、ストーリーを作る過程で僕が考えてきたことを2人に分けました。実は本作の脚本を手掛けるにあたって、『自分が信じられないと思ったシーンは書かないようにする』ということを特に心がけていて。2人が置かれている立場は、僕がたしかに経験してきたことに基づいているからこそ信じられたし、演出することができました」。

「作中に“本物”を出すことで、観ている人がどれくらい作品にダイブしてくれるのかを試してみたかった」

本作の舞台は平成の田舎町ということもあり、作中では「進研ゼミ小学講座」に登場するマスコットキャラクター“コラショ”の目覚まし時計やガラケー、「瞬足(アキレスによる子ども向けシューズ)」などの“平成”を感じさせるものが数多く登場する。

当時の“あるある感”を演出する小物の数々は、許諾を取り本物を登場させている
当時の“あるある感”を演出する小物の数々は、許諾を取り本物を登場させている[c]NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS [c]Benesse Corporation / コラショ

「まさに当時自分が使っていたものや、食べていたものを採用しています。観客の方々が『懐かしい!』という気持ちになれそうなものを意識して登場させていて、自分と近い世代の人たちが、観ていて引き込まれるようなものにしたかったんです。そこで偽物を使ってしまうと懐かしい気持ちのトリガーが発動しない気がしたので、作中に“本物”を出すことで、観ている人がどれくらい作品にダイブしてくれるのかを試してみたいと思いました。ほかには『青リンゴ餅飴(駄菓子)』や『ナルミヤキャラクターズ』なども出てくるんですけど、頑張って許諾を取りました。当時の“あるある感”のある演出は狙って入れた部分もあります」。

さらに門脇監督のこだわりは彼らの食事シーンからも垣間見える。「家族の喋る尺がない分、出てくるメニューでキャラクターの育ちや、どんな家庭なのかを想像しやすいようにしています。例えば栄養のある発酵食品が出た時は『多少健康に気を遣っているんだな』、お米がラップから出したての形をしていた時は『あまり時間がなかったんだな。でも納豆を混ぜてかけておいてくれる優しさはあるんだ』みたいな。特に翼の母親のキャラ造形を一発で説明するために、メニューを考えていました」。

繊細に切り取られる“青春時代”の映像は、観客の眠っていた記憶を呼び起こす
繊細に切り取られる“青春時代”の映像は、観客の眠っていた記憶を呼び起こす[c]NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

作中では、私たちがかつて経験していてもおかしくないようなリアルな出来事が次々と巻き起こっていく。2人の人生は楽しいことばかりではなく、時には辛くて悲しいこともあるのだが、そんな生き方になぜか憧れてしまう不思議な力があった。「『学生時代、あんな嫌な思いをしたはずなのに、もう一度同じ教室で授業を受けてみたい』という感覚ってあると思うんですよ。この映画を見て『もう一度、翼や暁太郎が経験したようなことを味わいたい』という憧れの気持ちを抱いていただきたいですし、劇場を出た時に『さっきまで画面のなかにあった、憧れていた世界と、いま自分がいる世界ってなにも変わらないんだな』と気付いて、『ちょっと前向きに生きてみようかな』と思えるような、生きる希望に繋がる作品になればいいなと。『観客が憧れるような世界を見せたい』という思いから、この作品を作りました」。


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