【ネタバレあり】ナオキマンがひも解く『ブゴニア』に隠された真意…陰謀論に対する考えを揺るがす革新性

【ネタバレあり】ナオキマンがひも解く『ブゴニア』に隠された真意…陰謀論に対する考えを揺るがす革新性

『女王陛下のお気に入り』(18)、『哀れなるものたち』(23)などの衝撃作を放ってきた鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が、プロデューサーに『ミッドサマー』(19)の監督アリ・アスターを迎えて、新たに放つ『ブゴニア』(公開中)。地球が宇宙人によって滅ぼされようとしていると信じる陰謀論者たちと、彼らに宇宙人と思われて誘拐された製薬会社の女性CEO。この監禁事件の結末には、なにが待ち受けているのか!?

MOVIE WALKER PRESSでは、陰謀論者のぶっ飛んだ言動の数々をはじめ、ブラックユーモアたっぷりの本作を、その道のプロである都市伝説や宇宙陰謀論などのコンテンツで人気のYouTuber、ナオキマンに語ってもらうインタビューを前後編でお届け。ネタバレなしの前編では、陰謀論初心者の編集Aが、ナオキマンの古今東西の知識と実体験から語られた解説をもとに、より陰謀論と本作への見識を深めることに成功。ということで今回はいよいよ、衝撃すぎると話題のラストへの解釈、リピート鑑賞したくなるポイントなどにも深く切り込む、ネタバレあり編をお届け!映画を観てから読んでいただくのがベターであることをはじめにお断りしておくが、これから観る人にとっても本作への興味が高まること間違いなしのはずだ。

女性CEOミシェルは、帰宅直後、突然2人の男に襲われる!
女性CEOミシェルは、帰宅直後、突然2人の男に襲われる![c]2025 FOCUS FEATURES LLC.

人気絶頂のカリスマ経営者であるミシェル(エマ・ストーン)は、陰謀論者のテディ(ジェシー・プレモンス)とドン(エイダン・デルビス)に誘拐されてしまう。「地球から手を引け」と支離滅裂な要求をしてくる2人と、「私は超有名人。このままだとFBIが動きだす!」と犯人に詰め寄るミシェルによる、まったくかみ合わない会話での心理戦が展開される。知能も話術も交渉術も完璧な女社長ミシェルは、狂信的な2人の陰謀論者にどう挑むのか?

※以降、『ブゴニア』のネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)に該当する要素を含みます。未見の方はご注意ください。

「ぶっちゃけ、金と権力さえあれば陰謀論は簡単に作れちゃうんですよ」

地下室へ監禁されてしまうミシェル。脱出すべくテディたちとの交渉を試みる
地下室へ監禁されてしまうミシェル。脱出すべくテディたちとの交渉を試みる[c]2025 FOCUS FEATURES LLC.

「一見すると、『どうやってあの地下室から逃げ出すんだろう?』というハラハラスリラーなのに、急にアンドロメダ星人という要素が飛び込んできてファンタジーに戻される…その駆け引きが斬新で、あまりない展開でした」と、本作の予測不能なストーリーテリングを称賛するナオキマン。そう、同じく編集Aも、序盤は状況を察したミシェルが、下手したら殺されるかもしれない危険性もあるなか、すぐさま環境に適応してあの手この手で脱出を試みる様子を応援したものだった…。

映画好きでもあるナオキマンも、その物語構成の秀逸さに太鼓判を押す。「この映画では、パーソナルな問題と巨大な問題が対になっていて、そこがおもしろいですね」と語る。「例えばクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』では、“父と娘の物語”と“地球を救う問題”。今回で言うと前者は“誘拐事件”で、後者は“地球の破壊”」。たしかに、パーソナルという観点から本作をひも解いていくと、どうしてテディが陰謀論者となり誘拐をするに至ったのかもわかってくる。

誘拐犯の正体は、ミシェルの経営する会社で働くテディ
誘拐犯の正体は、ミシェルの経営する会社で働くテディ[c]2025 FOCUS FEATURES LLC.

劇中では、テディが実はミシェルの会社で郵便係をしていることに加え、母親がミシェルの会社が作る医療用麻薬の治験に参加した結果昏睡状態になり、入院していることに胸を痛めていることが明かされていく。テディはあらゆる資本主義や権力者の犠牲になってきた存在であり、「誰も俺たちのことなんて気にかけていない」という自己否定に苛まれている。そしてテディは自身を取り巻く不幸のすべてが、ミシェルと会社の責任であると考え、彼女を責め立てるのだ。「テディ、かわいそう…やり方はともあれだけど、とにかくお母さんが大好きだったんだね」と、感情移入しがちな編集Aも、ほんの少しテディに同情する気持ちが働いたものだ。

とはいえテディに見られるように、問題の根本に向き合う前に、ほかのなにかのせいにしたがるのが陰謀論者にありがちな傾向の一つだと言われているそう。「この映画は本当に核心的な部分をついているなと思いました。テディたちを見て、『やばい、しっかりしなきゃ』と思う人たちもいるんじゃないでしょうか。困難をなにかのせいにして生きていくのは、いろんな意味でキツい。でも困難を乗り越えた先の風景を、多くの人が見ていますから」。陰謀を見る前に、現実を見る。そこにこそ、苦難を超えるヒントがあるのだ。


ナオキマンの解説に「へ~!」が止まらない!
ナオキマンの解説に「へ~!」が止まらない!

「なるほど、自分の不幸をすべて人のせいにするのもよくないよな…」と納得しかけた編集Aだが、いきなり「ただ…ぶっちゃけ、金と権力さえあれば陰謀論は簡単に作れちゃうんですよ」と暴露したナオキマン!「ええ!どういうことですか!?」と困惑する編集Aに、その真意を明かしてくれた。

「例えば、よく知らない無名の医者が、感染症に効くワクチンを開発したと言って不特定多数の人に打たせようとしたら、結構怖いですよね。しかし世界的に知られる製薬会社がワクチンを打たせようとしたら、それがどんなものであれ、皆さん、“これは安全だ”と思い込んでしまうでしょう。権力があれば思い通りに事を遂行できるし、都合の悪い点があれば、金の力で揉み消してしまえる。歴史は勝者が築くものですから、それが成功すれば歴史になります。しかしテディのような弱者には歴史は作れない。それが現実なんです」。まさに目から鱗!つまり本作においてはミシェルが強者、彼女の主張をなんの疑いもなく信じてしまうということか…だからこそ、今回のあの結末に衝撃を受けてしまう…ということなのか!?

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