韓国で35万人が感動した『最後のピクニック』キム・ヨンギュン監督が語るヒットの要因「高齢世代の主人公の人生を視聴者が繊細に感じている」

韓国で35万人が感動した『最後のピクニック』キム・ヨンギュン監督が語るヒットの要因「高齢世代の主人公の人生を視聴者が繊細に感じている」

「100の台詞で多くの話をするより、ただ一度ダンスを見せてくれたから本当に素敵なシーンになった」

脚本を一気に読み終え、テホ役を快諾したパク・クニョン
脚本を一気に読み終え、テホ役を快諾したパク・クニョン[C]2024 LOTTE ENTERTAINMENT & ROCKET FILM All Rights Reserved.

本作には主演二人だけでなく、若手からベテランまで地に足のついた演技をする俳優陣が顔を揃え、作品を盛り立てた。特に、ウンシムを「初恋の人」だと言い放つ幼なじみテホを演じたパク・クニョンにも目を見張る。豪放な性格の中に優しさを感じさせるという人物を、一切飾り立てることなく表現した名演技はさすがだった。

「パク・クニョンさんは本当に見たままのカリスマ性にあふれる方で、本当に尊敬しています。そうしたすばらしい資質というのは、詰まるところ実力から出てくるものですよね。思い出してみれば、パク・クニョンは積極的にテホを演じてくださいました。南海が遠くに見える平床(庭に置かれた平台)の上でウンシム、グムスンとマッコリを飲みながら悩み相談のようなことをするシーンでテホがちょっと飲んだことでダンスをし始めるんですが、あれは台本になくて、パク・クニョンさんが即興で急に肩を使って踊り始めたんですよね。俳優の動線があらかじめ決めていたものでなくなったせいで撮影監督が慌てたと言っていました(笑)。私はモニターで見守っていて、慌てたというより『感情をあんなに広げられるんだ!』と驚きました」。

テホの息子で身体にハンディキャップを抱えるソンピルは、より良い生活のためにリゾート誘致賛成派になる
テホの息子で身体にハンディキャップを抱えるソンピルは、より良い生活のためにリゾート誘致賛成派になる[C]2024 LOTTE ENTERTAINMENT & ROCKET FILM All Rights Reserved.

「シナリオにはウンシムの悩み相談を余裕を持って受け入れてくれる人としか書いていないのに、それを超えて自らその感情を拡張させてダンスを踊る。しかもうれしさだけでなく、人生への哀歓が込められているんですよ。100の台詞で多くの話をするより、ただ一度ダンスを見せてくれる瞬間があるからこのシーンが本当に素敵なんだと思いますし、映画として見てみると本当に良い俳優だと思わされるんです」。


劇中では音楽がウンシムとグムスンの友情を彩り、見終わってからも余情が消えない。釜山国際映画祭への出品準備中に監督らが偶然耳にし、イム・ヨンウンの事務所もこの映画のメッセージと80 代でまだ現役である三人の主人公たちへの敬意の印としてオファーを快諾したという。イム・ヨンウンによる主題歌「Grain of Sand」は、キム・ヨンギュン監督によれば50代以上の世代に特に支持されている曲で、こうした音楽が上手く調和したこともヒットにつながったという。さらに南海でのカラオケシーンでテホが歌う「霧の中へ消えた愛」やグムスンが歌い上げる「裏切り者」といった歌謡曲、クラシックではベートーヴェンピアノ協奏曲第2楽章「皇帝」など実に多種多様だ。音楽監督には『フィッシュマンの涙』(15)、『極限境界線 救出までの18日間』(23)を手掛けたチョン・ヒョンス監督が参加している。

「音楽についてはかなり追求しました。この映画にはややシリアスなテーマやムードがあるので、暗かったり重くなりすぎたりしないよう気をつけました。リズムを感じるような編集にしたのもそうですが、音楽を通じ軽快な雰囲気を出すことも重視したんです。でも一方では、ストーリーにふさわしい人生のペーソスもきちんと表現したかったんですね。様々なテーマや感情を表現するために、音楽監督が作曲してくれたもの、私が選択したもの、スタッフが選んだものもありました」。


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