「最新技術で原点回帰」清水崇監督が語る、『ターミネーター』から不変の“キャメロン節”【「アバター」最新作公開記念特別連載】
2009年に3D映像革命を巻き起こし、現在も世界興行収入歴代1位に君臨するジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(09)。その待望となるシリーズ最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が12月19日(金)より公開となる。
最新技術をふんだんに投入した映像体験で、世界で空前のヒットを記録している本シリーズだが、最新作ではさらにスケールアップ!そこでMOVIE WALKER PRESSでは、日本を代表するトップクリエイターたちに「アバター」の凄さを語ってもらう特集連載を展開。
第1回の山崎貴監督に続く第2回は、『THE JUON/呪怨』(04)で日本人監督の実写映画で初めて全米興行成績1位に輝き、Jホラーの巨匠としていまも最前線に立ち続ける清水崇監督が、壮大な物語と体感的映像を深堀り&分析。ジェームズ・キャメロンの資質や巧みに計算された3D映像など「アバター」の魅力を解き明かしていく。
第1作で神秘の星パンドラに“アバター”として潜入した元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)は、ナヴィのネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と恋に落ち、人類と戦う決意をする。2作目『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)では家族を築いたジェイクらが海へと戦いの場を移し、愛する者のために人類と対峙。侵略を退けることに成功するが、家族の命を奪われるという大きすぎる犠牲を伴った。そして最新作『ファイヤー・アンド・アッシュ』では、同じナヴィでありながらパンドラを憎むアッシュ族のヴァラン(ウーナ・チャップリン)が人類と手を組み襲来し、かつてない“炎の決戦”が始まる。
「いまだに『アバター』シリーズを超えるほど3Dを活かした映画は出ていない」
――初めて『アバター』の存在を知った時どう感じましたか?
清水「最初はタイトルだけ聞いたんですが、まだ“アバター”という言葉すら一般に認知されていない時だったので、先駆けてるなという印象を受けました。初めてビジュアルを見た時は、なんか青い人がいるんですけど…と(笑)。仮想空間じゃなく、違う星の種族の肉体でアバターになるんだろうと想像はつきました。キャメロン監督の代表作『ターミネーター2』の時、液体金属のターミネーターが出るなんて誰も思っていなかったですよね。アーノルド・シュワルツェネッガーが演じるT800が敵か味方かもわからないまま観て驚かされた、そんな仕掛けをしてくる人ですからね」
――実際に映画をご覧になっていかがでしたか?
清水「映画を観て感じたのは、アメリカ人の根底にある理念。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』や『小さな巨人』など、古くからアメリカ映画は定期的に自分たちが侵略した部族の理念に立ち返ってきました。ネイティブアメリカンを追い出して自分たちの王国を作った後悔や反省を思い返し、自然に立ち返ろうという。そういう意味で『アバター』の物語は王道を行っているし、古典的でありつつそれを最新技術で作っています。製作の裏側から見ても、CGに置き換えられていますが、表情など根底の部分は役者をトレースしています。“アバター”をしながら『アバター』を作るというところにも感心しました」
――続く『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』はいかがでしたか?
清水「水はどう動くか読めないので、CGの表現が難しいんですよ。1作目より大変なことに取り組んでいるな、というのは感じました。『アバター』は、日本の作品で言うと宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『もののけ姫』に近しいイメージがあります。しかも僕が好きな『未来少年コナン』の少年が巨大な飛行機の羽の上で走り回りながら戦うところを彷彿とさせるシーンもあったんです。キャメロン監督はそこまで網羅してるのかと驚きました」
――ほかにも日本のカルチャーから影響を受けたと感じるシーンはありましたか?
清水「人間が搭乗して動かすロボット的なメカですね。それこそアバターを使ってリモートで安全を確保しながら操縦すれば済むんじゃないの?と思うんですが、人間が乗ったメカで体の大きなナヴィと戦わせたかったんでしょう(笑)。キャメロン監督の趣味とか憧れもあるのかなと思います」
――『アバター』は3D映画としても高く評価されましたが、清水監督はどう感じましたか?
清水「普通の映画と同じように、3D映画も四角いスクリーンで見ますよね。でも四角いフレームから被写体が見切れてしまうと、特に手前にあるものは立体感がそがれてしまうんです。『アバター』では空や海、今回は火まで持ち込みながら、見せるべき被写体がフレーム内に収まるよう画角が計算されています。それをお客さんに意識させないよう作っているのも、3D映画を作ったことのある僕としては感心したところです。奥行き感も話題になりましたが、キャメロン監督は映画としてお芝居や世界観を観てほしかったんだと思います。例えば時間の短いアトラクション映像の3Dは、その一瞬で楽しませるために飛び出す3Dに特化していますが、この映画はそうではないということです。いまだこのシリーズを超えるほど3Dを活かした映画は出ていないと思いますね」
――このシリーズの主要キャストの演技はパフォーマンスキャプチャを通して描かれています。この手法をどう見ましたか?
清水「それまで大半のモーションキャプチャは、アクションに長けた人が現実ではできないアクションを演じ、別の役者に吹き替えたりゲームのキャラクターにトレースする使い方でした。でも『アバター』はデジタルに置き換えられているのに、キャラクターの汗や体臭まで感じられたんです。役者はいらないと言われつつある時代に、青くて大きくて顔の構造が違っても、シガーニー・ウィーバーが演じたキリに『エイリアン2』と同じ表情が垣間見れたことに驚きました。お芝居がちゃんとトレースされているんですね。水中までモーションキャプチャを使っていますが、もっと簡単に済ますこともできるのに、でもそれじゃダメなんだという、キャメロン監督のこだわりが活かされているんでしょう」

