松村北斗「一歩進める」と感激!新海誠監督が実写『秒速5センチメートル』を絶賛「北斗くんと吉岡秀隆さんが会話を交わしている。僕にとって特別なご褒美」

松村北斗「一歩進める」と感激!新海誠監督が実写『秒速5センチメートル』を絶賛「北斗くんと吉岡秀隆さんが会話を交わしている。僕にとって特別なご褒美」

『君の名は。』(16)、『天気の子』(19)、『すずめの戸締まり』(22)など、記録的な大ヒット作を生み出してきた新海誠監督が2007年に手掛けた劇場アニメーションを実写映画化した『秒速5センチメートル』(10月10日公開)の完成披露試写会が9月17日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、松村北斗(SixTONES)、高畑充希、森七菜、青木柚、木竜麻生、上田悠斗、白山乃愛、宮崎あおい、吉岡秀隆、奥山由之監督が出席。さらに観客にはサプライズで新海監督が駆けつけ、本作への想いを明かした。

『秒速5センチメートル』(10月10日公開)の完成披露試写会が行われた
『秒速5センチメートル』(10月10日公開)の完成披露試写会が行われた

映像美、音楽、特徴的なセリフでつづられた『秒速5センチメートル』。その詩的な世界観は、センチメンタリズムが凝縮された新海ワールドの原点との呼び声も高く、公開から18年経ったいまもなお、世界中で愛され続けている。新海監督のアニメーション作品としては初の実写映画化となり、主人公・遠野貴樹の18年間にわたる人生の旅を、幼少期、高校生、社会人の3つの時代で描き出す。

「とにかく届くのが楽しみ」と熱を込めた松村北斗
「とにかく届くのが楽しみ」と熱を込めた松村北斗

主人公の遠野貴樹を演じた松村は、お披露目の日を迎えて「世界で初めて皆様から順々に、実写『秒速5センチメートル』を観ていただける。すごく感動的」と感無量の面持ち。アニメと実写で「皆様のなかでどのような違いや、どのような共通点が生まれるのか」と期待しつつ、「当時のように、初めて実写で『秒速5センチメートル』の世界に触れる方々が、心のなかでどのように育ててくれるのか楽しみです」と呼びかけた。「いまはとにかく、届くのが楽しみ」という松村だが、「アニメーションだからこそ描けること、生身の人間だからこそ描けること。それぞれにすばらしさがあって。奥山監督は、生身の人間がやる理由をとことん追求していた。そこから生まれてくるアニメーションと実写の違いに感動していただけるのではないかと、期待しています」と願いを込めた。

メガホンをとった奥山由之監督
メガホンをとった奥山由之監督

また、「大切な人との巡り合わせ」を描く映画にちなみ、自身にとって「巡り合わせ」を感じたエピソードを明かすひと幕もあった。松村は「一番仲のいい高校からの友だちが、舞台に出て。うれしくて僕も観に行ったところ、僕が芸能界に入るために受けたオーディションを一緒に受けて、また違う道に行かれた役者さんが、その主演をやられていた。いまも頑張っているのを目の前で見て、すごく刺激になりました」と告白。「(当時その人は)その輪のなかでみんなが緊張しているなかで、ムードメーカー的な存在だった。これからもたくさんの人に元気を与えるんだなと思ったら、負けていられないなと思った」と火をつけてくれたという。

新海監督、「本当にすばらしい映画をありがとうございました」と感謝!
新海監督、「本当にすばらしい映画をありがとうございました」と感謝!

そしてこの日は、新海監督が観客にサプライズで登場。舞台挨拶ではキャスト、監督陣がそれぞれ偉大な原作に敬意を表し、実写化するにはプレッシャーもあったと打ち明けていたが、山崎まさよしによる「One more time, One more chance」が流れるなかステージに上がった新海監督は、「原作にとても気を使っていただいて、名作みたいに言ってくださって。でも大した作品じゃないんです」と謙遜しきり。「20年くらい前に、まだアニメの作り方もよくわからないままにアパートの一室でスタッフを集めて、見よう見まねで作った作品。当然必死に作った映画なんですが、自分の心残りみたいなものがギュッと詰まっていて、でも愛おしい映画でもあった」と素直な想いを口にし、「実写化していただけると聞いて、これでいいんですか?と申し訳ない気持ちになった。もっと他に、すばらしい原作があるんじゃないかと思った。でも試写を拝見したら、あまりにすばらしくて。皆さんにお礼を伝えたくて、お邪魔しました。本当にすばらしい映画を、ありがとうございました」と感謝を伝えた。

