「絶対に調べないほうがいい…」都市ボーイズ・岸本誠、『おさるのベン』で想起したヤバい事件と愛情という“呪い”
「“怖いものは怖い”は、絶対に忘れてはいけない」
上映中、何度も驚きっぱなしだったという岸本。なかでも特に「ゾクゾクした部分」として挙げるのは、物語が進むにつれてチンパンジーのベンがあらゆることを“学習”していく姿だ。劇中、ベンは人間の言葉をボタンひとつで発することができるタブレット端末を巧みに操作したり、救助を求めるためにスマートフォンを探す主人公たちの行動を先読みしたりと、持ち前の知能を最大限に活用しながら襲いかかる。
「『こんなことができるようになるんだ!』という喜びは、動物を飼ったことがある人なら誰もが体験したことがあると思います。でもそれが、邪悪な方向に行ってしまったら…。僕もネコを飼っていたことがあるのですが、賢くなればなるほど“次になにをやるのか”想像できなくなってくる。可愛らしいイタズラならいいけれど、『これは絶対やれないだろう』と思っていたことを平然と上回ってくる。その時に感じるゾワッと鳥肌が立つような感覚が、不意によみがえってきました」。
そう語る岸本は、本作を観ながら、ある1本のホラー映画を思い浮かべたのだとか。「作品としてはまったく似ていないのですが、観ている時の感覚は近いものがありました」と前置きして口にしたタイトルは、ロバーツ監督が絶大な影響を受けた“ホラーの帝王”スティーヴン・キングの中編小説を原作とした『ミスト』(07)。深い霧に覆われた街に現れた怪物と対峙する人々の姿を描いた作品で、後味の悪いラストがいまも語りぐさになっている1本だ。
「『ミスト』では霧のなかによくわからないものがいるとわかっているけれど、その正体がはっきりと見えてこない恐怖がありました。対して本作のベンは、その姿自体ははっきりと見えている。見えているけれど、この後どんな行動をするのかまるで見当もつかない。思いもしなかった習性があらわになったり、すぐに襲ってくるのかと思ったらあえて泳がせてみたり。“見えているのに見えていない”。そんなイヤな感じが近しいと思いました」。
まさに予測不能な行動を次々と繰りだしていくベン。さらに岸本は本作を通して、つい忘れてしまいがちな重要なことに気づかされたと語る。「動物は基本的に人間よりも力がある。ペットとしてポピュラーな犬であっても、本気で噛まれたら死ぬことだってある。たとえそれがどれだけ愛する家族であっても、動物には動物としての本能が残っているのだから、油断しすぎたら危ない。近ごろ話題になっているクマもそうですが、動物愛護の考えはたしかに大事だけれど、“怖いものは怖い”と恐れをもって向き合うことは絶対に忘れてはいけないと感じました」。
