名台詞と細田守監督の創作熱意を、『時をかける少女』から最新作『果てしなきスカーレット』までたどる【スタジオ地図「A to Z」連載最終回】
Z…Zeal【熱意】
誰も観たことのない新しいアニメーション映画を作りあげること…。この巨大な使命に全力を尽くす細田守監督。映画づくりに懸ける彼の情熱を『果てしなきスカーレット』についてのコメントから感じてほしい。
「『果てしなきスカーレット』のテーマは『生きる』。 『人は何のために生きるのか?』という問いを軸に、観客と共にこの大きなテーマを考える骨太な映画を目指して、本作は2022年3月頃に構想が始まりました。
2021年のコロナ禍では、世界が一致団結してウイルスに立ち向かっていたように感じていました。しかし2022年、パンデミックが収束し始めた矢先に戦争が勃発し、日常が崩れていく様子を目の当たりにしました。平和がいかに脆く、危ういものであるかを痛感し、『平和ではない世界をどう生きるべきか』という問いが、世界中の人々の切実な関心事になっていると感じました。
その中で、復讐と報復の連鎖が止まらない現実に直面し、『復讐の物語』を描くことを決意しました。ただし、単なる復讐劇ではなく、“赦し”というもう一つの要素を加えることで、これまでにない新しい映画を目指しました。
主人公スカーレットと聖の設定には“対比”を重視しました。王女と看護師という異なる立場を描くことで、それぞれの魅力を際立たせています。また、従来の“守られるプリンセス像”ではなく、自ら道を切り開く新しいプリンセス像を表現しました。
世界には今も苦しんでいる子どもたちが多くいます。彼らがこの世界に絶望せず、希望を持てるように――そんな願いを、一人の親として、一人の社会人として込めました。
アニメーションの世界は表現の自由度が高く、無限の可能性を秘めています。今回、シェイクスピアやダンテの作品をモチーフにするとは思っていませんでしたが、それほどにアニメーション映画は新しい挑戦ができる場だと感じています。これからも、おもしろく、心に響く作品を生み出していきたいです」。
※本コメントは公式コメントと公式記者会見リリースより構成。
文/森直人

