アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」最終回 パルズLOVE

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アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」最終回 パルズLOVE

MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。最終回、果たしてピンキーたちは地球を救えたのか!?

中央のプールは初夏の日差しをはらんで、豪奢なコテージの白い壁に水面の影を映していた。手入れの行き届いた庭にはソテツが並び、目にも鮮やかなピンク色したブーゲンビリアがリゾート感を高めている。

「感じ出たんじゃないですか?」
「ビーチチェアとパラソルは?絶対いるよ、告白のシチュエーションに」
「すみませ〜ん。室内ですけどアイランドキッチンに変えて下さい。みんなでお料理する時その方が顔撮りやすいですから」

揃いのジャンパーを着たスタッフがバタバタ動きながら指示を出す。その指示に合わせて家具や雑貨が床下から時を置かずに出現した。3Dプリンターをとてつもなく進化させたような造作機器らしい。環境も思いのまま変化させることが出来る。かつては自分たちもこの投影システムで船内を病室だと信じ込まされた。空の青さや遥かな山々の稜線が美しく、ここが屋内だとは考えられないクオリティだ。船内上部からその様子を見下ろしている吉崎は改めて感じいった。

「相変わらず巨大なセットだな」

徹夜明けの都築が目を擦りながら答える。

「ええ。よくある恋リアのシチュエーションですが、1体1体があれだけ大きいですから。あのプールも300m×150mらしいですよ」
「彼らが入ると25mプールに見えるわけか」
『パルズLOVE』はシーズン4を迎えようとしていた。

ピンキーメンバーの発案に揺れた“主”を、都築や吉崎が「一度パイロット版を試してみましょう」と押しに押して渋々始められた番組だ。今は彼らを親友の意味の『pals』と呼称し、相手側もこの皮肉混じりの呼び方を気に入っていた。地球に侵入していたパルズの中から男性女性を3対3で6名選出したパイロット版は、彼らの星で爆発的な反響を得た。娯楽のない星でこれまでの侵略シミュレーション番組も相当な評判であったが、その比ではないとの事だ。元々恋愛という概念が無いとの話ではあったが、そのシステマチックでドライな繁殖法に疑問を持っていた若年層が実は少なくなかった。特にここ地球の人類の情報が多く入るにつれて、『恋愛』という概念が広がったようだ。この番組きっかけでその鬱屈した想いが一気に爆発し、彼らの文化をそのものを変えてしまう勢いだという。初めての経験で勝手が掴めずも、人間版の見よう見まねで距離を徐々に詰める同種の奥ゆかしさが大受けに受けた形となった。

「しかしここまで受け入れられるとはね」
「ええ、しかも地球でも流行るというのは想像がつきませんでした」

異星人であるパルズの存在は国から公式発表された。防衛省での騒動やこれまで彼らの創作物である怪人が街中を荒らす事件が頻発していた事で免疫も付いており、国民の反応はというとそれほどセンセーショナルではなかった。むしろ、やや頭打ちとなっていた恋愛リアリティーショーに異星人が挑むとのことで、そのエンタメ要素で受け入れられたのがパニックや敵意が生まれなかった大きな要因かもしれない。このパッケージは大手サブスクリプション制作となり、当然世界的に大ヒットシリーズになった。

発案でもあるピンキーメンバーが番組MCとなり、同時に討伐者の正体であったことも明かした。当初懸念していた国への批判も微風程度のもので、それよりもスーパーヒーロー然としたこの設定がウケにウケた。もちろん番組のテーマ曲も手がけた。海外に目を向けてあえて80年代シティポップ調に仕上げた『Alien Kiss』はワールドワイドな売り上げをほこり、アジアツアーやヨーロッパツアーも企画されるほどになった。

「しかしこの番組が飽きられた場合、また地球で絶滅を目論む企画が立ち上がらないだろうか?」
「吉崎さんがご心配なさる気持も分かります。しかし彼らの星ではこの『恋愛』という要素は生まれたばかりで、地球そのものが今や師匠のような存在になっているんだそうです」
「恋愛における先生か。ならば安全保障の観点では安泰だな」
「リアリティショーだけでなく、ドラマや映画、漫画もそうです。そして個人ではファッションやメイクに至るまで、恋愛を絡ませたコンテンツは無限ですから」
「向こうからすれば今や財産に見えるか、この地球は」

今後怪人と対峙することは無くなった。パルズも脅威どころか、人類の文化そのものを尊敬の対象として見ている。これまでの仕事内容とは規模も忙しさも変わったメンバーの為、都築と吉崎は長年務めた防衛省を辞めた。吉崎を代表取締役とし事務所を立ち上げ、専務件現場マネージャーとして変わらず都築が着いた。サブメンバーであった三人も事務所の所属となった。バンドマンの三島はミュージシャンとして所属し、最近ではピンキーの作曲も手がけている。咲恵はインフルエンサーとして更に飛躍し、SNS活用における相談役のポジションにも就いた。資産家の鏑木は文化人として所属し、戦隊モノ好きのコメンテーターとして人気を博した。都築と吉崎だけで回るはずもない忙しさとなり、部下の遠山をはじめ、外部にも求人を出している。都築が楽屋に向かうと、メンバーはすでに着替えを終え、メイクを施していた。

「なあ都築さん、プロデューサーに言って次から弁当変えてもらって!毎回同じ弁当屋のなんやもん。飽きる!」
「あれ?七海それ時計新しいよね?」
「うん、でも別に高くないよ」
「そんな石ついてるの高くないはずないじゃん」
「鈴香だって毎日バッグ違うじゃない」
「だってテンションあげて現場来たいじゃん。じゃないと仕事やる気無くなる」
「なあ都築さん、弁当叙々苑のルーティーンがいい。今日カルビであしたはタンとか」
「あ都築さん、この前のジュエリーの広告、あの時着けたのって貰えないんですか?」
「都築さん、来月海外に行きたいんで1週間おやすみ欲しいんですけど」


都築は内心困りつつも、笑顔で頷きながらメモを取った。これでいい。この気質が、地球を救ったのだから。準備が出来た旨をスタッフが知らせてきた。デザインは変わらずだが、質のよくなった衣装をひるがえし、メンバーが楽屋を出ていく。都築は静かに扉を占めると、明るく眩いスタジオに吸い込まれていく三人を見送った。



文/平子祐希

■平子祐希 プロフィール
1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のネタ担当。相方は酒井健太。漫才とコントを偏りなく制作する実力派。TVのバラエティからラジオ、俳優、執筆業などマルチに活躍。MOVIE WALKER PRESS公式YouTubeチャンネルでは映画番組「酒と平和と映画談義」も連載中。著書に「今夜も嫁を口説こうか」(扶桑社刊)がある。
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