ペ・ドゥナ、香椎由宇、前田亜季、関根史織が再会!『リンダ リンダ リンダ』がいまなお愛される理由は「文化やジェスチャーの差を超えたユーモアがあるから」
「この映画は魔法がかかっているんです」(前田亜季)
2018年には、この映画を観た少女たちが、米ロサンゼルスで「リンダ・リンダズ」というバンドを結成。彼女たちはその後SUMMER SONIC 2022にも出演している。今回の4Kデジタルリマスター版は、日本での公開に先がけて今年6月にニューヨークのトライベッカ映画祭でワールド・プレミア上映され、今後アメリカやアジア各地での配給が決定している。時代も国も超えて、今なお本作が人々の心をとらえて離さないのはどうしてだろうか。
ペ・ドゥナ「音楽が題材の青春ものや、コピーバンドが登場して何らかの達成感を味わう作品はたくさんありますし、それぞれがいろんな影響を与えていると思うんですけど、この映画にはTHE BLUE HEARTSという象徴的なバンドが出てきます。THE BLUE HEARTSの歌やメッセージが持っている力もあると思うんですね」
香椎「この作品に流れているリズムって、たとえば一日が長く感じられるとか、高校生ぐらいの年代に特有の感覚がありますよね。それは多分誰もが生きてきたなかで一瞬でも感じたことがあるようなものだと思うんです。その時間の流れが形として残っているのも、たくさんの人に共感してもらえるところかなと」
前田「何者でもない、等身大の4人の物語は、観る人も自分の過ごしてきた時間を思い返しながら入り込みやすいものだと思います。そして山下監督の独特な、あの低めのテンションの持ち味というか。それが彼女たちの空気感にぴったり合っているから、20年経っても色褪せない魅力のある作品になっているんじゃないかなと思います。監督、すごいです!」
関根「この映画は間違いなくおもしろいですけど、いわゆるポピュラー、大衆向けに作られた映画ではないですよね。だからこんなに評価を得られたのはなぜなんだろうって、自分にもわからないマジックがあると思うんです。それはキャストの力だったり、監督の演出だったり、色んなことがとっても上手くいったからで、そういう得体の知れないエネルギーが働いていると思います」
ペ・ドゥナ「私は山下監督のコメディが好きなんですけど、セリフがなくても老若男女が笑わずにはいられないようなユーモアだったり、ウィットだったり、“間”というものがある気がします。昨日あらためてこの映画を観て思ったのは、これが世界的に愛されていて、特に欧米の皆さんも好きだと言ってくださる理由は、文化やジェスチャーの差を超えたユーモアがあるからじゃないかなと。それは私自身が他の国の言葉を覚えてみて感じたことでもあるんです」
――この20年間、この映画のことを思い出したり、実際に観返したのはどんな時でしたか?
香椎「私とドゥナはね、あんまり観てないの。ちょっと恥ずかしくてね」
ペ・ドゥナ「自分の出た作品をなかなか観られないんです。現場で100%の力を出したつもりでも、後になるとやはりちょっと足りなかったんじゃないか、お見せできるものになっていないんじゃないかと思ってしまって。でもこの映画は20年ぶりに観て、『あ、なかなか上手くやっているな!』と自分でも思えたので、これからは観られると思ってます」
香椎「でも、みんなのことはずっと気になってたんですよ。ドゥナや亜希ちゃんは今なんの撮影をしてるんだろう、次はなにに出るのかな、史織ちゃんはどのフェスに出るのかな、どこでライブやってるのかな、って。同級生の友達を応援する気持ちというか」
ペ・ドゥナ「それは私も。永遠の友達、永遠の同僚を得たみたいな感じです」
前田「私にとってこの映画は自分でも観返したくなる一本というか。ふとした瞬間にも観たくなるし、自信のない時に観ると励まされるような。私はかつてこんなにいい時間を過ごしたんだ、と勇気づけられる感じもあるんです」
関根「私は本職が音楽なので、フェスに出たり音楽番組の収録に参加したりすると、いろんなところでいろんな人に“『リンダ リンダ リンダ』が大好きなんです”と声をかけられることがあって。そのたびに皆さんすごい熱量で愛情を伝えてくれるんです。それを聞くと、そんなにいい映画だったんだ、と思って観返したりはしてます(笑)」
香椎「うれしいと思いつつ、いざ褒められると、多分ここ(香椎とペ・ドゥナ)は 上手く返せない2人よ」
ペ・ドゥナ「ちょっと逃げたくなっちゃうかも(笑)」
香椎「私も自分の作品は観られないタイプなので、今回は自分でもよく(4K版の)試写に行ったなと思います。本当は試写も逃げたかったぐらい」
前田「でも、私もこの作品だけですよ。普通は観返したりはできないんだけど、これだけは特別というか。なんかね、この映画は魔法がかかっているんです」
取材・文/奈々村久生