『星つなぎのエリオ』が“おばさんと甥っ子”の関係を描いたワケとは?監督&プロデューサーが教える制作秘話
「コミュニバースで、エリオは『違っていても一つになれる』と確信する」(メアリー・アリス・ドラム)
ディズニー&ピクサーには、人間以外の超ユニークなキャラクターが活躍する作品が多いが、この『星つなぎのエリオ』には多種多様なエイリアンが登場する。エリオが向かう何光年も彼方の“コミュニバース”は、宇宙の星々の代表が集う場所。この設定を決めたポイントを語るのは、プロデューサーのメアリー・アリス・ドラムだ。
「エリオの願いがすべて叶うという意味で、彼にとって“アメイジング”な場所を用意する必要がありました。孤独なエリオがコミュニバースへ行くと、まったく違うタイプのエイリアンが仲良くやっている光景を目にし、『違っていても一つになれる』と確信するわけです。様々なバックグラウンドを持ったキャラクターが集まり、観たことのない世界が生まれる。これは『モンスターズ・インク』や『トイ・ストーリー』にも通じる特徴です」。
ちらっとしか映らないエイリアンも強烈な個性を放ち、細部まで目が離せないのが本作の魅力。ドミー・シー監督は、それぞれのキャラクターをこだわりを持って描いたという。
「各エイリアンの生まれ育った星の環境や、現在の状況、特徴を考え抜いています。それらを伝えるセリフも用意したのですが、かなりカットしましたね。それでも、例えば逃げまどうシーンで手にしている家族の写真などから個性が伝わるはずです。それぞれのストーリーも、いつか描いてみたいのですけど…(笑)」。
エイリアンたちのなかで、エリオと深い絆を育むのが、グロードンというキャラクター。その外見をひと言で表すなら“キモかわいい”。出てきた瞬間はドキリとさせられるが、物語が進むにつれ、愛おしく見えてくるのは、ディズニー&ピクサーらしいマジックだ。キモかわいさの秘密を、ドミー・シー監督は次のように説明する。
「グロードンは、地球の生物で例えるなら“ミミズ系”ですよね(笑)。ちょっぴり不気味な姿なので、声をキュートにすればおもしろいと、そんな声の持ち主のレミー・エドガーリーに任せたことが成功の要因でしょう。私たちは映像が完成する前に俳優の声を収録することが多く、今回も好きに遊んでもらいました。例えばグロードンが泣くシーンで、彼には目がないのでどうするか迷った時、レミーには口に含んだ水を涙の代わりにして音を出してもらいました(笑)。こうした俳優との共同作業もアニメーションの喜びです。もちろん映像としても、グロードンの生意気さや子どもっぽさを表現したつもりです」。
一方で、この『星つなぎのエリオ』にはSFマニアも満足させるネタが散りばめられている。このあたりは作り手側の明らかな志向であると、もう一人の監督、マデリン・シャラフィアンは打ち明ける。
「ひとつの作品には5年くらい関わるので、どうしても好きな題材でないと難しい。その意味で私とドミー、メアリーは全員、SFオタクかも(笑)。最もインスピレーションをもらったのはスティーヴン・スピルバーグ作品で、少年とエイリアンの絆はまさに『E.T.』ですし、『未知との遭遇』の音階によるコミュニケーションにもオマージュを捧げています。ホラー的な場面では『エイリアン』や『遊星からの物体X』を参考にしました。楽しみながら作った感じですね」。