数々の名シーンを完全再現!『ヒックとドラゴン』がアニメ版そのままに映像化できた理由とは?
ドリームワークス・アニメーションの傑作アニメを実写化したファンタジー大作『ヒックとドラゴン』がついに公開!バイキングの少年と傷ついたドラゴンとの友情を描いた本作は、アニメ三部作を手掛けアカデミー賞にもノミネートされたディーン・デュボアが監督を務め、オリジナル版を完全再現している。名作アニメの実写リメイクが続いているなか、かつてない精度で実写化された新たな『ヒックとドラゴン』の魅力をひも解いていく。
アニメ版のストーリー、世界観、演出がそのまま踏襲された実写版『ヒックとドラゴン』
物語の舞台は何世代にもわたり、人間とドラゴンが戦いを続けているバーク島。バイキングの少年ヒック(メイソン・テムズ)は、族長であり無敵の戦士でもある父ストイック(ジェラルド・バトラー)と違ってひ弱で力仕事が大の苦手。器用な手先を生かし、ドラゴンを倒す武器の開発に打ち込んでいた。そんなある晩、ヒックは自作の投石器で最強のドラゴン、ナイト・フューリーの撃墜に成功。翌日、森に様子を見に行ったヒックは、投石器を受けて尾翼を失い、飛べなくなったフューリーを発見する。傷つきうめくその姿にどこか自身を重ねたヒックは、ドラゴンに“トゥース”と名付けて再び飛べるよう力になろうとする。
原作はクレシッダ・コーウェルのベストセラー児童文学。バイキングとドラゴンが共存している世界が舞台で、半人前のヒックとやんちゃなドラゴンのトゥースが大活躍するお話だ。アニメ版ではひ弱なヒックと尾翼を失ったトゥースが互いを補い合い、対立する両種族の懸け橋になる物語になっている。それは今回も同様で、アニメを実写リメイクする際はより原作に近づけるケースも少なくないが、本作はアニメ版のストーリー、世界観、演出までもがそのまま踏襲されている。
バイキングたちが暮らすバーク島を完全再現
映画冒頭での夜の闇に紛れて現れたドラゴンの群れとバイキングたちが戦いを繰り広げるシーンから、アニメそのままのバーク島がスクリーンいっぱいに広がっていることに驚かされる。時代設定は10世紀前後のバイキングがヨーロッパ各地を震撼させた頃だと思われるが、フェロー諸島やアイスランド、スコットランドの風景も取り入れながらこの情景が作り上げられた。景色だけでなく、様々な装飾が施された家屋や集会場、訓練場などの建築物、斧に剣、盾、兜といった武具、タペストリーのような小道具にまでこだわりを持って再現されている。
アニメ版の特徴を押さえながらリアルな造形を実現したドラゴンたち
魅力的で個性あふれるドラゴンたちもまた、アニメ版の特徴を押さえながら本当に現実世界にいそうなリアリティで実写化。ずんぐりしたグルーサム・グロンクルはブルドッグ、ウシガエル、カバの、鳥のようなデッドリー・デンジャーはオウム、ダチョウ、エミューの動きが参考にされている。ワニなど爬虫類の特徴を持ったモンスター・ナイトメアは凶暴性がより際立ち、双頭のダブル・ジップのような変わり種も確かにそこに息づいている。
なにより、物語のもう一人(一匹)の主人公ともいえる、ナイト・フューリーことトゥースのルックがとにかく見事。キャラクターデザインの野口孝雄らが、クロヒョウなどの動きを取り入れ手掛けたアニメ版のデザインがそのまま活かされている。筋肉など細部の質感もアップデートされ、風を受けそよぐ耳のような頭部の角や翼の膨らみなど動きもよりリアルになった。ほかのドラゴンたちに比べるとかわいさが強調されたキャラクターっぽさもあっただけに、実写化に際して不安を感じたファンもいたかもしれないが、このトゥースを見ればそんな心配は杞憂だったと思うはず。