『オブセッション 災愛』で狂気的な恋愛感情を体現したキャスト2人が語る、撮影の裏側「私たちは兄妹のような関係。恋愛的な相性ではありません」
「オーディションでマイケルとの相性を感じられてよかった」(ナヴァレッテ)
――オーディションはいかがでしたか?過激なシーンを演じたりされたのでしょうか?
ジョンストン「最初にやったシーンはなんだっけ?」
ナヴァレッテ「車のシーンだったと思う」
ジョンストン「そうだったね。それと『なぜ普通になってくれないんだ』などと怒鳴るシーン。この2つが最初に一緒に読んだシーンでした。それまで僕たちは一度も会ったことがなくて、部屋に入って挨拶をして、すぐシーンを始めたんです。終わると、監督、プロデューサー、キャスティングディレクターに『今日はありがとう』と言われ、僕たちは帰りました。インディはあの時点で自分が役を取れたと知ってた?」
ナヴァレッテ「知らなかった」
ジョンストン「僕も同じ。2人ともあとから知ったんです。僕らはそれぞれほかの俳優とも組まされてオーディションをしたのですが、インディと会った時に、『彼女こそニッキーだ』と思いました」
――2人の相性がよくなければ、映画は成立しませんからね。
ジョンストン「その通りです」
ナヴァレッテ「オーディションの段階でマイケルとの相性を感じられて、すごくよかったです。それがベアとニッキーの関係性に信憑性を与えたと思います。私とマイケルは、兄妹のような関係。恋愛的な相性ではありません。それが余計にベアとニッキーの関係を不穏にするのです」
ジョンストン「もし2人のキャラクターの間に、本当に情熱的な恋の花火があったら、こういう物語にはならなかったのではと思います。ベアの願いが叶って、物事が別の方向に進み、2人が幸せに結ばれて終わるなら、この話は成立しませんよね。2人はお互いにふさわしくないのです。それが、このストーリーの求めるものなんです」
「悪役に近いのはベアであり、ニッキーのほうがむしろ純粋」(ジョンストン)
――ベアには短い時間のなかでかなり大きな変化があります。最初は優しく傷つきやすいタイプの人で、自分の気持ちを相手に伝える勇気がない。しかし、しだいに追い詰められていき、最後には観客が驚くような行動に出ます。順番通りに撮影されたわけではないなかで、彼がその時どの段階にいるのかを演じ分けるのは難しかったのでは?
ジョンストン「たしかに難しかったです。撮影は脚本と全然違う流れでされましたが、結果的にはあの順でよかったと思っています。あの順番だったから、『ベアがいま、本当に求めているものはなにか』を考えるしかなかった。彼は人生の愛を失いたくないんです。少なくとも本人はそう思っている。だから、そこだけを考えて演じました。他人への影響はいっさい考えず、自分の欲望だけを見る、トンネルビジョンの状態で」
――ニッキーも怖いことをしますが、彼女自身にはコントロールできません。だから観客も『お願いだからやめて!』と思いつつ、同時に彼女を応援してしまいます。容赦なく暴力的なのに、単なる悪者にならないためになにを意識しましたか?
ナヴァレッテ「一番大事だったのは、『ニッキーのなかにはちゃんと人間がいる』ということを観客に忘れさせないことでした。最初の彼女を絶対に失わないようにしながら、“願い”に支配されたバージョンの彼女を演じる、というのが私の目標。観客の共感が失われないことを一番重視しました。『Pearl パール』、『ヘレディタリー/継承』、『ゲット・アウト』、『ジェニファーズ・ボディ』のような映画も参考にしています。まるで卓球のラリーのように常に頭のなかで、本来のニッキーと願いに支配されたニッキー、いまはどちらが前面に出ているのかを考え続けていた感じです。監督のカリーも本当に助けてくれました。脚本にも、“彼女が表に出る瞬間”や“引っ込む瞬間”がかなり明確に書かれていました」
ジョンストン「おもしろいのは、スクリーン上で怖い存在なのはニッキーのほうで、少なくとも映画前半のベアはかなり無垢に見えること。でも実際には、より悪役に近いのはベアであり、ニッキーのほうがむしろ純粋なんです。そこも観客に受けている理由なのではないかと思います。この映画が扱うテーマを探索することにおいて、とても新鮮なアプローチですから」

