難航したキャスティングに“トラウマ映画”たる所以…『レクイエム・フォー・ドリーム』が後世へ与えた影響をトリビアで探る
賛否両論を巻き起こしたトラウマ映画の金字塔
●無審査で行われた劇場公開
ヘロイン依存症の人々の末路を描いた本作は、痛ましく救いのない展開から物議を醸した。カンヌ国際映画祭の深夜上映で2000人の観客がスタンディングオベーションを送った一方、トロント映画祭では真逆の反応を示した観客も。「最高の反ドラッグ映画」「テクニック偏向で中身がない」など批評も賛否両論で、評価は大きく割れた。
そんな本作はアメリカ映画協会(MPAA)によってNC-17(17歳以下鑑賞禁止)という実質的な成人指定にレイティングされた。そこで配給会社アーティザン・エンターテインメントは無審査での公開を決定。しかし自主的に17歳以下の観客にはチケットを販売しない映画館が出るなど、劇場公開時にも議論を呼んだ。
観客からの反応も「傑作!」「二度と見たくない」「家に帰ってシャワーを浴びたい」など真っ二つ。ちなみに、アメリカの映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では批評家スコア80%、一般観客スコア93%と好意的(2026年2月6日時点)。イギリスの映画誌「エンパイア」が2009年に発表した「落ち込む映画ランキング」では堂々の1位に選出されている。
●アニメ化されたヒップホップ・モンタージュ
観た者に強烈な印象を残す本作はクリエーターたちをも刺激した。2003年に放映された人気アニメ「ザ・シンプソンズ」のシーズン14第12話「スペル・ミスは人生のミス?」では、謎の肉を加工したバーガーを食べるシーンで瞳孔や血管など肉体の変化をヒップホップ・モンタージュで描写。若さと美しさが得られる再生医療の恐怖を描いた『サブスタンス』(24)のコラリー・ファルジャ監督もまた、影響を受けた作品の一つに本作を挙げている。
また、直接的な言及はないが、ヘロインに溺れたカップルを描いたヒース・レジャー、アビー・コーニッシュ主演の『キャンディ』(06)の破壊に向かって突き進む展開は、人間味をまぶした『レクイエム・フォー・ドリーム』という味わいだった。2000年以降の容赦ない系のドラッグ関連映画は、本作の影響下にあるといってよいだろう。
多彩な映像や音を駆使して依存症の恐怖を描いた『レクイエム・フォー・ドリーム』は、巨大なスクリーンと音響施設でこそ真価が味わえる一本。一瞬たりとも目を離せない緊張感あふれるアロノフスキーの幻想世界を、この機会に映画館の暗闇で味わってみてはいかがだろうか。
文/神武団四郎
