新進気鋭のアーティスト、甲田まひるに『ババンババンバンバンパイア』の挿入歌「ナツロス」制作秘話を直撃!「結構ぶっ飛んだ曲になったと思います」

インタビュー

新進気鋭のアーティスト、甲田まひるに『ババンババンバンバンパイア』の挿入歌「ナツロス」制作秘話を直撃!「結構ぶっ飛んだ曲になったと思います」

吉沢亮、板垣李光人、原菜乃華らが共演する映画『ババンババンバンバンパイア』(7月4日公開)。下町の銭湯で下宿しながら働く450歳のバンパイア、森蘭丸(吉沢)は至高の味である“18歳童貞の血”を求めて、銭湯の一人息子で15歳の李仁(板垣)の成長と純潔を見守ってきた。しかし、李仁が高校に入学したその日にクラスメイトの葵(原)にひと目惚れし、童貞喪失の危機(!?)が訪れる。この恋路を阻止せんと躍起になる蘭丸の前に、葵の兄で脳筋番長のフランケン(関口メンディー)、バンパイアハンターの坂本(満島真之介)、蘭丸の兄、長可(眞栄田郷敦)らも現れ、勘違いとすれ違いが絡み合う前代未聞のラブコメ展開が巻き起こっていく。

本作の挿入歌を、シンガーソングライターとして活躍しながら、モデル、俳優など多彩な活動でZ世代を中心に支持される甲田まひるが担当。ミュージシャン、作曲家の野村陽一郎との共作で書き下ろした新曲「ナツロス」(配信中)は、叙情的なメロディや歌声、ノリのよいダンサブルなビートが映画の世界観ともマッチしている。そんな楽曲の魅力をひも解くため、甲田へのインタビューを敢行。『ババンババンバンバンパイア』の浜崎慎治監督と交わされた楽曲イメージやこだわり、作曲秘話を語ってもらった。

『ババンババンバンバンパイア』の挿入歌「ナツロス」を手掛けた甲田まひるにインタビュー!
『ババンババンバンバンパイア』の挿入歌「ナツロス」を手掛けた甲田まひるにインタビュー!

「『ババンババンバンバンパイア』はおもしろさのなかにせつなさをすごく感じた」

ジャズやヒップホップなどのジャンルミュージック、敬愛するアリアナ・グランデをはじめとするシンガーソングライターたちから多大な影響を受けて楽曲制作を始めた甲田は、2021年にEP「California」でメジャーデビュー。幼いころから音楽とオシャレに夢中で、形に囚われることなく好奇心の赴くままに活動してきた。

アリアナ・グランデが出演した『ウィキッド ふたりの魔女』(24)に感動したと振り返りながらも、そこだけで得られる体験を求めて単館系の映画館によく足を運ぶという甲田。最近観て特によかった映画に、大九明子監督の『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(25)を挙げ、「バカ泣きしました!」と笑顔を見せる。一方、話題のマンガやアニメには明るいわけではなく、今回のような映画をはじめとするタイアップは、これまで接してこなかった作品にどっぷりと浸れる絶好の機会。楽曲制作のなかで、気づけば自身も作品のファンになって楽しんでいたという。

「曲を作る時は、自分からゼロイチ(0から1を生みだす)で作るものと、すでにある題材に対して書かせていただくもので取り組み方が異なります。今回のようなタイアップ曲の場合は、すでにある題材に身を委ねるイメージです。そのうえで監督さんに喜んでいただくことを念頭に置いています。『ババンババンバンバンパイア』は奥嶋ひろまささんによるマンガが原作なので、台本だけでなく原作も全部読んだのですが、おもしろさのなかにせつなさをすごく感じました。そのバランスが好きで、めちゃめちゃハマりました。おかげで、作品に寄り添った楽曲制作ができたと思います」。

「夏はキラキラしたものが終わりに向かっていく“ロス”の気持ちが大きくなる」

「ナツロス」は浜崎監督からの要望で“夏祭り”をテーマに制作された。歌詞には「いただきます」や「血判」などバンパイア要素もありながら、「入道雲」や「浴衣」など夏祭りを想起させるワードが散りばめられている。劇中では物語が大きく動き始める夏祭りのシーンへ入る前の中盤に挿入され、春から初夏、夏への季節の移り変わりが感じられると共に登場人物たちの内なる想いも手に取るように伝わることから、スムーズにトーンの変化に没入することができる。

「蘭丸にとって、学生である李仁くんと毎日一緒にいられるのは長期休みの間だけなので、1年のなかで夏休みを最も楽しみにしていたんだと思います。その感情が伝わったらいいなと。ただ、すごく楽しみだけど、夏休みには終わりがあることのせつなさも盛り込みました。夏はキラキラしたものが終わりに向かっていくので“ロス”の気持ちも大きくなります。楽しいだけじゃなく、必ず終わりがきてしまうからせつなく感じるし、その分、夏を最大限に楽しみたいと思う。それはまさしく蘭丸の気持ちと一緒です」。


450歳のバンパイア、森蘭丸が“純粋無垢な15歳の高校生、李仁の童貞喪失を阻止しようとする『ババンババンバンバンパイア』
450歳のバンパイア、森蘭丸が“純粋無垢な15歳の高校生、李仁の童貞喪失を阻止しようとする『ババンババンバンバンパイア』[c]2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 [c]奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022

「蘭丸の李仁くんに対する感情はどこか恋愛に近いものなんじゃないかと思うんです」

その「ナツロス」にあわせて、劇中では、蘭丸と李仁が銭湯の掃除をしながら、水を浴びせ合ったり、笑い合ったり、キラキラとした青春模様がスローモーションで映しだされていく。ギャグとツッコミ満載の前半戦、予想だにしない激闘が繰り広げられる後半戦。その合間にフッと訪れる、まるで天国にいるようなフワフワとした時間が流れる蘭丸と李仁のイチャイチャシーンは本作で随一のオアシスだ。

「蘭丸が抱いている李仁くんに対する感情は、バンパイアとして血が吸いたいというだけじゃなく、どこか恋愛に近いものなんじゃないかと思うんです。『嫌われたくない』とか『いいところを見せたい』とか、それって家族や友人に抱くものとは異なる、すごく特別な感情です。そういう恋心を匂わせることで、聴いている人をドキッとさせたいと思いました」。

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