『ニュー・シネマ・パラダイス』『カラオケ行こ!』、『港のひかり』まで。時を超えて愛される“おじさん”と子どもの絆の物語
小さな映画館で育まれる、少年と老映写技師の温かな交流『ニュー・シネマ・パラダイス』
世界中で長く愛され続ける名作中の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)。物語は映画監督サルヴァトーレ(ジャック・ペラン)が30年前の故郷での記憶を蘇らせるところから始まる。かつて彼がトトと呼ばれたころ、シチリアの小さな村には一軒の映画館があった。そこの映写技師アルフレード(フィリップ・ノワレ)と仲良くなり、見よう見まねでフィルムや映写機の扱い方を習得するうち、2人は歳の差を超えた最良の相棒となっていく。
主人公にとって人生で大切なことはすべてアルフレードから教わった。トトが純真無垢な笑顔を振りまく時も、逆に悲しくて大泣きする時も、彼の存在こそが救いとなった。逆境に打ちひしがれた時に、村を出るようにと勧めたのも彼。そんな尊い人物がいまはもういない。この喪失とノスタルジーが胸を締め付け、あらゆる想いが“1本のフィルム”へと集約される愛のラストが、何度観ても我々の涙腺を決壊させる。
母に会うため家を飛び出した少年と遊び人の中年男による波乱に満ちた2人旅『菊次郎の夏』
『菊次郎の夏』(99)は、『HANA-BI』(98)で第54回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した翌年、北野武がガラリと作風を変えて挑んだ、少年とおじさんとのロードムービー。夏休みに入り、友だちはみんな旅行へ出かけるのに、祖母と2人で暮らす正男(関口雄介)はどこにも行くところがない。思いあまって、遠くで暮らす母に会いに行こうとするが、ばったり遭遇した知り合いのおばさんに“心配だからうちの旦那を一緒に行かせる”と言われ、菊次郎(ビートたけし)との不思議な2人旅が始まるのだが…。
人を見れば金をたかり、なにかにつけて難癖をつける。そんな中年男、菊次郎との道中は波乱続きで、旅はちっとも進展しない。だが、少年の孤独と悲しみに触れたおじさんは「この子も俺とおんなじ」であると気づき、そこから急速に距離を縮めていく。大人が子どもを楽しませようと全力で無邪気に振る舞う姿はどこか滑稽で、なおかつ、ちょっぴりホロリ。二度と戻ってこないかけがえのない夏の日々を、久石譲の名曲がノスタルジックに彩る。
内気な少年が2人の大伯父と過ごしたひと夏の思い出を映しだす『ウォルター少年と、夏の休日』
60年代のテキサスを舞台に、少年と2人の大伯父との交流を描く心温まるドラマ『ウォルター少年と、夏の休日』(03)。シングルマザーと共に暮らす14歳のウォルター(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、田舎町に建つハブ(ロバート・デュバル)&ガース大伯父さん(マイケル・ケイン)の家に預けられる。高齢の2人は誰に対してもぶっきらぼうで、やることなすことすべて偏屈。最初はどう接していいものか困惑しきりのウォルターだったが、不意に打ち明けられたハブ&ガースの若き日の大冒険の話に魅了され始める。
思春期を迎えた内気なウォルター少年が、何歳になっても冒険心を失わない大伯父たちに触発されていく様はワクワクするほど刺激的だ。子役として“声変わり”を迎えたハーレイ・ジョエル・オスメントと、映画界の至宝ロバート・デュバル&マイケル・ケインが巻き起こす温もりとユニークさの化学反応もさすが。2人の度胸のよさとライオンのような誇り高さを受け継ぎ、少年が自らの意志で人生を決め、前に進んでいこうとする顛末が爽やかな感動を呼ぶ。

