世界を敵に回した海江田四郎が目指す理想とは?『沈黙の艦隊 北極海大海戦』に至る壮絶な攻防を振り返る

世界を敵に回した海江田四郎が目指す理想とは?『沈黙の艦隊 北極海大海戦』に至る壮絶な攻防を振り返る

いま起きている真実を伝えるため、フリージャーナリストの道を選んだ市谷裕美

密室外交を好まない海江田からの要望により、総理と海江田の同盟交渉の場所はプレスセンターで行われ、その模様はすべてリアルタイムで全世界に公開された。その場で取材をしていたニュースキャスターの市谷裕美(上戸彩)は、「やまと」が核弾頭を保有しているという情報と、米国のニコラス・ベネット大統領(リック・アムスバリー)が表では「やまと」に関する問題をニューヨークでの国連総会で話し合うと言いながら、裏では「やまと」への武力攻撃を始めている事実を、自己判断で生放送中に報道。のちに彼女は、報道規制の強いテレビ局を退職し、フリージャーナリストとして真実を追い続ける道を選ぶ。

海江田のカリスマ性に触れ、フリージャーナリストとして真実を追い続ける道を選んだ市谷裕美
海江田のカリスマ性に触れ、フリージャーナリストとして真実を追い続ける道を選んだ市谷裕美[c]2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. [c]かわぐちかいじ/講談社

海江田と写し鏡的な存在として描かれるベネット米大統領

内に情熱を秘めた圧倒的なカリスマ性から、立場を超えて、関わった多くの人々の運命を変えていく海江田。劇中、彼は「どうして人は争うのだろうか?」という問いを繰り返すのだが、海江田と同じことを何度も自問するのが、ベネット大統領だ。早い段階で、海江田は錯乱したテロリストではないと認識していながら、「争うのは人間の性。だからこそ、世界の秩序を守るためには強い国家が必要であり、米国がその役割を果たさなければならない」という概念に縛られ、海江田を核テロリストとして撃沈することを軍に命令する。それでいて、本当にこれで正しいのかと、内面では揺れ動く大統領。彼にとって海江田は、ある意味、左右が反転した写し鏡的な存在として描かれているのが興味深い。

「やまと」が米国の最新鋭原子力潜水艦との海戦を繰り広げる『沈黙の艦隊 北極海大海戦』

最新作『沈黙の艦隊 北極海大海戦』は、ドラマシリーズのラストから地続きの物語。世界の平和について話し合う国際連合総会に出席するため、ニューヨークへ針路を取った「やまと」は、アメリカとロシアの国境線であるベーリング海峡で、ベネット大統領が送り込んだ、「やまと」の性能をはるかに上回る米国の最新鋭原子力潜水艦から攻撃を受ける。時を同じくして、日本では国民の総意を問うための衆議院解散総選挙が執り行われる。

流氷が浮かぶ北極海で「やまと」と米軍原潜とのスリリングな戦闘が繰り広げられる
流氷が浮かぶ北極海で「やまと」と米軍原潜とのスリリングな戦闘が繰り広げられる[c]2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. [c]かわぐちかいじ/講談社

海中と地上の両軸でストーリーが展開していくのが本シリーズの特徴だが、今回は流氷が浮かぶ北極海を舞台にした「やまと」と米軍原潜とのスリリングな戦闘、リアリティあふれる地上での選挙戦という2つの激しいバトルの行方が見どころに。

海江田の行動に触発され、壮大な政治信条を掲げる政治家、大滝淳(津田健次郎)、「やまと」不支持の与党・民自党幹事長の海渡真知子(風吹ジュン)、ジャーナリスト市谷と行動を共にするカメラマンの森山健介(渡邊圭祐)といった新キャラクターを含む登場人物たちの運命がどのように大きく動いていくのか。自らの信念のもと、未来に向かって突き進む彼らから目が離せない。


文/石塚圭子

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