「不安に寄り添いながら、若者にとって力になれるような映画」細田守監督が明かす『果てしなきスカーレット』に託した想い

「不安に寄り添いながら、若者にとって力になれるような映画」細田守監督が明かす『果てしなきスカーレット』に託した想い

「死と隣り合わせの状況を経験したからこそ“生と死”について考えること、感じることは当然あったと思います」

スカーレットの父、アムレット(市村正親)はクローディアスに嵌められて処刑される
スカーレットの父、アムレット(市村正親)はクローディアスに嵌められて処刑される[c]2025 スタジオ地図

タイトルの「果てしなき」に込めた想いについては「受け取り方によっては“終わりなき”という意味にもとれます。“終わりなき争いは続く”とも言えますし、それでも“争いを終わらせようという試みは果てしなく続く”とも言えます。肯定的に捉えるとすれば、ずっとこの努力は続いていくもの、と言えます。でも、僕ら人間というのは呪われたようにずっと繰り返し続けていくのかもしれない。つまり、どっちにも取れると思うんですよね。スカーレットは16世紀の王女。スカーレットに限らず、僕たちも、いま、自分の世代が果たせないことをその後の誰かが引き継ぐかもしれない。もしかしたら、新しい考え方を生み出して、復讐の連鎖を終わらせてくれるかもしれない。そのような希望を持った言葉として名付けたつもりです」と解説した。

本作で「死後の世界」も描かれていることから、細田監督自身の死生観が影響しているのかという質問に対して、「そうかもしれません」と回答。「本作において“生と死”も大きなテーマです。こんな大きなテーマに挑むことになるとは思わなかったのですが、いままでの作品でも少なからず、考えとしてはあったと思います。

物語の着想は世界が直面している問題からだった
物語の着想は世界が直面している問題からだった撮影/杉映貴子

“生と死”をテーマにするからこそ、これぐらいのスケールの映画になった気がしています。そのきっかけは僕自身が死と隣り合わせになりかけるという体験をしたこと。具体的にはコロナになったということです」と自身の経験を振り返る。「コロナになって入院すると最初の1週間の対応が大事だと言われます。つまり運命は1週間後に改善するか、悪化するかに分かれるようなんです。ちょうど『竜とそばかすの姫』を作っている時だったので、映画が完成するかどうかという状況下で1週間後に分かれ道がやってくるなんて、大きな脅威に立たされたと感じずにはいられませんでした。僕は幸いにも改善し、快復することが出来ましたが、この入院期間中に死と隣り合わせの状況を経験したからこそ“生と死”について考えること、感じることは当然あったと思います」とここでも細田監督自身の経験が作品に与えた影響を明かす。


スカーレットと旅を共にする心優しい看護師、聖の声は岡田将生が担当
スカーレットと旅を共にする心優しい看護師、聖の声は岡田将生が担当[c]2025 スタジオ地図

さらに、その際に看護師さんにお世話になったことが、岡田演じる聖というキャラクターの職業が看護師になった理由だという。「防護服をつけていて、顔も表情もわからない。でも、防護服を通してでも優しさはものすごく伝わってきます。一種の才能が必要な職業だと思ったし、そういった利他的な精神がないと看護師にはなれないとも思いました。スカーレットは復讐者で一種の現実主義者です。対して真反対の聖は理想主義者。非常に対比がつくのではないかと思った時に、復讐者であるスカーレットと一緒に旅をする、人命を助ける看護師の聖の姿が浮かんできました。僕のいろいろな経験が作品に影響しているということは大きいと改めて思います」。

スタジオ地図の世界からひも解く『果てしなきスカーレット』特集【PR】

関連作品