阿部寛&菜々緒が『キャンドルスティック』で初共演!「現場の誰に対しても気さく」「佇まいで背景を物語れる稀有な人」と互いの魅力を明かす
「私にしかわからない共感覚の世界みたいなものが体現できる気がしたんです」(菜々緒)
——本作ではまた新しい菜々緒さんの姿を見た気がしました。内面に相当の強さを秘めた杏子というキャラクターはどのようなアプローチで作り上げていったのでしょうか。
菜々緒「杏子のパーソナル的な特徴として“共感覚”を持っているという役でしたが、実は共感覚を持っている友人がいるんです。杏子は数字が色で見える共感覚ですが、その友人は、触れた人の情報が入ってくるという共感覚を持っていて」
阿部「すごいですね」
菜々緒「なので、作品に関わる前から友人を通じて共感覚の大変さや苦労している部分を聞いていました。その友人から『私にも共感覚のようなものがあるのかもしれない』と言われたことがあり、私にしかわからない共感覚の世界みたいなものが体現できるような気がしたんです。
友人を通して感じるのは、見えない特殊なものを持っている方はある意味孤独で、いろいろな苦労をしている感じがします。だからこそ杏子にとって同じ共感覚を持っている野原のような存在は、言葉を交わさずともつながれる絆や信頼を築ける相手としてすごく大事。友人を通して知っている感覚や、実際の体験を落とし込みながら演じていくというアプローチでした」
「野原はこれまで演じてきたキャラクターとは違う人間性のようなものを感じて、とても惹かれました」(阿部)
——米倉監督はお2人とは「現場でいろいろなお話をした」とコメントしていました。実際にはどのようなやりとりがあったのでしょうか。
阿部「忘れました(笑)」
菜々緒「(笑)」
阿部「『なにか問題があったら言ってください』みたいな会話が多かった気がします。そんな感じでしたよね?」
菜々緒「私から見た阿部さんと監督の印象は、阿部さんが演じる野原のキャラクターのイメージが一致している感じがありました。だから、わざわざ細かい確認をしなくても、明確にゴールが見えているように感じました」
阿部「そうです(笑)」
——では、割と早い段階から野原というキャラクター像は固まっていたのでしょうか。
阿部「いつだったかな。最初の衣装合わせくらいの時かな?」
菜々緒「衣装合わせと軽い本読みがありましたよね」
阿部「そうだったかも。その時に割といろいろな確認できたので、安心して現場に入っていくという感じでした」
——野原というキャラクターにはどのような印象を持ちましたか。
阿部「最初に台本を読んだ時も、掴みどころがないという印象で(笑)。でもそのよくわからない感じもまたおもしろいと思いました。数学者を追ったテレビ番組を見たことがあるのですが、天才の孤独のようなところが描かれていました。その感覚を野原にも感じて『理解できなくてもいい』と思ったんです。非常に濃い人間というか、これまで演じてきたキャラクターとは違う人間性のようなものを感じて、とても惹かれました」