アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第48回 感情
MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第48回は異星人との対話は思わぬ方向に…!?
ピンキー☆キャッチ 第48回 感情
“主”は腰を屈め、七海に向き直った。興味を示したのか、臨戦体制に入ったのか都筑には窺い知れない。警戒なのか加勢か、鈴香と理乃も横並びになる。
『話を伺いましょう』
好意的でも威圧的とも読めぬ不気味な声で答えた。
「どうもありがとう、あなたの言い分だとこの星のエンタメを全て消化したかのように聞こえたもので。今のところあなた方が実践したのは、う〜ん・・大まかに言うとドッキリとか、アクションバラエティとか、検証モノかな?その辺を融合したもので、ジャンルで考えてもごくごく一部のエンタメですよ」
『この星のエンターテイメントが数多く存在するのは把握しています。しかし、我々はその全てを実践しようとは考えていません。より刺激が強く、継続性があるか否かで判断しました。今回で言えば対国家といった規模で、かつあなた方の戦略における成長具合も観察しながらといった形で非常に興味深かった。しかしもう頭打ちであろうと判断しました。このコンテンツに興味を示す指数、あなた方で言う視聴率と同類の指数が下落したのです。そこで最後に世界的な規模でのサバイバルで終えることにしたのです』
「何やのそれ!?全然解っとらんやんか?」
口をひん曲げた理乃が手をパンパンと叩きながら間を割って入ってきた。刺激を与えるのはまずそうだと都築が止めかけたが、「自由に言わせてみよう」と吉崎に制された。
「あのな、規模とか関係ないねん。もっとこう・・身近なもんが楽しいんよ?恋愛ものとか。解らん?恋愛もの!!」
『あなた方地球人が、繁殖行為の前段を「恋愛」という名を付けて呼称しているのは知っています』
「なんなん!?そのドライな言い方!そんなのと違うわ!もっとこう・・胸がギューっとなる恋の話しとんのや!!」
『はい。それも繁殖相手を見定める過程での精神や肉体的な反応の一種です』
「かぁ〜!つまらん考え!!自分らは無いんか?恋愛感情が!?」
『繁殖相手は適合具合を分析の上で決定されます。あなた方地球人でいうところの女性側が一方的に決定し、男性側はその決定に従います』
「なんやのそれ!!恋の駆け引きも何もあらへんやん!?」
鈴香が前に出る。
「だったらそのドライな感性を、地球人と同じように恋愛と呼ばれる要素にひっくり返すことが出来たら革命が起きますよ?カメラが回ってても回ってなくても、恋愛が何よりのエンターテイメントなんだから」
『我々の種族は繁殖相手に特別な感情を傾けません。感情は持ち合わせていますが、その感情を優先することによる弊害の方が多い為です』
「そこを逆転させるの!弊害も障壁も多い!だからこそ燃え上がるんですよ恋愛って!そしてその恋愛感情は誰もが知る感覚だから、他人の恋愛でも追体験して燃え上がれるの。これやらずに終わるの勿体無さすぎる!!恋リアがこれだけ流行ってるのにそこを無視して『地球のエンタメを〜』は聞いてられない!!」
『・・・・』
ここまでシステマチックに応じてきた“主”が初めて黙り込んだ。
「そうや!あんたらずっと様子伺って来たってことは、九条翔太とKAHOの結婚も知っとるよな!?」
『ええ。あくまで出来事として把握はしています』
「あの結婚で、あんたらのニュースなんか一発で吹っ飛んだの知っとるやろ!!もう宇宙からの侵略とかも恋愛のニュースに比べたらどっちでもええものになるの!!そんだけのパワーがあるんよ!!」
殺傷能力の塊のような主を前にしても、3人はもう臆してはいないように見えた。等身大の女子高生が3人集まり、告白のできない友人の背中を押して囃し立てているようにしか思えない。
『・・・我々は子孫を繁栄させるという行為においては本能の部分が優先されます、そこに感情は介在しません。ですから、あなた方の恋愛と呼ばれるものの感情や駆け引きに応じている様を見ても追体験は不可能。エンターテイメントになり得ないのです』
七海と鈴香と理乃の動きがピタリと止まった。キョトンとして目を見開くと互いの顔を見合わせ、次の瞬間炸裂したように笑った。
「そっちが地球人の恋愛見てもしゃあないやろ。そうじゃないねんて」
“主”は少し困惑するように理乃を見つめた。
「あんたらがやるんよ。恋リアを」
(つづく)
文/平子祐希
1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のネタ担当。相方は酒井健太。漫才とコントを偏りなく制作する実力派。TVのバラエティからラジオ、俳優、執筆業などマルチに活躍。MOVIE WALKER PRESS公式YouTubeチャンネルでは映画番組「酒と平和と映画談義」も連載中。著書に「今夜も嫁を口説こうか」(扶桑社刊)がある。
