終戦から80年…『雪風 YUKIKAZE』を親子で鑑賞することで、なにを感じた?「家族の大切さをより感じられた」「いまの時代に感謝し生きてほしい」
戦場の海から命を救い続け、“幸運艦”とされた駆逐艦の史実に基づく物語を描く、竹野内豊主演映画『雪風 YUKIKAZE』が、終戦記念日となる8月15日(金)よりいよいよ公開となる。MOVIE WALKER PRESSではこの公開に先駆け、親子試写会を開催しアンケートを実施!
「戦争世代ではない親子で、改めて忘れてはいけない出来事を追体験できた」(40代・親世代)や「違う視点で様々なことに対して話すきっかけになった」(20代・子世代)といった声が集まった本試写会。参加者たちは親子で『雪風 YUKIKAZE』を観て、なにを感じ取ったのか?本稿では参加者のコメントをピックアップしながら、いま観るべき本作の魅力をたっぷりとお届けする。
「心揺さぶる人間ドラマ」「キャストたちの熱演」「ダイナミックな戦闘シーン」と、三拍子揃った快作!
真珠湾奇襲攻撃による日米開戦以降、ミッドウェイ、ガダルカナル、ソロモン、マリアナと、戦火の下ですべての苛烈な戦いを生き抜き、戦闘で海に投げ出された多くの仲間たちを救いあげてきた奇跡の駆逐艦「雪風」。毎回生還してきたこの艦を、海軍ではいつしか “幸運艦”と呼ぶようになる。そんな雪風が、ついに日米海軍が雌雄を決するレイテ沖海戦へと向かうことに。
主演の竹野内が演じるのは、沈着冷静で卓越した操艦技術を持つ「雪風」の艦長、寺澤一利役。そして下士官や兵を束ねる先任伍長の早瀬幸平役に玉木宏、雪風に救いだされた若き水雷員、井上壮太を奥平大兼が演じる。ほかにも早瀬の妹・サチ役の當真あみ、寺澤の妻・志津役の田中麗奈、志津の父・葛原芳雄役の益岡徹、帝国海軍軍令部作戦課長・古庄俊之役の石丸幹二、実在した第二艦隊司令長官・伊藤整一役の中井貴一ら豪華俳優陣が出演。彼らが紡ぐ熱きドラマが、いまを生きる私たちへと熱いメッセージをつないでいく。
まず、アンケートに寄せられた率直な感想において、親世代と子世代での回答の違いが実に興味深かった。本作を鑑賞した親世代の方々から最も多かった感想が、知られざる雪風の物語に「胸が締めつけられた」という声で、次に「感動した」「迫力があった」ときた。これが子世代になると「胸が締めつけられた」「感動した」が同率となり、やはり「迫力があった」が続いた。
本試写会に参加したきっかけについても、親世代は「戦後80年だから」という回答が圧倒的に多かったが、子世代では、竹野内、玉木、奥平ら「出演者」を目当てに参加したという回答が多数を占めた。
映画を観た感想として、「雪風のことは知らなかったので、改めて戦争はイヤな事、起こしてはいけないと思いました」(80代・親世代)と本作の反戦メッセージをしっかりと受け止めた声が最も多く、ほかには「俳優の演技がよかった」(40代・親世代)、「戦闘シーンの迫力は圧巻でした。特に戦闘機が大群。竹野内さんのセリフ1つ1つの重み、優しさに感動」(40代・親世代) と、俳優陣の演技やド迫力の戦闘シーンのクオリティを称える声も。
総合すると、心揺さぶる人間ドラマ、充実のキャスティング、「雪風」などの駆逐艦や戦艦のダイナミックな戦闘シーンと、三拍子揃った見応えのある快作となっていることがうかがえる。
竹野内豊、玉木宏、奥平大兼らが演じた主要キャラクターの魅力に迫る
本作では、寺澤艦長、早瀬先任伍長、水雷員の井上という3人を軸に、乗員たち“チーム雪風”の絆や、外部の上官とのやりとり、それぞれの家族のエピソードなどを通して、実に丁寧な人間模様が紡がれていく。まずは、それぞれの名シーンや名セリフからキャラクターの魅力をひも解いていきたい。
●寺澤一利艦長(竹野内豊)
