「キャラクターが“生きている”感がある」100mにすべてを捧げる男たちの半生を描く『ひゃくえむ。』映画&原作ファンが感じたリアルとは?

コラム

「キャラクターが“生きている”感がある」100mにすべてを捧げる男たちの半生を描く『ひゃくえむ。』映画&原作ファンが感じたリアルとは?

オリジナルとの“違い”や“らしさ”に原作ファンも大満足!

怪我で挫折を味わった仁神の大人になった姿も映画では描かれる
怪我で挫折を味わった仁神の大人になった姿も映画では描かれる[c]魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会

そんな強者の一人で、ある理由で陸上を断念していたものの浅草ら部員たちの情熱にほだされ、再び陸上と向き合っていくのが仁神(声:笠間淳)。この悲運の元エリートについて「大好きなキャラクターなので、その後が見られて本当にうれしかったです!」(40代・女性)、「社会人編で仁神が再登場するシーン。設定がとてもよかった」(20代・女性)とコメントが寄せられたように、普通なら忌避されがちな原作からの“改変”も、本作では魅力となっている。

「ほのぼのとした日常パートがあったことに驚いたが、キャラクターの内面を描いていただけたことに感謝」(10代・女性)
「映画ならではのアレンジがおもしろかった」(10代・女性)
「原作とは明らかに違う人物の表情や、些細な動きの作画がとてもよかった」(10代・女性)
「高校のエピソードやキャラクターが改変されていたが、よさが残っていた」(20代・女性)


などのコメントが示すように、原作のファンだという岩井澤監督のリスペクトが込められた、キャラクター像をナチュラルに膨らませるさりげないアレンジも好評だった。その一方で、

人生の奥深さや言葉の重みといった魚豊作品の魅力も見事に落とし込まれている
人生の奥深さや言葉の重みといった魚豊作品の魅力も見事に落とし込まれている[c]魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会

「読んだあとに自分も頑張ろう、負けてらんないなと勇気や励みをもらえる」(20代・女性)
「一人の人生を通じてテーマの奥深さを感じられる」(30代・男性)
「熱中することのおもしろさ、本気で取り組む楽しさを思い出させてくれる」(20代・女性)


など、原作、ひいては魚豊作品が持つ特有の熱量や奥深さも作品にしっかりと落とし込まれており、原作ファンにとっても納得のアニメ化となったよう。一方で、原作では財津のセリフは言い切り型の口調だが、魚豊本人から「もう少し柔らかくしたい」と語尾を敬語に変更する提案があったという。文字ではなく声で聞いた時にどんな印象を与えるか、細部まで気を配る原作者のこだわりも反映されている。

映像、音などアニメ化にあたりこだわり抜かれたリアリティ

キャラクターたちが人生を懸ける“100m”を描くために、第一線で活躍してきた朝原宣治や開催中の東京2025世界陸上にも出場している鵜澤飛羽ら陸上選手のスプリントフォームを3DCGで再現し、作画している。また、実写カメラで撮影した映像をトレースしてアニメーションに変換する“ロトスコープ”という手法も用いている。それぞれのモデルのフォームの違いが反映されたリアルな動きに加え、風の表現などでスピード感を表し、作品に説得力をもたらしている。

映像、音までリアリティを追求して作られている
映像、音までリアリティを追求して作られている[c]魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会

「臨場感があり、肌で痛みを感じられた気がした」(20代・女性)
「既存のアニメや実写にはない焦燥感あふれる映像は岩井澤監督の専売特許だと感じた」(10代・男性)
「裏で人が動いているんじゃないかというくらい、なめらかなで自然な人間の動きだった」(10代・女性)


また些細な動きや表情を捉えることができるロトスコープだからこそ、人物描写にも現実味があり、「アニメなのに“そこに生きてる”感があった」(40代・女性)という言葉も見受けられた。

さらにリアリティをあと押ししているのが、“音”の表現。「リレーのバトンのフュン!フュン!って音がすごく好き!」(30代・女性)とあるように、至近距離でないと聞こえないような細かな音までこだわっており、「シューズとタータントラックの接地音にこだわりを感じた」(30代・女性)、「スターティングブロックの音が印象的」(30代・男性)など陸上をよく知る参加者も太鼓判を押す。

岩井澤監督が語った興味深い撮影秘話とは?

試写会後のティーチインでは、上記のようなアニメ化に関する技術的な話やこだわりから作品に込めた想いや制作の秘話まで、岩井澤監督が様々なエピソードを明らかにしており、興味津々な様子だった観客たち。

「トガシの声優を務めた松坂桃李さんが“あるシーン”で、絵と同じ動作をして声を収録したというエピソード」(30代・女性)
「原作と構成を変えたエピソード。原作を買って読みます」(30代・女性)
「作品を愛し、好きだという感情を持ち続けたまま製作されていたという印象を受け、憧れました」(20代・女性)


など観客の印象に残ったエピソードも十人十色。このことからも『ひゃくえむ。』が人によって刺さる場面や気になるポイントが異なる、それだけ豊かな作品だと言えるだろう。

『ひゃくえむ。』は9月19日(金)より公開
『ひゃくえむ。』は9月19日(金)より公開[c]魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会


100m競走というわずか10秒の世界に人生を捧げる男たちの生き様を描いた『ひゃくえむ。』。

「たった10秒、されど10秒にすべてを懸ける熱い物語」(20代・女性)
「人生を話め込んだ物語。一回観てほしい!」(30代・女性)
「自分はスポーツとはなんの縁もないけど、 それなのに熱くなって泣きまくった」(10代・男性)


と、熱のこもった推薦メッセージがズラリと並んでいるように、熱量を感じられるので、ぜひ劇場に足を運んで、そのガチな世界に圧倒されてほしい!

構成・文/サンクレイオ翼

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