9人が示す東京ドームへの決意表明――セトリでひも解く「EVE」と『超特急 The Movie RE:VE』で映される4つの「RE」
2025年6月から8月にかけて行われた、9人組ダンスボーカルグループ「超特急」のツアー「BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025 EVE」。東京、兵庫、愛知、埼玉の4都市で開催された同ツアーでは約10万人を動員。最終日のさいたまスーパーアリーナ公演はスタジアムモードでの開催となり、彼らにとっての最大キャパを更新する2日間を成功させて幕を閉じた。
多くの人々のもとへ訪れた「EVE」をスクリーンでもう一度味わいながら、その裏側を覗くライブドキュメンタリー『超特急 The Movie RE:VE』が11月7日(金)より公開される。本作では、ステージ構成ができていく過程や、ライブに向けたメンバーそれぞれの準備、9人体制という選択をするなかで彼らが感じた葛藤や希望、そして8号車(超特急のファンネーム)への想いが、ライブ映像を交えながら余すことなく映しだされる。そこで本稿では、『超特急 The Movie RE:VE』のベースとなったライブツアー「EVE」公演を振り返りながら、映画『RE:VE』についても語っていく。「EVE」に乗車(超特急のライブに参加すること)した人は当時を思いだしながら、本作が初乗車の人は予習や復習を兼ねて読んでいただきたい。
超特急の14年をよりマクロにたどるセットリスト
まず、ツアー名になっている「EVE=イブ」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「クリスマス“イブ”」などに代表される“前夜祭”という意味ではないだろうか。総合演出を務めるメンバーのユーキは公演前や公演中「様々な意味を込めた」と語っており、その答えはいまのところ明かされていないが、旧約聖書における最初の人間の一人「イブ」から“物語の始まり”、先述のイブ=前夜祭の由来とされる「evening=夜」から“夜明けに向けた準備期間”──など、多くの予想をせずにはいられなかった。8号車の間では、「彼らの目標地点への“イブ”なのでは?」という考察が多数派を占めている。
この公演では、そんな「EVE」というタイトルに込められた意味とは別にライブ全体のテーマが設けられており、映画『RE:VE』ではその内容が明かされている。ここでは伏せておくが、壮大でありながら普遍的でもあり、ドラマティックなシナリオが得意で、揺るぎない信念のもと未来をまっすぐ見据えるユーキらしいテーマだと感じる。
様々な想いを込めて創られた「EVE」は、ツアーと同じ名前を持ち、旧約聖書のイブがいた場所を引用した「エデンじゃなくて構わない」という歌詞から始まる新曲「EVE」で開幕。彼らのパブリックイメージに反して荘厳な雰囲気が漂うナンバーで会場の空気を一気に「EVE」の世界へといざなうと、「Steal a Kiss」や、昨年末から今年初めまでにかけて行われた「BULLET TRAIN ARENA TOUR 2024-2025 “Joker”」で生まれ変わった「Re-Booster」で畳み掛け、会場のボルテージは早くも最高レベルに達する。
続いて、かなり久しぶりの披露となった初期の鉄板曲「Kura☆Kura」や、コロナ禍にリリースされたエネルギッシュな一曲「What’s up!?」で一度は明るい空気に持っていきながらも、「Lesson II」や「Cead Mile Failte」、「Feel the light」といったずっしりと見入ってしまうタイプの楽曲を並べ、こちらの感情をジェットコースターのように上げ下げさせる。
そして、会場の空気がもう一段階変わるのが「No More Cry」だ。この曲は、デビュー曲である「TRAIN」よりもさらに古い、超特急の始まりの一曲。その“始まり”という意味を担保するように、ここからは「Bloody Night」、「Kiss Me Baby」、「ikki!!!!!i!!」、「Believe×Believe」と、活動初期から中期の歴代“A面ライブアンセム”がリリース順に披露される。「Bloody Night」ではマントが、「ikki!!!!!i!!」では扇子が使用され、“お決まり”のパフォーマンスをやってくれたのもアツかった。
「No More Cry」を起点として彼らの歴史をコンパクトにたどっているように見える一方で、この初期~中期のA面曲を披露する演出は、2021年の「BULLET TRAIN 10th Anniversary Super Special Live『DANCE DANCE DANCE』」でも行われており、同じ会場であることも含めて当時の再現のようにも感じられる。先述の明るい楽曲とずっしりした楽曲を続けてやった流れも汲むと、「歴史の振り返り」というよりは、「DANCE DANCE DANCE」でのステージも含めた彼らの軌跡の振り返り、すなわち「歴史をたどった、という歴史をまたたどり直す」というニュアンスが近いのかもしれない。