竹野内演じる寺澤艦長は、どんな状況下でも取り乱すことがなく、冷静な判断ができる名指揮官だ。そんな寺澤の台詞では、早瀬先任伍長と戦後の日本が10年後、20年後がこうあってほしいと語り合うシーンで口にする「普通がいいな」というセリフが、多数の方々に支持された。
この台詞を選んだ理由として「この映画のなかでとても静かなシーンだったが、この2人の想いがこの映画で最も伝えたいことだと感じた」(50代・親世代)、「戦争が終わった10年後、『普通がいいな』って言っていたのが印象に残って感動した」(30代・子世代)、「現代は普通のありがたみを感じないことが多いと思いました」(50代・親世代)といった声が。
ほかにも寺澤艦長の「始めた戦は止められない」という台詞については、「絶対に戦争は始めてはいけないと強く感じた」(60代・親世代)と、「これからのこの国には、若い人が必要」という台詞については「現代の日本を表している」(40代・親世代)という指摘が集まっていた。
また、「寺澤艦長の人柄に心を打たれました」(60代・親世代)、「常に冷静で落ち着いた判断をしていた姿が心に残りました」(20代・子世代)、「敵の小さなボートが通った時、艦長が『撃つな!』と命じた場面が印象に残りました」(20代・子世代)と、人となりや優れた統率力や人間力を称える声も多かった。
●早瀬幸平先任伍長(玉木宏)
玉木演じる早瀬先任伍長は、強い責任感と人とのコミュ力に長けた頼りがいのある中間管理職的なポジションの役柄だ。冒頭で雪風によって救出される井上たちを助ける際に言うセリフ、「手を伸ばせ、もう少しだ、諦めるな」に心を打たれた人が多かったようで、「先任伍長が言った台詞ですが、それを聞いた井上もあとで使っていて、受け継がれているのが良いと思った」(女性・10代・子世代)という意見が多く寄せられた。この早瀬が瀕死の井上に対して行ったことは、のちに井上が同様のセリフ・行動をとる場面があり、信念や想いが引き継がれていく点に心を持っていかれたという意見が多かった。
ほかにも「相手を思いやり、部下を助けようとするシーンがよかったです」(80代・親世代)や「無理だと思っても日本を必ず守るといった強い信念を感じられた」(20代・子世代)、「ようかんを自分は食べず、部下に譲るところ。兄として妹を想うシーンが心に残りました」(20代・子世代)、「みんなに慕われている信頼できる人物だった」(40代・子世代)と、常に良き兄貴分として、目下の者に気配りするところや、妹想いな点に感動したという声も上がっていた。
●井上壮太(奥平大兼)
奥平演じる水雷員、井上は、下っ端を代表する若手キャラだが、その分、伸びしろが大きい成長株となる。沈没した巡洋艦から海に投げ出されたが、早瀬に救助されたことで、自身も同じように「雪風」で多くの人々の命を救っていくことに。
「以前自分がやってもらったことを、今度は自分がしていて感動しました」(20代・子世代)、「自分が助ける番になった時に『寝るな、寝るな』と言っていて、つながりを強く感じた」(50代・子世代)、「命をつないだから。助けれられて助けた」(10代・子世代)と、前述のとおり、早瀬の想いを受け継いでいくという重要な役どころでもある。
そして、ある乗員を海で弔うシーンでは、井上がその乗員に対して「泳ぎが得意ではありません」と言う台詞が涙を誘うが、「本当に突如に大切な人を失ってしまうんだと思いました」(40代・親世代)と、死と隣り合わせである戦地でのリアルにショックを受けたという声も。このシーンは観る者にかなりの衝撃を与えたようで、その描写に驚愕しつつ、突然すぎる死を悼む声も多数上がった。
また本作で特筆すべき点は、早瀬の想いが井上に受け継がれていく点はもちろん、早瀬が寺澤艦長にもいろいろな気づきを与えていくという流れ。3人のキャラクターそれぞれが単なる上官下官というステレオタイプの設定に留まることなく、心の変化や成長がグラデーション豊かに描かれていく点が高く評価されているとも感じられた。