映画『夜勤事件』は原作ゲームファンも納得の“再現度”!気鋭のスタジオ「チラズアート」の魅力をゲームライターが徹底解説

コラム

映画『夜勤事件』は原作ゲームファンも納得の“再現度”!気鋭のスタジオ「チラズアート」の魅力をゲームライターが徹底解説

大ヒットホラーゲームを原作にしたJホラー『夜勤事件』が2月20日より公開中だ。本作は、高時給に惹かれ夜勤アルバイトを始めた女子大生が、深夜のコンビニで思いもよらぬ“怪異”に巻き込まれる恐怖を描いており、監督には「きさらぎ駅」シリーズ、『リゾートバイト』(24)などで知られる永江二朗。主人公の女子大生役には若手女優の南琴奈、事件を担当する刑事役に実力派の竹財輝之助を据え、関哲汰や五頭岳夫、櫻井淳子、加藤夏希らが脇を固めている。

二宮和也の怪演でも話題となった『8番出口』(25)、殺人マスコットたちによる恐怖を描く『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2』(公開中)など、近年インディーホラーゲームの実写化が続いているが、本作も同様。原作ゲームを手掛けたのは、Z世代や配信者界隈を中心に絶大な人気を誇る気鋭のスタジオ「Chilla’s Art」(以下、「チラズアート」)で、普段ゲームをプレイしない人には聞きなじみがないかもしれないが、同スタジオが手掛ける作品群は一種のブランド化の様相も呈している。

そこで本稿では、ゲームライターとして多くのチラズアート作品に触れてきた筆者が、同スタジオの作品の魅力と、それらが「どう映画に落とし込まれ昇華されたのか?」を、ゲームと映画、2つの視点を交えながら解説していきたい。

映画化に至ったインディーホラーゲーム「夜勤事件」とは?

銭湯で働く女性となり、強烈な客たちと対峙しながら恐怖に立ち向かっていく「地獄銭湯 Restored Edition」
銭湯で働く女性となり、強烈な客たちと対峙しながら恐怖に立ち向かっていく「地獄銭湯 Restored Edition」[c]Chilla's Art, LLC All Rights Reserved.

2020年にPCゲームのダウンロード販売プラットフォーム「Steam」で発売された、現代日本を舞台にしたゲーム「夜勤事件」。とりわけ多くの実況者やVTuberがプレイしたことで広く認知され、実況動画の総再生数は6000万回を超える異例の大ヒットを記録している。

ストーリーは、古びたアパートで一人暮らしをする女子大生の田鶴結貴乃が、深夜のコンビニでアルバイトを始めるのだが、勤務中に奇妙な来客や不可解な怪現象を次々に体験する。プレイヤーは彼女を操作して業務をこなすなかで、孤立した空間に潜む“なにか”の謎を解き明かしていく。本作が多くのプレイヤーを惹きつけた最大の理由は、「日常のなかに潜む非日常的な恐怖」と「VHSテープのような低解像度の画質が生む不気味さと違和感」を非常に上手くゲーム体験に落とし込んでいる点にあるだろう。

独特のグラフィックでも知られるチラズアート作品(「夜勤事件」)
独特のグラフィックでも知られるチラズアート作品(「夜勤事件」)[c]Chilla's Art, LLC All Rights Reserved.

より具体的に、以下の3つのポイントを挙げてみよう。

まず1つ目は、リアルな日常パートと怪異現象の落差からくる心理的恐怖を巧みに描写していることだ。先の通り、プレイヤーは実際にレジ打ちや品出し、廃棄処理といった日ごろの業務をこなす必要があるのだが、“深夜のコンビニ”という多くの人が訪れたことのある場所で不意に訪れる異変は、日常風景を一瞬にして非日常的空間に変え、「なにかが起きるのではないか」という心理的不安を抱かせる。一人称視点の没入感も相まって、その恐怖は倍増するのだ。

2つ目は、VHS風の画質で構築されたローポリゴンな世界観と、癖のある登場キャラによってもたらされる“不気味なプレイ感覚”だ。後述する「チラズらしさ」にもリンクする話だが、PS1時代を彷彿とさせる、低解像度でポリゴン数の少ないテクスチャは独特で不穏な雰囲気を描出しており、不鮮明だからこそ“なにかの気配”を感じてしまう怖さを生みだしている。また、挙動不審な先輩店員や怪しさ満点の客など、人間か怪異か判別がつかない、のっぺりとしたキャラ造形にドキッとする場面も多々あり、不気味なイメージを鮮烈に印象づける。

おでんや飲食物などを多数取りそろえる、普通のコンビニのように見えるが…(「夜勤事件」)
おでんや飲食物などを多数取りそろえる、普通のコンビニのように見えるが…(「夜勤事件」)[c]Chilla's Art, LLC All Rights Reserved.

最後の3つ目は、ゲーム実況や配信コミュニティとの親和性の高さである。不気味な客や予想外のタイミングで起こる怪現象など、ゲーム中の数々のホラー演出はリアクションを取りやすく配信映えがよいため、VTuberやゲーム実況者たちがこぞってプレイした。また、短時間(約40分〜1時間)でクリアできるカジュアルさやマルチエンディング形式など、ストーリーの背景や謎について考察できる余白があることも、ユーザーにウケた理由の一つだ。

ともかく、これらの要素が欠けることなく組み合わさった結果、普段ホラーゲームを遊んだことのない層にまで「夜勤事件」の名が知られ、爆発的人気を獲得したといえるだろう。


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