名作の宝庫!?『TOKYOタクシー』から『タクシードライバー』、「TAXi」、『ナイト・オン・ザ・プラネット』まで多彩なタクシー映画たち

名作の宝庫!?『TOKYOタクシー』から『タクシードライバー』、「TAXi」、『ナイト・オン・ザ・プラネット』まで多彩なタクシー映画たち

地球上の5つの都市で、同じ時間にタクシーの中で起きる「ちょっといい話」を描く『ナイト・オン・ザ・プラネット』

ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)はロードムービーの名手ジム・ジャームッシュがタクシーをテーマに撮った5本の短編からなるオムニバス。ロサンゼルスの午後7時7分、NYの午後10時7分、パリの午前4時7分、ローマの午前4時7分、そしてヘルシンキの午前5時7分。地球上の5つの都市で、同じ時間にタクシーの中で起きる「ちょっといい話」が描かれる。どれも運転手と客として出会った他人同士が、移動中に心を通わせていく立派なロードムービー。最初はぎこちなかった2人がしだいに相手に興味を抱き、別れ際には互いに大切な存在になっていく様が心地よい感動を呼ぶ。

ジム・ジャームッシュがタクシーをテーマに撮った5本の短編からなるオムニバス『ナイト・オン・ザ・プラネット』
ジム・ジャームッシュがタクシーをテーマに撮った5本の短編からなるオムニバス『ナイト・オン・ザ・プラネット』[c]Everett Collection/AFLO

『TOKYOタクシー』の原作となったフランスのヒューマンドラマ『パリタクシー』

パリタクシー』は『TOKYOタクシー』の原作であるフランスのヒューマンドラマ。シャルル(ダニー・ブーン)は借金を抱えたうえ、免停寸前という切羽詰まったパリのタクシー運転手。ある日、92歳のマドレーヌ(リーヌ・ルノー)を介護施設に送り届ける依頼を受けたシャルルは、パリの各所を巡るなかでしだいに彼女と心を通い合わせていく。

『TOKYOタクシー』の原作となったフランスのヒューマンドラマ『パリタクシー』
『TOKYOタクシー』の原作となったフランスのヒューマンドラマ『パリタクシー』[c]Everett Collection/AFLO

施設に入るマドレーヌにとってこれが最後のパリ。思い出の地を巡りながら、彼女は暴力的な夫との暮らしや復讐劇など壮絶な人生をシャルルに語る。マドレーヌにとってシャルルは自分を肯定してくれた数少ない男性となり、家庭に問題を抱えたシャルルにとっても彼女の語る過去が大きな気付きになり、やがて奇跡のような結末が訪れる。基本的な構成は『TOKYOタクシー』に引き継がれているが、シャルルがシリアスな問題を抱えたオリジナル版は山田版よりハードな印象。『戦場のアリア』(05)や『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』(09)など実話系作品で注目されたクリスチャン・カリオン監督らしい、シリアスな感動作になっている。ぜひ、両者を観比べてみてほしい。

交流を重ねるうちにお互いがかけがえのない存在になっていく(『パリタクシー』)
交流を重ねるうちにお互いがかけがえのない存在になっていく(『パリタクシー』)[c]Everett Collection/AFLO


ほかにもタクシーを題材にした映画には、飼い猫を助手席に乗せたのを機に再生していく中年男を描いた『ねこタクシー』(10)、イランのジャファル・パナヒ監督自身がタクシー運転手となって乗客と会話しながらこの国が抱える問題を浮き彫りにするモキュメンタリー『人生タクシー』(15)、運転手と乗客の会話を通した人生賛歌『ドライブ・イン・マンハッタン』(23)など多彩な作品がそろっている。この機会にお気に入りの1本を見つけてほしい。

文/神武団四郎

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