3冠は『王と生きる男』!『サヨナラの引力』ムン・ガヨンや『顔 -かお-』パク・ジョンミンら第62回百想芸術大賞の結果&名スピーチをプレイバック
ユ・ヘジン、リュ・スンリョンら、助演から主演へ駆け上がったベテラン勢の躍進!
パク・ジョンミンがこれまで受賞できなかった悔しさをにじませたように、百想芸術大賞とは、どれほど高く評価される名優であっても手にしたいと願う特別な賞なのかもしれない。今年の映画部門大賞に輝いた、端宗を支える村長を熱演したユ・ヘジンもまた、喜びを噛み締めながらも「さっき主演男優賞を取れなかったので『そうか…まだまだなんだな』って思っていました」と、精いっぱい演じた役への愛着ゆえのプライドを垣間見せた。
また、自身が演劇界を離れ、「映画に出演しながら食べていければいい」と思っていたころを振り返りながら、「助演賞をもらえて、45歳まで演技を続けられればいいなと思っていた」と告白。「助演賞だけでも十分満足だ、演技だけ一生懸命やろうと思っていました。ところが、こんなにも大きな賞をいただいてしまいました」と、感慨深げに語った。
そして今年亡くなったアン・ソンギについて、「『俳優は演技を一生懸命やらねばならない。でも大事なのは、作品が無いときにどう生活するかだ』とおっしゃっていたんです。その言葉を振り返りながら今日まで来ました」という思い出も口にした。さらに「それから僕らのジフン!」と呼びかけると、カメラが映したのは自身の受賞以上に感極まった様子のパク・ジフン。ユ・へジンは「演技は関係性のなかで生まれるものだと思います。僕がここまで役に入り込めたのは、パク・ジフンがすばらしいケミストリーと豊かなまなざしを与えてくれたからです」と、演者へのリスペクトも忘れなかった。
TV部門で大賞を受賞したのは、「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」のナクスを演じたリュ・スンリョン。視聴者の根強い支持の声は聞こえていたものの、名作揃いの今期のプログラムのなか、大逆転とも言える結果だった。すでに助演男優賞を獲得していたユ・スンモクらと喜びを分かち合ったあとに登壇したリュ・スンリョンは、ユ・ヘジンと無名時代に劇場のポスター貼りや工場のアルバイトをしていた下積みエピソードを明かし、「こうやって2人で大賞を受賞することになって、感慨深いです。(第1部の祝賀公演で登場した)NANTAの経験も思い出して泣きました」としみじみ語った。
そして、劇中で苦労の末に築き上げた社会的地位から転落したナクスを支えたのが、妻からの「キム・ナクス、お疲れさま」という一言だったように、「誰かを助けるということは、遠くにあるものでも、大げさなものでもありません。真心のこもった一言です」と、ドラマが伝えたかったメッセージを改めて語った。最後に、「全国のすべてのナクスよ、幸せであれ」と締めくくると、会場は温かな拍手に包まれた。
日本公開が待ちきれない!栄冠を手にした独立映画『世界の主人』『3670』
興行的・視聴率的な成功を収めたエンターテイナーと作品を評価すると同時に百想らしさが出ていた受賞結果も印象的だった。映画部門監督賞と新人女優賞を『世界の主人(原題:세계의 주인)』がダブル受賞した。自らに降りかかった困難へ果敢に向き合う主人公・ジュインを演じたソ・スビンは、「いまこの時間にも、“匿名のメッセージを受け取っているこの世のすべての所有者の皆さま”に、この映画の真心が届くことだけを願いながら演技を準備しました。この賞と栄光は、自分自身の世界を懸命に探し続けている、この世のすべての“主人”たちと分かち合いたいと思います」と、作中のキーワードを織り交ぜながら感謝を伝えた。
ユン・ガウン監督もまた、「最も痛ましく悲しく、しかし同時に最も輝かしく楽しい瞬間を分かち合ってくださった皆さま、本当にありがとうございます」とし、「最も秘められた告白を打ち明けてくださったことに、心から感謝しています」と語った。作品を通して、同じように苦難のなかを生きる人々へ静かなエールを送るスピーチとなった。
新人監督賞は、高い評価を得て日本公開も期待されているクィアムービー『3670』のパク・ジュノ監督に贈られた。名前がポン・ジュノ監督と同じなため、母親から「いつ映画を撮ってテレビに出るの?」と言われ続けたと明かしたパク・ジュノ監督は「お母さん!ついに出たよ!」と花束を振りながらお茶目に喜びを爆破させた。そのうえで、「私たちの映画は、決して楽ではないゲイコミュニティにたくさん借りを作りました。脱北者の友人たちとも栄光を分かち合いたいです。次の作品で戻って来ます」と、感謝を伝えた。
『世界の主人』も『3670』もともに独立映画であり、社会で顧みられることの少ないマイノリティや何らかの痛みを負った人々をゆるがせにしない姿勢があった。そうした流れはドラマにも及んだようだ。TV部門演出賞を獲得した「未知のソウル」のパク・シヌ監督は、「役に立たなければ淘汰される世界ですが、テレビドラマは最も頼りになる場所がなく、孤独で、どこかへ行く時間もなく、金銭を払ってもなにも見ることができない方々のために存在すべきであり、それが“ドラマの存在理由”になると思っています」と、作品に込めた意義を語った。言葉を聞くと、このドラマが多くの現代人に響いた理由が手に取るようだった。作品が現実社会でどう位置づけられるかに目配せをし、社会性と大衆性のバランスが肝である韓国エンターテイメントの心髄を見た思いにさせられる、第62回目の授賞式だった。

