ディズニー&ピクサーの最新作『星つなぎのエリオ』が絶賛公開中だ。大好きな両親を失い、自分はひとりぼっちだと思い込んでいる少年・エリオ。「どこかにきっと僕の居場所がある」。そう信じて旅立ったのは、見たことのない星々の世界だった。
地球の少年と、エイリアン。種族も星も超えた友情と、銀河いっぱいに広がる“つながり”の物語が大きな感動を呼ぶ本作。その心温まるストーリーはもちろん、未知なる宇宙空間を表現したアニメーション技術や、日本版エンドソングであるBUMP OF CHICKENの「リボン」との親和性の高さも見どころの一つだ。
そこで、音楽系イラストレーターとして活躍し、BUMP OF CHICKENの大ファンとしても知られるフクザワが『星つなぎのエリオ』をレビュー。絵を仕事とするフクザワ独自の視点で本作の魅力を語ってもらった。
「宇宙ってこんなふうになってるんだろうなと思わせてくれるのは、あの色遣いがあってのこと」
なぜ『星つなぎのエリオ』を観ると、こんなにも胸躍るのか。フクザワは「色遣い」を第一のポイントに挙げる。例えば、星と星をつなぐ夢の世界“コミュニバース”はまさにアニメだから表現できる幻想空間。まるで海底のように神秘的でありながら、宝石のようにキラキラと輝く世界が、エリオの目の前に広がっていく。
「宇宙なんてほとんどの人が行ったことがない。だから、本当はどうなっているかなんて誰にもわからないはずなんです。なのに、きっと宇宙ってこんなふうになってるんだろうなと思わせてくれるのは、あの色遣いがあってのこと」と分析するフクザワ。「CGならではの光沢感は、アナログの絵では表現できない」と目を丸め、「出てくるエイリアンもカラフル。“コミュニバース”の街並みはまるで近未来のようなワクワク感があって。言葉にできない美しさを感じました」とすっかり魅入られたようだ。
キャラクターデザインも光っている。エリオの友達となるグロードンを筆頭に、本作に登場するエイリアンの見た目は、単にキュートというより、フクザワ曰く「キモ可愛い」。「グロードンが口を開けたところとか、普通に考えると怖いのに、なぜか愛着が持ててしまう。そこが、本作のキャラクターデザインのすごいところ」と解説する。
まるで微生物のようなちょっと不気味なフォルムですら愛らしく思える理由について、フクザワは「動き」に着目。例えば、グロードンの背中から生えた背びれのような突起物は、グロードンの感情に合わせてパタパタと動く。これによって、目が描かれていないにもかかわらず、グロードンの一喜一憂が観客にも手に取るように伝わってくるのだ。「ちょっとした手足の動きや仕草に表情がつくことで、めっちゃ可愛く見える。思わずクスッとなるようなユニークな動きが、この可愛さの秘密だと思います」。
“コミュニバース”にやってきたエリオは、それぞれの星を代表する大使たちと知り合う。平和を愛する惑星のリーダー・オーヴァや、石のような風貌を持つ大使・テグメンなど、見た目は様々だが、「一人ひとり個性があって、映画の中では直接描かれていないのに、それぞれの星の風景や特徴が想像できる」とフクザワは言う。
なかでもお気に入りは、“コミュニバース”の最高幹部・クエスタだ。膜のように広がる全身をはためかせ、宇宙空間を泳ぐ姿はさながら深海生物のよう。フクザワは「あのヒラヒラ感が可愛いですよね」とにっこり。「動きがなめらかだから、見たことのない生物のはずなのに、なぜか優雅で気品のある女性のように見える」と指摘する。さらに「目の中が星みたいになってるんですよね。そこもすごく可愛くて。私の“推しの子”です」とすっかりトリコだ。
もちろんエイリアンだけでなく、人間たちも個性的なキャラクターが勢揃いしている。特にフクザワが気になったのが、無線オタクのメルマックだ。「誰が見てもよくわかるくらい変な人なんですけど、そんな彼が終盤にもう一度出てきて、エリオたちのピンチを救う。その展開に沸きました!」と大興奮。一見どうしようもない人が思わぬところで役に立つのは、エンタメのお約束。ディズニー&ピクサーによる王道のストーリーテリングに、フクザワも思わずハマったようだ。