『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』原作者が絶賛する、板垣李光人&中村倫也の声とキャラクターとの親和性

『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』原作者が絶賛する、板垣李光人&中村倫也の声とキャラクターとの親和性

「今回はまっすぐセリフを言うことしか考えていませんでした」(中村)

――武田先生のお話を伺っていると非常にロジカルに物語を構築された印象を受けますが、逆に「キャラクターが動き出してしまった」瞬間はありましたか?

武田「ありました。やはり、考えて描いている部分と成り行きに任せようと思っている部分の両方でしたね。大雑把なところは想定しつつ、細かなことは描きながら…でした」

田丸と吉敷の頼れる上官・島田をはじめ、個性豊かなキャラクターたちが登場する
田丸と吉敷の頼れる上官・島田をはじめ、個性豊かなキャラクターたちが登場する[c]武⽥⼀義・⽩泉社/2025「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」製作委員会

中村「連載期間自体が長いですもんね」

武田「そうなんです。例えば小杉と片倉という登場人物に関しては、真逆の性質をもったキャラクターとして打ち出しつつも、その後のエピソードに関しては考えていませんでした。原作では『閉じ込められた片倉が生き残るために仲間の死体を…』という描写がありますが、小杉か片倉のどちらかにその役目を担わせることしか決めていなくて。お互いの役割が逆転する可能性もあるなかで、動かしてみたら片倉のほうが勝手にそうなっていったんです」

中村「片倉らしいですね」

武田「描いてみると結果的に“らしく”なるんですよね」

――ちなみに板垣さんは、演じられる時に元から「考えていた」とおりだった割合と、結果的に「こうなった」という割合では、どのような比率だったのでしょう。

板垣「今回でいうと、最終的に『こうなった』が7割、『考えていた』が3割ほどでしょうか。初日はアニメーションということもあり10割『考えた』状態で臨んでいましたが、それでは全然通用しなくて、最終日に初日のアフレコ部分もすべて録り直しました。ただ、そもそも芝居というもの自体がその時の感情に任せて出てくると思うので、最終的に普段やっている芝居のように『考えずにやれる』割合が増えたのは大きかったです」

過去にもアニメーション映画の吹替え経験を持つ2人。その経験は活かされた?
過去にもアニメーション映画の吹替え経験を持つ2人。その経験は活かされた?撮影/Jumpei Yamada(ブライトイデア)  スタイリング(板垣李光人)/伊藤省吾(sitor) ヘアメイク(板垣李光人)/KATO(TRON) スタイリング(中村倫也)/戸倉祥仁/Akihito Tokura (holy.) ヘアメイク(中村倫也)/Ryo Matsuda (Y’s C)

――初アニメーション出演だった『かがみの孤城』(22)の経験は、どれくらい活きたのでしょう。

板垣「ほぼ活きてない…(笑)。というと語弊があるかもしれませんが、結構期間が空いたこともありますし、『かがみの孤城』はアフレコが半日ほどだったんです」

中村「ヘッドホンしたことくらいしか覚えてないよね、きっと(笑)」

武田「その時間だと、なかなか“なにかを掴む”というところまでは難しいですよね」

板垣「そうですね。もちろんその当時の全力は出し尽くしましたが、これで大丈夫だったかな…という想いはありました。そして数年経ち、振出しに戻って…(笑)。ゼロの状態からスタートした感覚です」

――中村さんは『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』(23)などで劇場アニメーションに参加されています。

中村「今回はまっすぐセリフを言うことしか考えていませんでした。吉敷というキャラクターもそうですし、この作品の大事にしないといけないところはそこなんじゃないかと感じて。少なくとも田丸と吉敷に関しては脚色しすぎるのはよくないだろう、と思いながら現場に入りましたね。収録は絵コンテ段階で行われたので、プロの声優さんだったら画がその状態でもアフレコ台本などから読み解いて問題なく動けるのでしょうが、自分は慣れていないのでラフ状態の絵を見て『これは、誰…?』となることもまだまだありました」

中村が演じた、どこまでもまっすぐな性格の吉敷。田丸と共に必ず生きて帰ることを誓う
中村が演じた、どこまでもまっすぐな性格の吉敷。田丸と共に必ず生きて帰ることを誓う[c]武⽥⼀義・⽩泉社/2025「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」製作委員会

板垣「1回タイミングを逃すと立ち尽くすしかなくなりますよね(笑)」

中村「ただただ流れる絵コンテを見続ける状態になるという(笑)。自分は運動神経がいいほうだったので経験したことがありませんが、目の前の大縄跳びに入れない気持ちってこういうことだと、はたと思いました。『すみません、止めて下さい!』って言いたくなる(笑)」

――自分は運動神経が悪いので大縄跳びの例えがわかりすぎます(笑)。体育の時間は「縄が上の時に行くのか、下の時に行くのか、どっち!?」となっていました。

中村「それでいうと、アフレコ台本は上段にト書き(場面説明や動きの指示)や心情の説明、下段にセリフが書かれているのですが我々も『いまどっち見ればいいの!?上?下?』とはなりました(笑)」

板垣「セリフは下段だけ見ればいいのかと思いきや、上段にも『ハッと息をのむ』のような指示が書かれているんですよね。見逃すといけないのでマーカーを引いて臨みました」

中村「そういった状況下でしたから、後日ほぼ完成前の映像を観た時はびっくりしました。こんなに画が動いてる!アニメだ!って(笑)」

■衣装協力
・中村倫也
シャツ:¥146,300(税込)
ジャケット:¥259,600(税込)
パンツ :¥125,400(税込)
※すべてMARNI/マルニ ジャパン クライアントサービス(0120-374-708)