メリル・ストリープ&アン・ハサウェイ、『プラダを着た悪魔2』を「ファッション界の『トップガン マーヴェリック』」と紹介!「大爆発シーンと並ぶ驚き」を約束
「アニーからは、もっとオープンになるべきだと学びますね」(ストリープ)
――20年前に演じた役に戻るために、どんな準備を行ったのですか?
ストリープ「アニーは前作を観直さなかったみたい。YouTubeで2つのシーンを確認しただけだとか…(笑)。私はどんな映画だった思い出すため、ちゃんと観ましたよ。そうやってミランダに戻りつつ、ウィッグをかぶった瞬間、完全に役を理解できました。衣装や靴も含め、身に着けるものが助けになるんです」
ハサウェイ「今回、スケジュールが特殊だったんです。映画の製作が正式になった段階で、7月の撮影開始、翌年の5月公開が決まりました。つまり9か月しかない。ポスプロの時間がここまで短いのは、私のキャリアでも異例でした。だからもう、考えるヒマもなく思い切り飛び込んだ感覚です。監督にとってもチャレンジとなるので、彼にすべてを託すことが大きなモチベーションでした。作品の世界に一瞬で戻るには、素晴らしい共演者はもちろん、音楽も助けになりましたね。前作のテディ(セオドア)・シャピロの曲を聴き直したら、そのリズムに身体が無意識に反応したんです。実を言うと、前作でもアンディ役を完璧に理解できたかどうか自信がありませんでした。でも(監督の)デヴィッドがうまく編集で繋げてくれたので、今回もプレッシャーが少なかったのは事実です」
――前作での共演から現在に至るまで、おたがいからどんな影響を受けてきましたか?
ハサウェイ「3回もアカデミー賞を受賞してるメリルは、明らかに“平均的な”人ではありません。それなのに、常に地に足のついた、みんなと同じ人生を送っています。普通の感覚を演じているわけでもなく、実際にそういう人。そこにインスピレーションをもらっています。私も人間だからいろんな側面があるけれど、メリルのように真っ当に生きたいと思うわけです」
ストリープ「ありがとう。私は毎回、仕事のたびに、まわりの人からスポンジのようになにかを吸収するようにしています。基本的に演技の方法は人それぞれなので、レッスンを受けている感じです。(ハサウェイに向かって)この人からは、もっとオープンになるべきだと学びますね。すべての瞬間、生き生きと、フレッシュな気持ちでぶつかってくるので。脆さを見せる一方、やりすぎな演技もありますけど(笑)」
ハサウェイ「(爆笑)」
ストリープ「まぁ、そういうキャラですから。何事にもオープンに取り組み、その気持ちを維持しているのは立派です」
ハサウェイ「私はメリルの子どもたちとも仲良くなったんですよ」
ストリープ「アニーは私の子どもたちと同年代ですものね。3人の娘は俳優で、1人の息子はミュージシャン。彼らにもアニーの生き方を見習ってほしいと感じます。それを伝えてますが、聞いてくれてるかどうか…。まだまだ私が稼がなければ、と自覚させられます(笑)」
ハサウェイ「お子さんたちは、みんな才能がありますよ。私もスポンジになって吸収し合う意見には大賛成。さっきメリルには“やりすぎ”と言われたけど(笑)、わざと大げさに演じたんですから。監督に合わせて抑えた演技もできます。今回のデヴィッド(・フランケル)はワンテイク撮ると、『もっと大きく』などと言うので、私は“月からも見える”ような演技をしちゃうんです」
ストリープ「だから前作をみんな好きになったんでしょう。アニーは、笑ったまま腕を動かす玩具の人形みたいですから(笑)」
「この20年で、ファッション業界は大きく変わったと思います」(ストリープ)
――ミランダとアンディは仕事に関して葛藤やプレッシャーにも立ち向かいます。俳優としてその部分をどう感じますか?
ストリープ「プレッシャーですか…。俳優はほかの仕事とちょっと違うかもしれません。常に“失業中”という状態で、先のことはなにも決まっていないので(笑)。つねに新しい人と組み、新しい現実を受け入れ、新しい役を演じるのも俳優ならではでしょう。40年間、同じ会社で働いた私の父とは、ずいぶん違います。でもいまの若い人たちは、そこまで長く一つの場所にいないですよね。それも新しい現実。そんな現実を受け入れる、楽観的な気持ちが大事なのではないかしら」
ハサウェイ「仕事の安定は理想ですが、絶対に必要なものではありません。『プラダ』の2作の核心は“一人では前に進まない。チームでやるのが最高”という点。実際に、作品自体が多くの人の愛で作られています。そこは(不安定な職業の俳優として)断言したいですね」
――前作から20年のファッション業界の変化をどう感じていますか?
ストリープ「この20年で、ファッション業界は大きく変わったと思います。前作を撮った1年後にiPhoneが発売され、ビジネスモデルが激変したからです。雑誌に関しては前作の時代でも危機でしたが、現在、雑誌はオンラインのための“広告”という役割がさらに濃厚になりました。かつてはストリートから生まれたファッションに専門家が追従する流れでしたが、いまはどうやって稼ぐのかが最重要。それはファッション以外のどの業界も同じでしょうが」
ハサウェイ「前作ではファッション業界が隔絶された場所という側面がありました。その世界で活躍できる人を、門番のような存在がコントロールしていたのです。でもいまは、SNSが門番を不要にしましたよね?ファッションの民主化と言えます。個人のスタイルが花開き、ファッショナブルやスタイリッシュの基準がそれぞれの解釈に任されるようになったと感じます」
――では最後に、この新作で身に着けたアイテムで最もお気に入りのものを教えてください。
ストリープ「私のお気に入りのアイテムは…一日の終わりに自宅に戻ったシーンで、(いま履いているピンヒールを指し)こういう靴を脱いで履き替える、UGGのシープスキンのスリッパ。あのモコモコ感は愛さずにはいられない(笑)。そのほかに思い出すのは、ヘリコプターのシーンで着たグリーンのスーツでしょうか」
ハサウェイ「私の衣装ではないけれど、ミラノのギャラリアを歩くメリルのドレスです。予告編にも入ってますが、あんなにゴージャスな衣装をいままで見たことがありません。あのシーンは午前2時の撮影で、私もその場にいました。今回の最後のショットなので忘れられないんです。そしてもう一着は、ラストシーンでアンディが着ている衣装。観たら“なるほど”と納得できるはず」
ストリープ「たしかにあれは私も大好き」
ハサウェイ「真のスタイルとはこういうものだと、その衣装が教えてくれます」
取材・文/斉藤博昭
