映画『夜勤事件』は原作ゲームファンも納得の“再現度”!気鋭のスタジオ「チラズアート」の魅力をゲームライターが徹底解説

コラム

映画『夜勤事件』は原作ゲームファンも納得の“再現度”!気鋭のスタジオ「チラズアート」の魅力をゲームライターが徹底解説

ゲーム「夜勤事件」は、映画にどう落とし込まれているのか

【写真を見る】高時給に惹かれて始めた夜勤のアルバイト。ある時から、少しずつ違和感が結貴乃を襲うようになる(『夜勤事件』)
【写真を見る】高時給に惹かれて始めた夜勤のアルバイト。ある時から、少しずつ違和感が結貴乃を襲うようになる(『夜勤事件』)[c]2025「夜勤事件」製作委員会

話題を戻して、今度は映画『夜勤事件』にゲームの魅力はどう反映されたのかをテーマに、原作パートとオリジナルパートを比較して、抑えるべき映画の見どころを解説したい。極力ネタバレは避けようと思うので安心してほしい。

まず筆者が映画を観て最も驚嘆したのが、その圧倒的な“再現度”と原作へのリスペクトである。例えば、主人公の結貴乃(南)が自身の住むアパートメントから勤務先のコンビニへ向かう冒頭のシーンでは、主観的な“一人称視点”の手法を使っている。これは、原作に準拠した演出であり、ゲームファンは思わず「あのシーンだ!」と歓喜するだろうし、ホラー映画好きには「なにかが起きそう」と思わせるには十分な、すばらしいツカミだった。

映画全編を通して、ゲーム的な一人称視点とシネマティックなカメラワークの切り替えが滑らかなになされており、恐怖への没入感がより増した映像になっていたと感じる。

結貴乃が働くコンビニをめぐる事件の捜査にあたる近藤(田中俊介、左)と猿渡(右)
結貴乃が働くコンビニをめぐる事件の捜査にあたる近藤(田中俊介、左)と猿渡(右)[c]2025「夜勤事件」製作委員会

また、『夜勤事件』のハイライトの一つとなるのが、勤務先の店員をはじめとする個性的な登場人物たちだ。まず、関演じる船橋という先輩店員は、不意に怪談話をして怖がらせたり、ロッカーの中から突然飛びだして驚かせたりといった奇妙な言動が目立つ、結貴乃に密かな想いを寄せるストーカー気質の人物。

ほかにも、コンビニへ“あるモノ”を届ける配達員や謎の老婆など、原作そのままに再現された不気味な人物像は一見の価値がある。物語を動かすキーパーソンの刑事、猿渡(竹財)、ホームレスの松浦(五頭)といったオリジナルキャラクターも映画に深みを与えており、原作をうまく補完していた。

怪奇現象に見舞われる結貴乃は、突如現れた女性、珠代(櫻井淳子)からお守りを渡される
怪奇現象に見舞われる結貴乃は、突如現れた女性、珠代(櫻井淳子)からお守りを渡される[c]2025「夜勤事件」製作委員会

ゲーム的な演出でいえば、徹底的に再現された“怪異”へのアプローチも見逃せない。特に、深夜のコンビニ勤務という日常パートは原作を見事に再現しており、ふとした来客時のチャイム音がとてつもなく不気味だった。中盤〜後半にかけて怪異は激しさを増していくが、その演出や見せ方、役者の演技もすばらしいもので、ともすればゲームを超える恐怖がスクリーンに映しだされていた。

さらに注目すべきは、往年のJホラーの影響も感じさせる「シナリオの拡張と再構築」にある。原作では、プレイヤーの勤務日数が進むにつれて、より不可解な怪異と謎が迫ってくる構成なのだが、映画でも基本的にそのフォーマットを踏襲している。ただし、ゲームではおぼろげにしか事件の全体像は明かされないため、やきもきさせられた。

映画では、原作に忠実ながらも大胆な肉付けをしてシナリオを拡張させており、腑に落ちるものに生まれ変わっていた印象だ。詳しくは話せないが、物語に仕掛けられた巧妙な展開、アッと驚くような結末は、「リング」や『らせん』(98)など往年のJホラーの匂いも漂わせており、上質なホラームービーに仕立てられていた。

チラズの恐怖はどこまで伝播するのか――スタジオへの期待

真夜中に一人、コンビニバイトに勤しむ結貴乃(『夜勤事件』)
真夜中に一人、コンビニバイトに勤しむ結貴乃(『夜勤事件』)[c]2025「夜勤事件」製作委員会


記念すべき初映像化作品である『夜勤事件』は、原作ゲームファンをも唸らすすばらしい出来栄えだった。ぜひとも“新たな物語”として再構築された恐怖をスクリーンで体験してほしい。そしてゆくゆくは、第2弾、第3弾と映画化が続いていくかもしれない。なぜなら、チラズアートにはまだまだユニークでパワフルな作品が数多くあるからだ。もしも実現すれば、いちファンとしてはうれしい限りである。

文/井上敬文(DOOMKID)

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