新海監督、吉岡秀隆への特別な想いも告白
新海監督、吉岡秀隆への特別な想いも告白

完成作を観て、「観ているうちに、なんだかよくわからないほど涙が出てきた」という新海監督。「当時の辛かった制作のことを思い出して泣いているのか、当時の映画に含まれていたかもしれない要素を広げてくれた物語の強さに泣いているのか、過ぎ去ってしまった2000年代という日本が持っている可能性に泣いているのか。自分が原作を作ったのに、泣かされてしまった。経験したことのない感動でした」と熱を込めながら絶賛。「当時は貴樹がどういう男で、明里がどういう女性なのか、よくわからないままに作っていた。映画を観たら、北斗くんと(明里役の)高畑さんが、貴樹はこうい男なんです、明里はこういう人ですと教えていただいたよう。ようやく(貴樹と明里に)知り合えたような気がしました」と大きな発見があったと話した。

新海監督からの言葉に安堵の表情を見せた高畑充希
新海監督からの言葉に安堵の表情を見せた高畑充希

実写化に際して「不安でもあった」という松村は、「こういう感想をいただいて、やっと安心して。100パーセントの気持ちで、次はお客さんに向けて一歩進めるような言葉でした」としみじみ。高畑も「ほっとした」と続き、「明里ってどんな人なんだろうと、わからない要素が多かった。一緒に悩んでくれるチームの皆さんがいてよかった」と笑顔を見せた。奥山監督は「本当に光栄です」と喜びを噛み締め、「さきほどおっしゃっていただいた、なぜ涙しているのかわからないような感動。そういう作品にできたのかなという、自信を持たせていただいた。実写化した意義を感じさせていただいた。我が子のような物語を預けていただいたことを、ありがたく思います」とお礼を述べた。

貴樹に想いを寄せる高校の同級生、澄田花苗役を演じた森七菜
貴樹に想いを寄せる高校の同級生、澄田花苗役を演じた森七菜

新海作品である『すずめの戸締まり』には松村、『天気の子』には森、『雲のむこう、約束の場所』には吉岡が出演していたとあって、新海監督にとって縁の深い人たちが本作に携わっている。新海監督は「『国宝』観ましたよ」と森に語りかけ、「『国宝』でものすごく大人っぽい役をやっていらっしゃった。『秒速5センチメートル』を観たら、高校生の役である花苗を演じていた。僕が知り合ったばかりのころの七菜ちゃんが、スクリーンのなかにいた。七菜ちゃんの天才性を目の当たりにした。すごい…」と森の進化と才能に惚れ惚れ。森は「身に余るお言葉。こんな舞台に新海さんと立たせていただけることが、そもそも光栄なこと」と感激をあふれさせていた。

科学館の館長、小川龍一役を演じた吉岡秀隆
科学館の館長、小川龍一役を演じた吉岡秀隆

さらに新海監督は「『雲のむこう、約束の場所』はもう20年前の作品。本当に怖いもの知らずで『一番好きな声の人だから』という理由で、吉岡さんにお願いしてしまった」と苦笑い。「子どものころから吉岡さんがずっと好きで。『北の国から』がいろいろなものの原点」だと吉岡が黒板純役を演じた名作ドラマが大好きだったそうで、「純くんが、自分の未来予想図のように見えた」と目尻を下げた。「『秒速5センチメートル』を観たら、僕の一番好きな声である北斗くんと、吉岡さんが(出ている)。2人が同じ画面で会話を交わしているというのは、自分にとって特別なご褒美」と特別な作品になったと力を込めると、吉岡も「感無量です。『雲のむこう、約束の場所』は大好きな作品。いろいろな縁があっていまがある」と胸を熱くしていた。


最後に新海監督は、「僕がいまの奥山監督や、北斗くんと同じような年齢で作った。いまよりずっと気持ちがやわらかくて、コンビニに入ったり出たりするだけで悲しくて泣きそうになったり、電話ボックスに車のヘッドライトが当たって反射するだけで、せつない気持ちになったり。そういう気持ちだけで映画が1本作れないかと思って、作ったもの」と原作を生み出した当時を回顧。「あの時の言葉にできない感情を、俳優の皆さんや奥山組の皆さんがステキな作品にしてくださった」と改めてお礼を述べた。「切実な物語」と本作を表現した松村は、「帰り道に見た空や、人と話した言葉が、さっきよりもちょっと美しく感じるような映画になっていると思います」と胸を張り、大きな拍手を浴びていた。

※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」が正式表記

取材・文/成田おり枝

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