A24映画『The Smashing Machine』がヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞!熱のこもった監督&キャストによる会見を現地レポート
イタリア、ヴェネチアで開催された第82回ヴェネチア国際映画祭にて、ベニー・サフディ監督の最新作となるA24映画『The Smashing Machine』のワールドプレミアが行われた。本作は、1990年代のUFC(総合格闘技団体アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)黎明期に活躍した伝説のファイター、マーク・ケアーの人生を描いた伝記映画で、ドウェイン・ジョンソンが主人公を熱演している。
記者会見には、サフディ監督をはじめ、主人公のケアーを演じたジョンソン、ケアーの献身的な妻ドーン・ステープルズ役のエミリー・ブラントが登壇、そして映画のモデルとなったケアー本人も姿を現し、注目を集めた。また、ハリウッド業界内部事情を描き人気を博しているApple TV+の「ザ・スタジオ」のセス・ローゲンが、今作の記者会見からプレミア上映、アフターパーティまで密着していたことも、ヴェネチア映画祭を取材している記者の間で話題になっていた。
「矛盾が本当に美しく、探求してみたいと思いました」(サフディ)
サフディ監督は、なぜケアーの半生を映画化したいと思ったのかという質問に対し、「マークがいなければ、私たちは誰一人として今日ここに立つことはありませんでした」と語り、「彼は私たちの人生を変えてくれました。彼にスポットライトを当て、彼の人生を生きること、彼の感情を感じることを許してくれました。彼の経験から学ぶことができ、本当に得難い経験をしました」と感謝を込めて述べた。
1990年代のUFCという題材を選んだ理由については、「あの時代にはなにか実験的なものが起こっていました。様々な格闘技が互いに競い合い、非常にユニークなスポーツでした。誰もがお互いを知る、とても結束の固いコミュニティだったんです。格闘技の世界でありながら、彼らの間に親愛があるという矛盾が本当に美しく、探求してみたいと思いました。当時、異種格闘技はアメリカの多くの場所で禁止されていましたが、日本では非常に大きな話題で、ブラジルでも人気を集めていました。とても国際的なスポーツでもあったのです」と説明した。
「これは勝ち負けについての映画ではありません」(ジョンソン)
主演のジョンソンは、この役への取り組みについて「これは勝ち負けについての映画ではありません。必ず勝たなくてはいけないプレッシャー、結果を出さなくてはいけないプレッシャー、それと同時に、勝敗が敵になってしまった時になにが起こるかについての映画です。私たちはみな、それらのプレッシャーに共感できるでしょう」と語った。
これまで出演してきたハリウッドの大作映画とは異なる、A24製作のインディペンデント作品への参加についてジョンソンは「数年前、私はまわりを見回して考えていました。私は自分の夢を生きているのか、それともほかの人々の夢を生きているのか?と。ハリウッドに身を置く私たち3人(ジョンソン、ブラント、サフディ)は、興行収入を追いかけることについて、長い間話し合いました。私たちのビジネスにおいて、興行収入が占めるものは非常に大きく、私たちを一定のカテゴリーに押し込みます。『これがあなたの歩む道で、これがあなたの仕事で、これが観客やハリウッドがあなたに望むことです』と。私はそれを理解し、好きな映画を作り、楽しくやってきました。しかし、自分のなかから小さな声が聞こえました。『私にも、もっと挑戦できることがあるんじゃないだろうか』と。ハリウッドになにかを証明するというよりも、私自身のための挑戦だと思います」と、常にハリウッドのトップを走るスター俳優の苦悩を覗かせた。『ジャングル・クルーズ』(21)で共演しているブラントとジョンソンは友人関係を築き、サフディ監督とブラントはクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』(23)で共演している。彼女の強いあと押しがあり今作に挑戦することにしたという。「自分がなにができるかを知ることは難しく、時には、私が敬愛するエミリーやベニーのような人々が『あなたはできる』と言ってくれることが必要なのです」