「一度ドルビーで観たらもう戻れなくなる」樋口真嗣監督×音楽家・岩崎太整が語るドルビーシネマの真価
「音による環境の表現は、ドルビーアトモスとめちゃくちゃ相性いい」(岩崎)
――『新幹線大爆破』で岩崎さんは音楽のほかサウンドスーパーバイザーも務めていますね。
岩崎「セリフも効果音も音楽も三位一体でやる、音の統括をやらせてもらいました。自分がすべてやるのではなく、僕が組成したチームで樋口さんと共にポストプロダクションを行う形です」
樋口「実際に駅に行くと音があふれてるんですよ。発車のベルから列車の“ダダンダダン”って走行音も言ってしまえばリズムだったり。最初に岩崎さんに話したのは、実際に駅で聞こえる音を音楽に変えられないかという無茶なお願いでした」
岩崎「冒頭のタイトルバックのところですね。新幹線の走行音や発車ベルとかいろんな音がだんだん崩れて音程を持っていくようなことがやれないかって。おもしろいアイデアだなと思って、新幹線に乗って音を録ってきました」
――『新幹線大爆破』はNetflixの配信作品ですがドルビービジョンとドルビーアトモスを使って劇場クオリティで製作されています。
岩崎「ドルビーアトモスでいえば、音楽でトップ(天井)の4チャンネルを使いきることは少ないですが、サウンドエフェクトで考えると上からの音があるのはすごく大きい。音楽を作る時にはない喜びや楽しみがあるんです。例えば、車掌室で草彅(剛)さんが車内用マイクで『お客様に申し上げます』としゃべると、少し遅れて車輌の方から車内に流れるその声が聞こえてくる。一瞬ずらしたりスピーカーエフェクトをかけることで、閉鎖空間らしさを出すんです。音による環境の表現は、ドルビーアトモスとめちゃくちゃ相性いいですね」
「ドルビービジョン対応のモニターで統一されてほしいという想いはある」(樋口)
樋口「音の作業はセリフと音楽と効果音が食い合うから、すごい制約があるんです。音量を上げる・下げるでしかコントロールできないと、こっちを上げたらこっちが聞こえないとなりますが、ドルビーアトモスなら逃げ場が無限にある!という」
岩崎「空間を表現できるので、端の方で『なんとかならないのか?』と文句を言う声も入れられますが、これまでの5.1チャンネルだと単なるノイズになるから切るしかないなと。音が1つのチームで監督も一緒にいてくれるので、ちょっと音楽は下げようとか、もっと効果を入れようとか、その場で決められたのもやりやすかったですね」
樋口「最初から企んではいたことではありますが、観ていてどんどんのめり込むようにシチュエーションの頭から徐々に音圧を上げていったんです。でも配信だと1つ問題があって。途中で止めてトイレに行くと戻った時にすごい音量だと気がついて『うるさ!』ってなるという(笑)」
――ドルビービジョンはいかがでしたか?
樋口「配信を観るのは必ずしもテレビじゃないですよね。なにで観るかで良し悪しがあって、特にパソコンの安い外付けモニターは粗悪なものも多いんです。『その画で見ないでー!』みたいな。だからドルビービジョン対応のモニターで統一されてほしいという想いはありますね。もちろん作る側も徹底しないとだめですけど。統一してくれないと色や明るさのキャリブレーションが変わってくるので、疑わないといけないんですよ。ただしパラメーターをいじるのも好きなので、『自分で調整しなくて大丈夫』と言われると少し残念ではありますが(笑)」
