『ニュー・シネマ・パラダイス』『カラオケ行こ!』、『港のひかり』まで。時を超えて愛される“おじさん”と子どもの絆の物語

コラム

『ニュー・シネマ・パラダイス』『カラオケ行こ!』、『港のひかり』まで。時を超えて愛される“おじさん”と子どもの絆の物語

人生は、自分と生き方や経験の異なる他人との出会いによって、大いに輝きを増すもの。決してどちらかが一方的に与えるのではなく、互いに影響を与え合うことで、新たな扉が押し開かれていく。それは生涯忘れえぬ宝石のような思い出となって深く胸に刻まれるはずだ。

11月14日(金)より公開される映画『港のひかり』はそんな“未知との遭遇”を魅力的に活かし、元ヤクザの“おじさん”と、目の見えない少年が12年にもわたる絆を育む姿を重厚に描いた一作。本コラムでは本作をはじめ、赤の他人である大人と子どもが織り成す思いがけない絆を描いた珠玉の作品をまとめてご紹介したい。

運命に導かれ結ばれた、孤独な2人の時を超える友情を描く『港のひかり』

『港のひかり』は、『正体』(24)で第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人監督による北陸の港町を舞台にした完全オリジナルの作品だ。舘ひろしが元ヤクザの漁師役として7年ぶりの単独主演を果たし、歌舞伎界の新星、尾上眞秀が盲目の少年役を、彼が成長した青年期を眞栄田郷敦が演じ、打ち寄せる波のように力強く胸を揺さぶるドラマを彩る。

かつては河村組の若頭であった三浦(『港のひかり』)
かつては河村組の若頭であった三浦(『港のひかり』)[c]2025「港のひかり」製作委員会

世代はもちろん、住む世界もまったく異なる2人の出会いはまさに運命だった。舘が演じる三浦は、かつて組の幹部候補として有望視されながらも、これまでの過去を捨て、漁師として生きる道を選んだ男。そして尾上扮する幸太は、車の衝突事故により両親の命と自らの視力を失った少年だ。叔母のもとに引き取られた幸太は、まともな愛情など一切注がれることなく、懸命に耐え忍ぶ日々を過ごしている。そのうえ、家の外では障がいを理由に同級生からかわれることもある。

両親を亡くした幸太は引取先の叔母の家で虐待を受けていた(『港のひかり』)
両親を亡くした幸太は引取先の叔母の家で虐待を受けていた(『港のひかり』)[c]2025「港のひかり」製作委員会

そんな様子を見かねて声をかけたのが三浦だった。そして交流を重ねるうちに彼は、自分と幸太との間に共通するものを感じるようになる。2人は安心できる居場所を見つけられないまま、ずっと生きてきた。しかしいま、2人でいる時だけは、決して孤独ではない。胸の内に生じたもの。それは彼らが忘れかけていたかけがえのない絆と温もりだった。


自分を慕う幸太のために、ヤクザの取引を襲い金を盗みだした三浦(『港のひかり』)
自分を慕う幸太のために、ヤクザの取引を襲い金を盗みだした三浦(『港のひかり』)[c]2025「港のひかり」製作委員会

主演の舘がその佇まいと表情によって言い知れぬ人生を体現すれば、これが映画初出演の尾上もまた、決して臆することなく、ナチュラルな存在感で呼応。本作が『ゴールデンカムイ』(24)以来の再共演となった、大人になった幸太を演じる眞栄田と舘のケミストリーも、より感動を深める。まさに彼らの共演シーンは、荒々しくも雄大な海に浮かぶ、確かな信頼と慈しみのひかり。日本映画界を代表する名キャメラマン、木村大作による圧倒的な自然描写も相まって、2人の出会いが運命となり、それがいつしか揺るぎない生き様へと昇華されていく道程がダイナミックに浮かび上がる。かくも本作は観る者の心に力強い感情のうねりをもたらす人間ドラマなのだ。

『港のひかり』同様、歳の離れたキャラ同士が織り成す、“家族よりも強い絆”を描いた作品はどれも名作ぞろい。そこにはいかなる関係性のドラマが刻まれているだろうか。

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