縦型映画や生成AIで制作した映画も上映「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025」の見どころとは?
2004年から始まった「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は、デジタルシネマに焦点を当てた“若手映像クリエイターの登竜門”として知られており、今年も7月18日(金)~26日(土)の9日間にわたり、埼玉県川口市のSKIPシティで開催される。そのラインナップの公開も兼ねた記者発表会が、6月26日に東京・飯田橋の神楽座にて開催され、同映画祭のディレクターである土川勉氏と、映画監督であり、コンペティションの審査委員長を務める石川慶氏が登壇。開催に向けての意気込みを語った。
土川氏によると、今年は“映画祭の在り方”について再考する場面が多々あったそうで、そのなかでも“映画祭の中核”となるコンペティションは「国内作品のみを対象にする」という形に大きく舵が切られた。そこには「日本の才能に焦点を絞り、より深く、よりきめ細かな支援体制を構築し、日本映画界のさらなる発展に貢献したい」との想いがあるようで、合計271本の日本作品の応募があり、厳正な審査の結果、13本がノミネート。これらは映画祭にて上映され、最終審査が行われることになる。
また土川氏は、第1回の開催時よりテーマとして掲げてきた“デジタルシネマ”についても、強い思いがあるそうで、「そもそもデジタルの世界にはスタンダードという考えはなく、つねに変化し続け、進化し続けるものです。デジタルネイティブの多様性に対応するべく、本映画祭も再編成して。一例ですが、若い世代にも興味を持ってもらえるような縦型映画の上映をはじめ、生成AIで制作した映画、XR映画など、最新技術を駆使した先進的な企画も多数用意しております」とコメント。
これらのコンテンツの中には「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」出身の映画監督たちが手掛ける作品も多数あるそうで、そうした展示・上映企画を通して、第一線で活躍する映像作家と若手クリエイターが交流できるところも、本年度の映画祭の見どころと言えそうだ。
とはいえ、これらの取り組みを通して、若い世代からの反響だけが目的ではないという。むしろ、普段はほとんど映画を観ない層にこそ会場に足を運んでもらい、“映画を観る楽しさ”を知ってほしいといった狙いがあるそうで、土川氏は以下のように話す。「ながら見、倍速、スキップ、ネタバレ…、こんな状態での映像コンテンツの視聴がすっかり習慣化したZ世代の若者に、“120分かけて映画を観ることで得られる夢と感動”を伝えることが、本映画祭の責務であり、使命であると考えています。開催期間中はぜひ、SKIPシティにお越しいただいて、“映画を観る”という体験をお楽しみください!」
続いて登壇した石川氏は、自身も「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」に作品を応募した経験があり、審査委員長のオファーが来た時は、受けるべきか、断るべきか、大いに迷ったという。「自分も普段は審査される側なのでよくわかるんですけど、選ばれなかったら悔しいですし、なんで自分の作品より、こっちの作品が選ばれたんだろうって気持ちになったり。いまだに当時の審査員の方たちの顔が浮かんでくるくらい、根に持ってる…というわけではないんですけど、つまりそれくらい、応募する側は一人ひとりが真剣なんですね。そう思うと、そういった皆さんの感情を真正面から受け止めることになる審査員なんてやりたくないな…というのが、お話をいただいた時の正直な感想です」。
その一方で、若い映像クリエイターと交流できる…というところも、石川氏にとっては非常に興味を惹かれるポイントだったそうで、「若い人たちはどういうことを考えて映画を撮っているのか?そうした世代の人たちが作る映画はどこに向かっていくのか?それが非常に気になりまして。こう言ってしまうと『ちゃんとやれ!』と叱られてしまうかもしれませんが、作品の審査や若手の育成よりも、自分自身が刺激を受けたい…という感情の方が強くなっていって。そこから“若い才能と出会いたい”と思うようなり、審査委員長のお話を受けることにした…という次第です(苦笑)。多くの若いフィルムメーカーと出会えることが、いまからとても楽しみです」と話し、会場を沸かせた。
開催期間中はコンペティションのノミネート作品に加え、過去の受賞作や海外招待作品、さらには前述のとおり、縦型映画や生成AIによって制作された映画なども、連日上映されるという。これらの作品に興味のある方はもちろん、“映画を観る楽しさ”を体験してみたい…という方はぜひ、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025」に足を運んでみてはいかがだろう。
取材・文/ソムタム田井