濱口竜介監督×ヴィルジニー・エフィラ×岡本多緒が分かち合う、『急に具合が悪くなる』で実践された“多言語”や“長回し”がもたらした「豊かさ」
『ドライブ・マイ・カー』(21)で第94回アカデミー賞の国際長編映画賞や第74回カンヌ国際映画祭の脚本賞に輝いた濱口竜介監督の最新作『急に具合が悪くなる』(公開中)。原作は哲学者と人類学者である2人の女性が交わした往復書簡からなる同名書籍。舞台をパリ郊外に移し、介護施設の施設長であるフランス人女性と舞台演出家の日本人女性に人物設定を変更しながらも、2人の友情を描いた今作は原作のエッセンスを巧みに表現して見せている。第79回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門に選出され、ヴィルジニー・エフィラと岡本多緒が最優秀女優賞の共同受賞を果たしたことでも話題だ。MOVIE WALKER PRESSでは、受賞直後に帰国した濱口監督と岡本多緒、そして来日したヴィルジニー・エフィラにインタビューを実施した。
「『相手に対して配慮する』という濱口監督の考え方が、2人の共同受賞に繋がった」(ヴィルジニー)
――実は、私(松崎)と濱口監督は東京藝術大学大学院で一緒に映画を作った仲間なんです。
多緒「お2人は同期だったのですか?」
――いえ、濱口監督は学年が1つ上の先輩ですが、年齢は私のほうが8つ上という少しイレギュラーな関係でした。
ヴィルジニー「それじゃあ、今日は私たちのほうが貴方にインタビューさせてもらおうかな(笑)。学生時代の竜介さんはどんな映画監督でしたか?」
――彼はみんなが才能を認める存在で、そのころから“長回し”が刻印になっていました。卒業制作の『PASSION』(08)にはものすごく長い“長回し”の奇跡的なショットがあって。誰もが驚いていました。
濱口「少しだけ説明すると…登場人物2人の感情が高まったすごくいいタイミングに大型トレーラーが(画面内に)侵入してきたんです。とても褒めてもらったのですが、あれはまったくの偶然です」
――あの瞬間に、映画の天使が舞い降りてきたと思ったのですが…話を戻して、まずは受賞おめでとうございます!映画の中には、俳優同士の相互反応が重要となる“ふたりでひとつ”という、どちらが欠けても成立しないような役が時々存在します。ヴィルジニーさんと多緒さんの共同受賞には、本作のキーポイントが評価されたという意義があると感じました。
濱口「本当にありがたいことです。お2人が個々にとても優れた俳優であるという大前提があるとして、その2人が反応し合っていること、お互いの演技がお互いにとって不可欠であろうことを、恐らくは観客も感じるようなレベルで演じていただきました。もともと2人の女性から始まったこの映画にとって、最高の賞をいただいたのではないかと思っています」
多緒「原作者であるお2人の類稀なる、スペシャルな関係性を映画に呼び起こしたいという気持ちが強くありました。じゃあ、具体的にどうしたか?と言われると、監督から『相手の声を聞いてください』と言われていて、それをひたすらやり続けていたという感じで。その結果を認めていただけたのは本当にうれしいですね」
ヴィルジニー「この映画で描かれていること自体もですが、人の声や言葉に耳を傾けて、みんなが一体感を作るという濱口監督の演出の仕方、『人間を深く描く』という、ある種の“冒険”に、みんなで取り組んでいました。この受賞はその象徴でもあるように思います。だから、撮影の時も撮影のあとも、そして今回の受賞に至るまで、お互いの個人主義は消えていました。『相手に対して配慮する』という濱口監督の考え方が、2人の共同受賞に繋がったのではないかと思います」
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