「一度ドルビーで観たらもう戻れなくなる」樋口真嗣監督×音楽家・岩崎太整が語るドルビーシネマの真価

「一度ドルビーで観たらもう戻れなくなる」樋口真嗣監督×音楽家・岩崎太整が語るドルビーシネマの真価


――近年はHDRリマスターによるリバイバルも活発ですが、ドルビーシネマで観たい!という作品はありますか?

岩崎「僕はいくつもありますが黒澤明監督の作品群、なかでも『七人の侍』はドルビーアトモスで観たいですね。リマスターするたびに画質はよくなっていますし、音もよくなっていますが、まだドルビーアトモスは使っていないと思うので、先達の仕事を下手に動かさないことを前提に、リマスターにトライしてみたい気持ちはあります」

樋口「東宝さんに言ったほうがいいですよ!」

岩崎「市川南プロデューサーに会うたびにお願いしてるんですけど(笑)。昔のフィルムなのでだんだん劣化していくし、現代よりセリフが聞き取りづらい問題もあるじゃないですか。すごくおもしろい作品なのに、それを認識する前に若い人にシャットダウンされるのはもったいないですよね」

樋口「ちょっと似た話になっちゃうけど、旧作をやってほしいですね。すでにドルビーアトモスでディスクになっている作品でも、上映される時はドルビーシネマの劇場でやらないじゃないですか。リマスターしたら、ちゃんとドルビーシネマの劇場にかけてほしい」

「ドルビーアトモスは空間を作り出すことができる」(岩崎)

――映画館以外でこんな場所にドルビーがあったらいいな、というアイデアはありますか?

撮影/杉 映貴子

岩崎「音という面でいえば病室に設置してほしいですね。ドルビーアトモスのすごいところは音の出所がたくさんあって、空間を作りだすこと。それは、ドルビーアトモスならではです。戦争映画やスペクタクル映画を観るのはもちろんですが、例えば入院して家族と会えない時には、LINEで家族と電話をしますよね。もし病室にドルビーアトモスの環境があって、家に360°マイクがあれば疑似的に家にいるような感覚が味わえるはずです」

樋口「俺はバッティングセンターですね。素人で下手な自分たちが活躍できるスポーツは限られるじゃないですか。もし東京ドームのバッターボックスに立ってるみたいな歓声や応援が聞こえてきたら、バッティングセンターでもすごくテンション上がりますよ」

岩崎「絶対上がりますよね(笑)。あらゆるところから聞こえる音に包まれますから」

樋口「いまのドルビーアトモスの使い方は、椅子に座ることが前提じゃないですか。少し見方を変えて、座って鑑賞する以外の使い方もありだと思います」

――今後ドルビーに期待することはありますか?

樋口「作る側としては、ドルビーアトモスを体験したおかげでこれまでの7.1や5.1に触れた時に、これまだ仮だよね?みたいな感覚になってしまうんです。一度味わうと戻れなくなってしまうという、不幸がありますよ」


岩崎「それは絶対ありますね」

樋口「ドルビービジョンもそうですが、あの味をしめてしまったらもうダメ。どんどん機器が対応すれば作れる環境が広がりますから、我々としては“推奨”ではなく“義務”にしてほしいわけです。これはぜひお願いしたいですね」

取材・文/神武団四郎

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