酒井善三監督&大森時生プロデューサーコンビが解説する、映画『遺愛』がもたらすねじれた瞬間の面白み「なんでもないシーンこそ怖い」
「あまりつまらないシーンはない気がします(笑)」(酒井)
——これも以前イベントで酒井監督がお話されていたことですが、自分が一生懸命作ったところがパッと見逃されてしまい、話題になるところは自分としては思い入れがそこまでではなかったりすると。
酒井監督「愚痴ってましたか(笑)」
大森「アハハハ」
——軽くです(笑)。今回の作品も何回も観て、いろいろ気づく楽しさがあると思うのですが、ここに注目しておくと後で効いてきます!といったポイントを教えてください。
酒井「まあ、基本、何回か観てほしいです。正直、見逃してもどうにでもなる感じもあるので難しいところですが(笑)。多分、1回目では気づかないと思うのですが、結構悪ノリをしているところもあって。なかばギャグといいますか」
――このテーマで!?
酒井「結構、現場ではギャグだと思ってやっているところは多いです。1回目はざっくりと物語を追ってもらって、2回目以降にいろいろと細かい仕掛けを楽しんでほしいです」
大森「このテーマなのに、変な話、話のテンポも結構よくて。呪いのルールとかもよくわからないまま観ることになると思います。僕自身、あまりそういった細かいルールに興味なく観がちだし、バイブス的なものを映画から受け取ることが多いので。今回はルール設計とルール破綻みたいな瞬間が割と緻密でおもしろい。そういう意味で、映像的なところ以外でも、楽しめると思っています」
酒井「いろいろ詰め込んではいますが、あまりつまらないシーンはない気がします(笑)。最初はざっくりとしたストーリーとか余韻が頭に浮かぶと思うのですが、それだけじゃないおもしろみを見つけて楽しんでいただけたらうれしいです」
——「窓の外に忍者」のエピソードが出てきますが、このあたりも酒井監督のこだわりなのでしょうか。車で移動する際にそれを意識させるようなカットもありましたが…。
酒井「そういうところにはめちゃくちゃこだわっています(笑)。なにもない移動のシーンでモノローグを入れたら単なる説明になる。でも、そうではなくて、窓の外のなにかを追っているんだと連携させたら、パズルゲームみたいじゃないですか。ここにこれを出したら、こっちにこれも出そうみたいになっていく。『カレーにカリフラワー』もそのひとつ。『カウンセラー』のイベントで、脚本家の保坂大輔さんが『モチーフは3回擦れ、2回じゃダメ』と、瀬々敬久監督から教えてもらったと聞いて。それ以来、僕も複数回擦ることを考えるようになりました。2回までになっちゃっているのもありますが」
——最後にラフな質問になりますが…。「カレーにカリフラワー」というフレーズにお2人が抱いた感想も伺いたいです!
大森「入れる方はいるのかもしれませんが、個人的には絶妙に入れてほしくない食材ですね」
酒井「カリフラワーって白いことに意味があるはずなのに、カレーに入れるんかい!という驚きはありました。カレーに入っているのがこんにゃくとかでも嫌だな、とか考えたりもしたけれど」
大森「カリフラワーのほうが嫌かも」
酒井「カリフラワーをなめているのかもしれないけれど、僕的には、カレーという楽しいものに、結構嫌なものが入ってくる状況」
大森「やっぱり絶妙に嫌ですね(笑)」
取材・文/タナカシノブ
※宮崎圭祐の「崎」は「たつさき」が正式表記。

