有害な男性性と家族の呪縛が交錯!パトリシア・マズィ監督最新作『サターン・ボウリング』現代の闇を炙りだす本予告

有害な男性性と家族の呪縛が交錯!パトリシア・マズィ監督最新作『サターン・ボウリング』現代の闇を炙りだす本予告

現代のフランスを代表する映画監督の1人、パトリシア・マズィ監督による最新作『サターン・ボウリング』が10月4日(土)より公開される。今回、家族の呪縛と暴力の連鎖を予感させる本予告と、赤と黒を基調にした不穏な緊張感を漂わせるメインビジュアルが解禁となった。

本作は、ロカルノ国際映画際2022金獅子賞ノミネート、「カイエ・デュ・シネマ」2022年ベストテン第6位に選ばれたマズィ監督による長編第5作品目。日本では本作がマズィ監督の初公開作品に。『落下の解剖学』(23)などの撮影監督シモン・ボーフィスによる陰鬱で美しいカメラ、俳優のすさまじい演技によって強化されたグランジなネオノワールの雰囲気が、マズィ監督がアートハウスカルトの地位におさまらないことを示している。ニコラス・レイ、パク・チャヌク、大島渚などにオマージュを捧げながら、古典的なフィルム・ノワールの方法を踏襲し、かつてない衝撃と共に現代的な暴力の問題を炙りだしていく。

このたび解禁された予告編は、闇の駐車場でスカーフがひらめく不穏なショットから幕を開ける。「野生の雌オオカミがいた」、「自然界の奇妙ないたずらによって」といったナレーションに続き、犬を連れて歩くアルマンの姿と「トラやヒョウと交尾を重ねた」、「突然 凶暴になった」という言葉が重ねられていく。その後映像は、怒りに震え涙を浮かべる彼の表情へと切り替わる。舞台は、亡き父の遺産である赤いネオンが灯る地下のボウリング場。警察官の兄ギヨームは、それを職も家も持たない弟アルマンに託すと告げるのだが、アルマンの返答はただ一言、「条件がある 首を突っ込むな」というもの。緊張が兄弟を隔て、これはやがて街を震撼させる連続殺人事件へと結びついていく。さらに「“女性限定ナイト”を作り俺たちを排除している」と憤っていた父の狩猟仲間たちも、アルマンに引き入れられボウリング場に集うように。酒を手に狩猟の歌を歌い上げる彼らの姿は、暴力と支配欲の象徴として不気味に浮かび上がる。その光景を見たアルマンは、衝動を滾らせ、内なる闇をさらに濃くしていくのだった。

あわせて解禁されたメインビジュアルは、ティザー同様、赤と黒を基調とした強烈なコントラストで構成されたもの。逆さに配置されたアルマンのアップは、ぎらついた眼差しで観る者を射抜き、不穏な緊張感を漂わせる。赤黒の色彩、逆さの構図、そして眼差しの強度が交錯し、物語の悲劇性を一枚に凝縮したビジュアルとなった。


マズィ監督は本作について「とにかく悲劇を描いた」と語る。伝統的なサスペンスやフィルム・ノワールの骨格に、有害な男性性や暴力がもたらす悲劇を織り込み、さらに近年社会的関心を集めるネグレクトやフェミサイドの問題までも重ね合わせる野心作に期待が高まる。

文/鈴木レイヤ

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