樋口真嗣監督が「アバター」に見るJ・キャメロン監督の“矛盾”に共感。「矛盾があるからこその作家性」【「アバター」最新作公開記念特別連載】

樋口真嗣監督が「アバター」に見るJ・キャメロン監督の“矛盾”に共感。「矛盾があるからこその作家性」【「アバター」最新作公開記念特別連載】

「僕の耳には『オレはこれがやりたかったんだ!』ってキャメロンの声が聴こえちゃいました」

――ところで、このシリーズで樋口さんが好きなキャラクターは誰でしょうか。

「クオリッチ大佐(スティーブン・ラング)です。もう一択!大好きです。1作目の時から彼が出てくるだけで『いいぞ、もっとやれ!』という感じ(笑)。彼を悪人、このシリーズのヴィランという人は多いけれど、彼は軍人で、命令されたことをちゃんと守っているだけ。1作目の最後、死んでしまうんですが、2作目にも姿を変え、ナヴィ族のルックスで登場してくれたので本当にうれしかった。本シリーズの表のテーマは自然や家族、愛だけど、クオリッチはその対極。メカ軍団を率いていて自然に歯向かっている。こういうキャラクターがいないと映画はシマらないし、キャメロンも描きたいに違いないんです。

第2作でナヴィ族の姿をしたアバターで復活を果たしたクオリッチ大佐
第2作でナヴィ族の姿をしたアバターで復活を果たしたクオリッチ大佐Photo:『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』[c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

あとはシガーニー・ウィーバーが演じていたキリですね。シガーニーは1作目(のグレイス・オーガスティン博士役)で死んだので2作目から出てこないと思ったら、パフォーマンスキャプチャによってティーンの女の子になって再登場していた。演技をしているのは76歳のおばあちゃんなのに、ちゃんとティーンの女の子に見える。(ロバート・)ゼメキス監督の『ポーラー・エクスプレス』(04)では、トム・ハンクスがパフォーマンスキャプチャでCGキャラクター化されているけど、例え実年齢より若いキャラクターを演じたとしてもどことなくおじさんっぽさが残っていた」

――でも、シガーニーにはそれがない?

「ない。まるでない」


――キャメロンは、すべての演技は俳優自身のものを活かして、手を加えてないと言っていますけど。

「ですよね。これはパフォーマンスキャプチャの技術が凄いのか、それともシガーニーの演技力なのか。シガーニーってもしかしたら、乙女心をまだ秘めているのかもしれないって(笑)。どちらにしろ、表現力はすばらしいですよ」

“エイワ”と特別な絆を持つ少女、キリ
“エイワ”と特別な絆を持つ少女、キリPhoto:『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』[c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――またキャメロンは、本作を「アクション映画とは呼んでほしくない」とも言っていますが、予告編を見るとアクションも大充実しているようですね。

「映像作家はみんな、そうなんです。戦争はよくない、自然を愛そうと言いつつ、やっぱりバトルシーンが大好き。キャメロンも兵器をこれでもかと登場させてますよね。『ウェイ・オブ・ウォーター』の時なんか、鯨のようなトゥルクンを捕まえるため、モーターボートの進化系のようなメカが次から次へと出て来てましたから。科学によって自然を蹂躙するのはダメだと言っているんだから、そういう描写にそこまで力を入れなくてもいいのでは?とは思うものの、やっぱりしっかり描かないと気が済まない。そういうところに矛盾を感じはするんだけど、監督は誰しも、そういう矛盾を抱えて映画を撮っているんです。『ターミネーター2』(91)だって、核戦争はよくない、命を呈して止めようとする話にもかかわらず、途中で描かれる核戦争の描写は凄かった。僕の耳には『オレはこれがやりたかったんだ!』ってキャメロンの声が聴こえちゃいましたからね(笑)。そういうのって、とても理解できるし、同じフィルムメーカーとしてうれしくなっちゃうんです。でも、そんな矛盾がないと奥行きは生まれない。矛盾があるからこその作家性なんだから、あなたにしか出来ないところまで突き進んで欲しいと思いますね」

J・キャメロン監督のフィルムメーカーとしての“矛盾”を指摘する樋口監督
J・キャメロン監督のフィルムメーカーとしての“矛盾”を指摘する樋口監督撮影/河内彩

――今回も予告編で、パンドラの空を新しいメカらしき物体が埋め尽くしていく描写がありますね。

「そうです。だから、やっぱり好きなんですよ!あとはパワードスーツ。『エイリアン2』(86)から、キャメロン映画のお約束のように登場しているし、今回の予告編でもしっかり描かれていた。パワードスーツもキャメロンのお約束アイテムです)」


『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』特集【PR】

関連作品