映画界の登竜門「PFFアワード2025」が決定!中里ふく監督『空回りする直美』がグランプリ&エンタテインメント賞の2冠

映画界の登竜門「PFFアワード2025」が決定!中里ふく監督『空回りする直美』がグランプリ&エンタテインメント賞の2冠

<受賞コメント>
●中里ふく監督
「いろいろ信じられなくて、いまは動悸が止まらないです。私自身が未熟で、いろんなものが足りない状況のなかで映画をつくっていたので、まさかそれを人前に出せて、しかも賞をもらえると思ってなく、私のことを支えてくれた人や怠惰な自分を動かしてくれた人のおかげだと思います。主演女優の安達木乃さんや篠原雅史さんなど、役者さんの力がすごくて、役者さんが自分のなかでキャラクターをつくってくださって、キャラクターとして生きてくれた。そのおかげです」

<最終審査員5名による審査総評>
●門脇麦(俳優)
「映画づくりに関わっている一人の人間として、皆さんの作品を観た時間が、あまりにも幸福すぎてすごく幸せな時間でした。これからも映画づくりを一緒にしていきましょう!おめでとうございます!」

●関友彦(プロデューサー)
「約800本のなかから22本に入選したことですら、本当にすばらしいと思います。そのすべてを拝見させていただいてどの作品もすごくクオリティが高くてびっくりしました。その反面、パッションみたいなものがズバッと突き刺さるかといえば、全部が全部そうではなかったと思います。ただ、皆さんが精いっぱいつくっているのは、全部の作品から伝わってきました。PFFらしい、力のこもった作品たちで、22本全部を観るのが楽しかったです。個人的には『黄色いシミ』は緊張感がたまらず、大好きな作品でしたし、『あの頃』も大好きでした。このお二人の監督とは今後も仕事をしたいなと思っています。監督の皆さん、おめでとうございます」

●福永壮志(映画監督)
「PFFアワードの審査に入る前にわりと予算の潤沢にあるドラマの現場にいまして、その直後に皆さんの作品を拝見させていただきました。映画を観ていたなかで、本当に大事なものは予算や技術ではないことを改めて確信しました。それぞれ個性豊かな作品のなかで、熱意や、映画に真摯に向き合っていることが伝わりました。賞というものは審査員の意見やメンバーで変わるものなので、まずは800本ものなかからここに選ばれたことを励みにしてがんばっていってほしいと思います。

賞が得られなかった、映画祭に入選できなかったとか、僕のなかでも一喜一憂することはありますが、僕個人として大事なことは“誰かの心に残ったかどうか”だと思います。それというのは数字にも残らない、例え大きな賞を獲得し歴史に残ったとしても誰にも分からないことです。それをつくり手として信じつづけられるか、誰かに届けるなにかを自分自身が持ちつづけられるか、それを作品というかたちにできるかどうかが、続けていくことのカギではないかと思います。おめでとうございます」

●山内マリコ(作家)
「初めて審査員をさせていただいて、『賞』というものは本当に気まぐれだなと感じました。皆さん、なんで自分の作品が選ばれなかったのだろうと不服な方もなかにはいらっしゃるかもしれませんが、賞に振り回されないということはすごく大事なことだと思います。つくりたいものを、たとえ評価されなくてもつくり続けることが大事なんだと思います。

私は大学で映画を学びましたが、一作も自主制作映画をつくれなかった。映画は仲間がいないとつくれません。すごく皆さんの作品が、まぶしく見えました。自分で映画をつくってPFFに応募した、ということは誇らしく思ってよいことだと思います。皆さんには変わらず、自分の好きなこと、やりたいことを貫いてください。本日はおめでとうございました」

●山中瑶子(映画監督)
「入選された皆様、そして受賞された皆様、本当におめでとうございます。たくさんの勇気を出して、こうして映画を見せてくれて本当に感謝しています。今回の受賞作はどれも、監督のもつ言語のようなものがこちらに響いて、共鳴して、この人の次の映画を見てみたいと思わせてくれました。とはいえ、映画祭の入選や受賞は、審査員との相性が大きいと私個人の実感として思うので、もちろん思い切り喜んでもらってから、あまり考えすぎずにまた次に向かうくらいがちょうど良いと私は思っています。

私は8年前の2017年に『あみこ』という映画でPFFに入選しました。映画をつくるということには、社会や人間と繋がりたいという欲求が水面下には必ずあると思いますが、当時の私は表面的に興味があることしか興味がなくて、傲慢だったのだと思います。いま振り返ると他者とろくに会話もできなくて、人前に出られる人間ではありませんでした。それでも、映画祭で出会った人々によって、非常に人間らしくしてもらえたと思っています。

どんな映画もつくり手がどのように世界を見ているか、ということがどうしても出ます。皆さんがいま持っている魅力を大切にすることはもちろんですが、この社会、世界とはいったいなんなのかを常によく見つめてほしいと思います。自分がなにに好奇心を持ち、興味があるのか、なにを嫌悪し、なにを許すべきではないのか、それは何故かを考え見つめながらも、自分自身が変化していくことを恐れずに、この社会と繋がってほしいなと思います。

とはいえ、理不尽で苦しく世界が壊れていくような現実もありますので、心に負荷がかかっていると思ったら心が壊れる前に立ち止まって休んでほしいです。心を壊してまでやるべきことはなにもないので、特に映画づくりは全く焦らなくてもよいので、一人で考え込まず、周りを頼って、時には迷惑をかけながら、それぞれのペースで、行けたらよいのかなと思います。あらためて、おめでとうございました」


文/久保田 和馬

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