上映時間“89分”の美学。チンパンジー×狂犬病『おさるのベン』監督が語る、ホラー映画を怖くする秘訣「すべてを削ることから始める」
南国の楽園・ハワイの森の奥にたたずむ一軒の高級住宅が恐怖の舞台へと変わる密室パニックスリラー『おさるのベン』が、2月20日(金)より公開を迎える。それにあわせてMOVIE WALKER PRESSでは、本作を「人生で初めて観た怖い映画へのラブレター」だと語るヨハネス・ロバーツ監督にインタビューを敢行。作品の成り立ちや、影響を受けた作品・クリエイター、そしてホラー映画づくりの流儀について話を聞いた。
友人を連れてハワイにある実家へと帰省した大学生のルーシー(ジョニー・セコイア)。彼女を迎えてくれたのは、作家で聴覚障がいを持つ父のアダム(トロイ・コッツァー)と、妹のエリン(ジア・ハンター)、そして言語学者だった亡き母が研究のために赤ん坊のころから育ててきたチンパンジーのベン。家族との再会に心躍らせるルーシーは、プールやパーティなど楽しい休暇を過ごすはずだったのだが、いつもは賢くてかわいいベンの様子に異変があらわれ…。
「チンパンジーは、狂犬病がなくても恐ろしい一面を持ち合わせている」
ホラー映画作家として、ありとあらゆるタイプの“恐怖”を題材にしてきたロバーツ監督。代表作である「海底47m」シリーズでは人喰いザメの脅威を描き、『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者』(18)では殺人鬼、『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』(21)ではいわゆるゾンビ(=アンデッド)。そして今作では、“狂犬病”にかかったペットと過ごす恐怖の一夜が描かれていく。
動物の潜在的な恐怖を描くという点では、「海底47m」シリーズと同様“モンスターホラー”に分類することができる。とはいえ大きな違いがあるとすれば、“襲う側”と“襲われる側”の関係性であろう。「親密で愛おしい家族の一員であるペットが変貌してしまう。それは恐ろしい出来事であると同時に、胸が張り裂けるような悲しみを引き起こすものです」。そう説明しながらロバーツ監督は、本作がスティーヴン・キング原作によるルイス・ティーグ監督作『クジョー』(83)の影響下にあることを公言する。
ペットとして飼われていたセント・バーナード犬が狂犬病にかかり、次々と人を襲っていく『クジョー』。1976年生まれのロバーツ監督にとって、それが“人生で初めて観た怖い映画”だったようだ。「『クジョー』は私が映画監督になりたいと思うきっかけになった作品であり、間違いなく『おさるのベン』にも大きな影響を与えています。なぜなら、私はずっと、いつか自分でもこのような映画を撮りたいと願い続けてきたからです」。
そんな念願の企画に着手したのは十数年前。「母の飼っている犬がプールの周りを走り回っているのを見た時にひらめいたんです。もし犬ではなく別の種類のペットが狂犬病にかかったら、なにが起こるだろうかと」。調査を進めていったロバーツ監督がたどり着いたのは、人間にもっとも近い知能を持つとされ、同時に人間をはるかに凌駕する腕力を携えた“チンパンジー”だった。「調べれば調べるほど、彼らは狂犬病がなくても恐ろしい一面を持ち合わせている動物だと知りました。非常に邪悪で凶暴で、その性質が、映画にこのうえない恐怖を与えてくれる。そう確信しました」。
