世界を敵に回した海江田四郎が目指す理想とは?『沈黙の艦隊 北極海大海戦』に至る壮絶な攻防を振り返る

世界を敵に回した海江田四郎が目指す理想とは?『沈黙の艦隊 北極海大海戦』に至る壮絶な攻防を振り返る

「ジパング」「空母いぶき」など骨太かつ壮大なスケールのドラマで知られる巨匠、かわぐちかいじによる名作コミックを実写化した「沈黙の艦隊」シリーズ。その待望の最新映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(公開中)がスクリーンに帰ってきた。

ニューヨークへ向かう「やまと」が米国の最新鋭原子力潜水艦から攻撃を受ける『沈黙の艦隊 北極海大海戦』
ニューヨークへ向かう「やまと」が米国の最新鋭原子力潜水艦から攻撃を受ける『沈黙の艦隊 北極海大海戦』[c]2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. [c]かわぐちかいじ/講談社

これまでに2023年に劇場公開された映画『沈黙の艦隊』、プライムビデオで24年に配信された全8話の連続ドラマ「沈黙の艦隊 シーズン1 東京湾大海戦」があり、ドラマシリーズはAmazon MGMスタジオが日本で手掛けた作品のなかで歴代1位の国内視聴数を記録するなど大ヒット。核兵器、国家、戦争、世界平和といった数々のテーマに挑む極上のアクション・ポリティカル・エンタテインメント作品として、幅広い層から高く評価された。

本作の主人公は、常人には不可解な言動で、日本、アメリカ、そして世界中を翻弄するミステリアスな男、海江田四郎(大沢たかお)。彼が目指す理想とはいったいどんなものなのか?本稿では海江田のキャラクター像を中心に、彼が艦長を務める原子力潜水艦「やまと」の乗組員たち、海上自衛隊の面々、さらに日米政府、メディアといった様々な立場の人物の視点を通して、これまでの物語を振り返っていく。

全世界に向けて独立国「やまと」の建国を宣言

日米の共同計画により、国会も通さず、極秘裏に造られた日本初の原子力潜水艦「シーバット」。建造費や技術は日本が提供した世界一高性能な原潜でありながら、アメリカ第7艦隊所属という宿命を背負っていた。シーバットの艦長には、海上自衛隊の潜水艦「やまなみ」の艦長だった海江田が選ばれる。乗組員も同じく元やまなみの隊員たちだ。しかし、海江田はシーバットの試験航海中に、米軍の指揮下を離れ、深海へと潜航。突如、反乱逃亡をする。激怒した米軍がシーバット撃沈を図るなか、海江田は全世界に向けて、自身を国家元首とする独立国「やまと」の建国を宣言する。

【写真を見る】大沢たかお演じる独立国「やまと」の建国を宣言した海江田四郎
【写真を見る】大沢たかお演じる独立国「やまと」の建国を宣言した海江田四郎[c]2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. [c]かわぐちかいじ/講談社

超人的な操艦技術を持ち、常に冷静な判断が下せる海江田四郎

まず、“海江田四郎”という男を特徴付ける大きな要素の一つが、まるで世界中の海底地形図が丸々頭に入っているかのように、深海で潜水艦を自由自在に動かすことができる超人的な操艦技術である。彼の先輩で、かつて演習を共にした第2護衛隊群司令の沼田徳治(田中要次)が「海江田は海自では収まりきらない男だ、いずれ世界の海軍を相手にするのではないかと空恐ろしくなったのを覚えている」と述懐するほど、その腕前は折り紙付きだ。奇策を仕掛けるのも得意で、敵の裏を何度もかき、たった1隻で第7艦隊を圧倒した。

なにを考えているかわからないが、人柄は穏やかで、常に冷静沈着。危機的な状況に陥っても声を荒げることはなく、その時々の状況に応じて最適な判断を下す。その最たる例がかつて海自の潜水艦「ゆうなみ」の艦長を務めていた海江田が、海難事故に際してほかの乗組員たちの命を救うため、一人の隊員、入江蒼士(中村倫也)を犠牲にしてしまったこと。その時の海江田の決断を許すことができないのが、当時の「ゆうなみ」の副長で、いまは「たつなみ」の艦長である深町洋(玉木宏)だ。シーバットの反乱に対しても強い憤りを感じており、「海江田が日米に戦争を焚きつけた。すべての元凶はシーバットだ」と断言。そんな深町から怒りをぶつけられた際、静かに彼の言葉を受け止めていた海江田の様子も印象的だった。


関連作品